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水産庁

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(8)水産物の流通・加工の動向

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ア 水産物流通の動向

〈卸売市場は水産物の効率的な流通において重要な役割〉

水産物の流通は漁業者と一般消費者とをつなぐ重要な役割を果たしています。とりわけ、卸売市場には、1)商品である漁獲物や加工品を集め、ニーズに応じて必要な品目・量に仕分けする集荷・分荷の機能、2)旬や産地、漁法や漁獲後の取扱いにより品質が大きく異なる水産物について、公正な評価によって価格を決定する価格形成機能、3)販売代金を迅速・確実に決済する代金決済機能、4)川上の生産や川下のニーズに関する情報を収集し、川上・川下のそれぞれに伝達する情報受発信機能があります。多様な魚種が各地で水揚げされる我が国において、卸売市場は、水産物を効率的に流通させる上で重要な役割を担っています。

近年は、水産物の国内流通量が減少していることに加え、消費地卸売市場を経由して流通する水産物の量も減少し、小売・外食業者等と産地出荷業者との直接取引等の市場外流通が増加する傾向にあります(図表2-31)。

また、取引規模の小さい産地卸売市場は、価格形成力が弱い、販売体制維持のための固定経費や保冷に係る流通経費が負担となる等の課題があることから、市場の統廃合等により市場機能の維持・強化や価格形成力の強化を図っていくことが求められます。

図表2-31 水産物の消費地卸売市場経由量と経由率の推移

図表2-31 水産物の消費地卸売市場経由量と経由率の推移

〈水産物流通の合理化の推進〉

令和6(2024)年度からトラックドライバーの時間外労働に上限が適用され、何も対策を講じなければ物流が停滞しかねない「物流の2024年問題」に関連し、水産物流通においてパレット等についての標準化の取組を推進し、物流標準化の現状と今後の対応の方向性について検討する「水産物流通標準化検討会」が令和5(2023)年5月から令和6(2024)年3月に開催されました。同検討会では、「水産物流通標準化ガイドライン」を策定し、パレットの管理の改善等に取り組むこととされています。

イ 水産加工業の動向

〈水産加工品の生産量は減少傾向〉

我が国の食用魚介類の国内消費仕向量の約7割は加工品として供給されており、水産加工品は、水産物における重要な役割を担っています。また、腐敗しやすい水産物の保存性を高める、家庭での調理の手間を軽減するといった機能を通じ、水産物の付加価値の向上に寄与しています。

食用魚介類の国内消費仕向量が減少する中、水産加工品の生産量も総じて減少傾向にあります。水産加工品は、生鮮の水産物を丸魚のまま、又はカットやすり身にしただけで凍結した生鮮冷凍水産物から、ねり製品や冷凍食品等に加工された食用加工品まで多様な形態で生産されており、以前は生鮮冷凍水産物の生産量が食用加工品の生産量を上回っていましたが、生鮮冷凍水産物の生産量の減少により平成7(1995)年以降は食用加工品の生産量の方が上回っています(図表2-32)。

図表2-32 水産加工品生産量の推移

図表2-32 水産加工品生産量の推移

〈水産加工業の経営の脆弱性や従業員不足が重要な課題〉

水産加工業は漁業と共に水産業の車の両輪を担っています。特に近年は、消費者の食の簡便化志向の高まり等により、水産物消費における加工の重要性は高まっており、多様化する消費者ニーズを捉えた商品開発が求められています。また、水産加工場の多くは沿海地域に立地し、漁業と共に漁村地域の活性化に寄与しています。

しかしながら、近年では、経営体力不足、従業員不足、原材料の調達難等が水産加工業の課題となっています。このため、生産・加工・流通・販売が連携しマーケットニーズに応えるバリューチェーンの構築等の取組や、産地全体の機能強化に資するよう、水産加工業協同組合等が漁協等と連携して行う取組を支援しています。

また、特定技能外国人等の円滑な受入れ、共生を図る取組を行うとともに、省人化・省力化を図るためのICT、AI、ロボット等の新技術の開発・活用・導入を進めていくこととしています。民間においても、市場や水産加工場で、漁獲量や消費動向などにより変動する労働力に対応し、短時間・短期間で雇用するスポットワークの活用も見られ始めています。

さらに、近年のスルメイカ、サンマ等の不漁による加工原材料不足の問題に対し、資源状況の良い魚種への加工原材料の転換等の推進を図り、原材料転換に対応した生産体制を構築するため、魚種の転換に係る機器整備や水産加工業者への加工原材料の安定供給等の取組を支援しています。

くわえて、産地全体の機能強化・活性化を図るためには、産地の取りまとめ役となる中核的人材や次世代の若手経営者を育成することも必要です。このため、各種水産施策や中小企業施策の円滑な利用が進むよう、国及び都道府県レベルにワンストップ窓口を設置し、水産加工業者の悩みや相談に迅速かつ適切に対応していくこととしています。

ウ HACCPへの対応

〈水産加工業等における対米輸出認定施設数は608施設、対EU輸出認定施設数は130施設〉

国内消費者に安全な水産物を提供する上で、卸売市場等における衛生管理を高度化するとともに、水産加工業におけるHACCP*1に沿った衛生管理を徹底することが重要です。平成30(2018)年6月には食品衛生法等の一部を改正する法律*2が公布され、水産加工業者を含む原則として全ての食品等事業者を対象に、令和3(2021)年6月から、HACCPに沿った衛生管理の実施が制度化されています。

また、我が国から米国やEUに水産物を輸出する際には、水産加工施設等がHACCPを含む衛生管理を実施し、更にこれらの国・地域が定める施設基準に適合していることが必要です。

政府では、水産物の輸出促進のため、米国やEUへの輸出に際して必要となるHACCPに基づく衛生管理及び施設基準等の要件を満たす施設としての認定を取得するため水産加工業者等が行う水産加工・流通施設の改修等を支援しています。令和7(2025)年3月末までの水産加工業等における認定施設数は、対米輸出認定施設数で608施設、対EU輸出認定施設数で130施設*3となっています。

また、水産物の流通拠点となる漁港等では、高度な衛生管理に対応した荷さばき所等の整備を推進しているほか、生産・流通機能の強化と効率化に資する冷凍・冷蔵施設、加工・流通施設等の整備を推進しています。

  1. Hazard Analysis and Critical Control Point:危害要因分析・重要管理点。原材料の受入れから最終製品に至るまでの工程ごとに、微生物による汚染や金属の混入等の食品の製造工程で発生するおそれのある危害要因をあらかじめ分析(HA)し、危害の防止につながる特に重要な工程を重要管理点(CCP)として継続的に監視・記録する工程管理システム。国際連合食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス)委員会がガイドラインを策定して各国にその採用を推奨している。
  2. 平成30年法律第46号
  3. 令和7(2025)年3月末時点で国内手続が完了したもの。

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344