(6)捕鯨業をめぐる動き

ア 大型鯨類を対象とした捕鯨業
〈母船式捕鯨業及び基地式捕鯨業の操業状況〉
我が国は、科学的根拠に基づいて水産資源を持続的に利用するとの基本方針の下、令和元(2019)年6月末をもって国際捕鯨取締条約から脱退し、同年7月から我が国の領海とEEZで、十分な資源が存在することが明らかになっている大型鯨類(ミンククジラ、ニタリクジラ及びイワシクジラ)を対象とした捕鯨業を再開しました。
また、令和2(2020)年10月に、鯨類の持続的な利用の確保に関する法律*1に基づく「鯨類の持続的な利用の確保のための基本的な方針」を策定し、鯨類科学調査の意義や捕獲可能量の算出、捕鯨業の支援に関する基本的事項等を定めました。
さらに、令和6(2024)年7月には、資源調査の結果から北太平洋において資源量が豊富なナガスクジラを新たに商業捕鯨の捕獲対象種としました。
令和6(2024)年の大型鯨類を対象とした捕鯨については、沿岸の基地式捕鯨業は、商業捕鯨再開後初めてニタリクジラを捕獲(合計4頭)しました。ミンククジラについては、沿岸域への来遊減少等の影響により、142頭の捕獲枠に対し87頭の捕獲にとどまりました。また、母船式捕鯨業は順調に操業を行い、ニタリクジラ、イワシクジラの捕獲枠を全量消化しました。ナガスクジラについては59頭の捕獲枠に対し、30頭の捕獲となりました(図表4-13)。なお、これらの捕鯨業は、国際捕鯨委員会(IWC)で採択された改訂管理方式(RMP)に沿って算出される捕獲可能量以下の捕獲枠で実施されており、算出された捕獲可能量は外国人科学者で構成される外部パネルによりレビューされています。
- 平成29年法律第76号

図表4-13 捕鯨業の対象種及び令和6(2024)年の捕獲枠と捕獲頭数

イ 鯨類科学調査の実施
〈北西太平洋や南極海における非致死的調査を継続〉
我が国は、鯨類資源の適切な管理と持続的利用を図るため、昭和62(1987)年から南極海で、平成6(1994)年からは北西太平洋で、それぞれ鯨類科学調査を実施し、資源管理に有用な情報を収集し、科学的知見を深めてきました。
我が国は、国際捕鯨取締条約脱退後も、国際的な海洋生物資源の管理に協力していくという我が国の従来の方針の下で、引き続き、IWC等の国際機関と連携しながら、科学的知見に基づく鯨類の資源管理に貢献しています。
例えば、我が国とIWCが平成22(2010)年から共同で実施している「IWC/日本共同北太平洋鯨類目視調査(IWC-POWER)」については、脱退後も継続しています。同調査では、我が国が調査船を提供することに加え、我が国からの調査員も乗船の上、北太平洋において毎年、目視やバイオプシー(皮膚標本)採取等の調査を行っており、イワシクジラ、ザトウクジラ、シロナガスクジラ、ナガスクジラ等の資源量推定等に必要な多くのデータが得られています。また、ロシアとも平成27(2015)年からオホーツク海における共同調査を実施しています。我が国は、このような共同調査を今後も継続していくこととしております。IWCに対しては本共同調査の計画及び結果報告の提供を行っており、令和6(2024)年4~5月に開催されたIWC科学委員会においても、本共同調査における我が国のこれまでの協力に対して謝意が示されました。
今後とも、これらの共同調査に加え、我が国がこれまで実施してきた北西太平洋や南極海における非致死的調査を継続するとともに、商業的に捕獲された全ての個体から科学的データの収集を行い、これまでの調査で収集してきた情報と併せ、関連の国際機関に調査結果を提供すること等を通じて、国際的な鯨類資源管理に貢献するとともに、科学的根拠に基づく持続的かつ適切な捕鯨業の実施の確保を図っていきます。
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