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水産庁

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(1)漁村の現状と役割

目標14

ア 漁村の現状

〈漁港背後集落人口は193万人〉

我が国の海岸線の総延長は約3万5千km*1に及んでいます。この海岸沿いの津々浦々に存在する漁業集落の多くは、リアス海岸、半島、離島に立地しており、漁業生産に有利な条件である反面、自然災害に対して脆弱ぜいじゃくであるなど、漁業以外の面では不利な条件下に置かれています。漁業集落のうち漁港の背後に位置する漁港背後集落*2の状況を見ると、離島地域にあるものが約18%、半島地域にあるものが約31%となっています(図表5-1)。

  1. 国土交通省「海岸統計」による。
  2. 漁港の背後に位置する人口5千人以下かつ漁家2戸以上の集落。

図表5-1 漁港背後集落の状況

図表5-1 漁港背後集落の状況

このような立地条件にある漁村では、人口は減少傾向にあり、令和4(2022)年3月末時点の漁港背後集落人口は193万人になりました。高齢化率は、全国平均を約12ポイント上回り、40.6%となっています(図表5-2)。

図表5-2 漁港背後集落の人口と高齢化率の推移

図表5-2 漁港背後集落の人口と高齢化率の推移

イ 水産業・漁村が有する多面的機能

〈漁業者等が行う多面的機能の発揮に資する取組を支援〉

水産業・漁村は、国民に水産物を供給する役割だけでなく、1)自然環境を保全する機能、2)国民の生命・財産を保全する機能、3)交流等の場を提供する機能、4)地域社会を形成し維持する機能、等の多面的な機能も果たしており、その恩恵は、漁業者や漁村の住民にとどまらず、広く国民一般にも及びます(図表5-3)。

内水面漁業・養殖業においても、アユ等の和食文化と密接に関わる食用水産物を供給するほか、釣り場や自然体験活動の場といった自然と親しむ機会を国民に提供するなどの多面的機能を果たしています。

図表5-3 水産業・漁村の多面的機能

図表5-3 水産業・漁村の多面的機能

このような水産業・漁村の多面的機能は、人々が漁村に住み、漁業が健全に営まれることによって発揮されるものですが、漁村の人口減少や高齢化が進めば、漁村の活力が衰退し、多面的機能の発揮にも支障が生じます。このため、水産基本法*1において、国は、水産業及び漁村の多面的機能の発揮について必要な施策を講ずるよう規定されているとともに、新漁業法において、国及び都道府県は、漁業及び漁村が多面的機能を有していることに鑑み、漁業者等の活動が健全に行われ、漁村が活性化するよう十分配慮することが規定されています。また、令和4(2022)年3月に閣議決定された「水産基本計画」においても、水産業・漁村の持つ多面的機能が将来にわたって適切に発揮されるよう、一層の国民の理解の増進を図りつつ効率的・効果的な取組を促進するとともに、特に国境監視の機能については、漁村と漁業者による海の監視ネットワークが形成されていることを明記しています。これらを踏まえて、水産庁は、漁村を取り巻く状況に応じて多面的機能が適切に効率的・効果的に発揮できるよう、漁業者をはじめとした関係者に創意工夫を促しつつ、藻場や干潟の保全、内水面生態系の維持・保全・改善、国境・水域監視や海難救助訓練等の漁業者等が行う多面的機能の発揮に資する取組が引き続き活発に行われるよう、国民の理解の増進を図りながら支援していくこととしています。

  1. 平成13年法律第89号

コラム漁業者による海難救助活動

海難事故が発生した際には、海区を担当する海上保安部署等から、事故があった海域に精通している公益社団法人日本水難救済会にほんすいなんきゅうさいかいの救難所に所属する漁業者をはじめとした地元の漁業者等に対し、救助の協力依頼がなされることがあります。また、そのような場合、海を仕事場としている漁業者としてシーマンシップに則り、操業を中断して現場に急行し、昼夜を問わずに人命救助や不明者の捜索に協力する人も少なくありません。

令和4(2022)年4月23日に北海道知床半島しれとこはんとう沖で発生した知床遊覧船事故においても、事故発生以降、現場海域に近い斜里しゃり羅臼らうす標津しべつの救難所に所属する多くの漁業者等が速やかに現場に向かい、人命救助活動に参加しているほか、同年5月末に行われた行方不明者を捜索するための一斉集中捜索でも多くの漁業者が参加しています。

広大な海岸線を持つ我が国の安全安心の確保には、このような地元の漁業者による活動が大きな役割を果たしています。

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344