(1)水産業における東日本大震災からの復旧・復興の状況
〈震災前年比で水揚金額95%〉
平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災による津波は、豊かな漁場に恵まれている東北地方太平洋沿岸地域を中心に、水産業に甚大な被害をもたらしました。同年7月に政府が策定した「東日本大震災からの復興の基本方針」においては、復興期間を令和2(2020)年度までの10年間と定め、平成27(2015)年度までの5年間を「集中復興期間」と位置付けた上で復興に取り組んできました。
平成27(2015)年6月には「平成28年度以降の復旧・復興事業について」を決定し、平成28(2016)年度からの後期5年間を「復興・創生期間」と位置付けて復興を推進してきました。
その後、令和2(2020)年6月には、令和3(2021)年3月末までとなっていた復興庁の設置期限を10年間延長すること等を内容とする復興庁設置法等の一部を改正する法律*1等が成立しました。
また、令和3(2021)年3月には、「東日本大震災からの復興の基本方針」を、令和2(2020)年6月の福島復興再生特別措置法*2の改正(令和3(2021)年4月施行)等を反映させた「『第2期復興・創生期間』以降における東日本大震災からの復興の基本方針」に改定しました。
これまで被災地域では、漁港施設、漁船、養殖施設、漁場等の復旧が積極的に進められており(図表5-1)、政府は、引き続き、被災地域の水産業の復旧・復興に取り組むこととしています。
- 令和2年法律第46号
- 平成24年法律第25号

図表5-1 水産業の復旧・復興の進捗状況(令和6(2024)年3月取りまとめ)


被災した漁港のうち、水産業の拠点となる漁港においては、流通・加工機能や防災機能の強化対策として、高度衛生管理型の荷さばき所や耐震強化岸壁等の整備を行うなど、新たな水産業の姿を目指した復興に取り組んでいます。このうち、高度衛生管理型の荷さばき所の整備については、流通の拠点となる8漁港(八戸(はちのへ)、釜石(かまいし)、大船渡(おおふなと) 、気仙沼(けせんぬま)、女川(おながわ)、石巻(いしのまき)、塩釜(しおがま)、銚子(ちょうし) )において実施し、全漁港で供用されています。
一方、被災地域の水産加工業においては、令和5(2023)年1~2月に実施した「水産加工業者における東日本大震災からの復興状況アンケート(第10回)の結果」によれば、生産能力が震災前の8割以上まで回復したと回答した水産加工業者が約7割となっているのに対し、売上げが震災前の8割以上まで回復したと回答した水産加工業者は約5割であり、依然として生産能力に比べ売上げの回復が遅れています。県別に見ると、生産能力と売上げ共に、福島県の回復が他の5県*1に比べ遅れています(図表5-2)。また、売上げが戻っていない理由としては、「原材料の不足」、「人材の不足」及び「販路の不足・喪失」の3項目で回答の約7割を占めています(図表5-3)。このため、政府は、引き続き、加工・流通の各段階への個別指導、セミナー・商談会の開催、省力化や加工原料の多様化、販路の回復・新規開拓に必要な加工機器の整備等により、被災地域における水産加工業者の復興を支援していくこととしています。
- 青森県、岩手県、宮城県、茨城県及び千葉県
図表5-2 水産加工業者における生産能力及び売上げの回復状況

図表5-3 水産加工業者の売上げが戻っていない理由


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