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(5)国際的な資源管理

目標14
目標17

ア 国際的な資源管理の推進

〈EEZ内だけでなく、国際的な資源管理も推進〉

我が国は、排他的経済水域(EEZ)内における水産資源の適切な管理を推進していますが、サンマやサバといった我が国漁船が漁獲する資源は、外国漁船も漁獲し、競合するものも多いことから、我が国の資源管理の取組の効果が損なわれないよう、国際的な資源管理にも積極的に取り組んでいくことが重要です。

このため、我が国は、国際的な資源管理が適切に推進されるよう、地域漁業管理機関の場や二国間での交渉に努めてきています。

イ 地域漁業管理機関

〈資源の適切な管理と持続的利用のための活動に積極的に参画〉

国連海洋法条約*1では、沿岸国及び高度回遊性魚種を漁獲する国は、当該資源の保存及び利用のため、EEZの内外を問わず地域漁業管理機関を通じて協力することを定めています。

地域漁業管理機関では、沿岸国や遠洋漁業国等の関係国・地域が参加し、資源評価や資源管理措置の遵守状況の検討を行った上で、漁獲量規制、漁獲努力量規制、技術的規制等の実効ある資源管理の措置に関する議論が行われます。特に、高度に回遊するカツオ・マグロ類は、世界の全ての海域で、それぞれの地域漁業管理機関による管理が行われています。また、カツオ・マグロ類以外の水産資源についても、底魚を管理する北西大西洋漁業機関(NAFO)等に加え、平成に入ってから、サンマ、マサバ等を管理する北太平洋漁業委員会(NPFC)等の新たな地域漁業管理機関も設立されました。このほか、令和3(2021)年6月に発効した中央北極海無規制公海漁業防止協定*2に基づく第3回締約国会合が令和6(2024)年6月に開催され、共同科学調査・モニタリング計画の調査手法等の概要を定める実施計画が策定されました。今後は、試験操業に係る保存管理措置について継続的に協議することとされています。

我が国は、責任ある漁業国として、我が国漁船の操業海域や漁獲対象魚種と関係する地域漁業管理機関に加盟し、資源の適切な管理と持続的利用のための活動に積極的に参画するとともに、これらの地域漁業管理機関で合意された管理措置が着実に実行されるよう、加盟国の資源管理能力向上のための支援等を実施しています。

  1. 正式名称:海洋法に関する国際連合条約
  2. 正式名称:中央北極海における規制されていない公海漁業を防止するための協定

ウ カツオ・マグロ類の地域漁業管理機関の動向

世界のカツオ・マグロ類資源は、地域又は魚種別に五つの地域漁業管理機関によって全てカバーされています(図表4-9)。このうち、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)、全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)及びインド洋まぐろ類委員会(IOTC)の4機関は、それぞれの管轄水域内のカツオ・マグロ類資源について管理責任を負っています。また、南半球に広く分布するミナミマグロについては、みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)が一括して管理を行っています。

〈中西部太平洋におけるカツオ・マグロ類の管理(WCPFC)〉

中西部太平洋のカツオ・マグロ類の資源管理を担うWCPFCの水域には、我が国周辺水域が含まれ、この水域においては、我が国のかつお・まぐろ漁船(はえ縄、一本釣り、海外まき網)約400隻のほか、沿岸はえ縄漁船、まき網漁船、一本釣り漁船、流し網漁船、定置網、ひき縄漁船等がカツオ・マグロ類を漁獲しています。

図表4-9 カツオ・マグロ類を管理する地域漁業管理機関と対象水域

図表4-9 カツオ・マグロ類を管理する地域漁業管理機関と対象水域
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まぐろに関する情報(水産庁):/j/tuna/

北緯20度以北の水域に分布する太平洋クロマグロ等の資源管理措置に関しては、WCPFCの下部組織である北小委員会で実質的な議論を行っています。特に、東部太平洋の米国やメキシコ沿岸まで回遊する太平洋クロマグロについては、太平洋全域での効果的な資源管理を行うために、北小委員会と東部太平洋のマグロ類を管理するIATTCの合同作業部会が設置され、北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)*1の資源評価に基づき議論が行われます。その議論を受け、北小委員会が資源管理措置案を決定し、WCPFCへ勧告を行っています。

WCPFCでは、太平洋クロマグロの資源量が歴史的最低水準付近まで減少したこと等から、平成27(2015)年以降、1)30kg未満の小型魚の漁獲を平成14(2002)~16(2004)年水準から半減させること、2)30kg以上の大型魚の漁獲を同期間の水準から増加させないこと等の措置が実施されてきました。また、WCPFCでは、資源回復のための漁獲戦略を策定し、暫定回復目標(歴史的中間値(約4万t))及びその達成後の次期回復目標(暫定回復目標達成後10年以内に、60%以上の確率で親魚資源量を初期資源量の20%(約13万t)まで回復させること)を設定し、一定の期間内にこれらの回復目標を達成するための漁獲制御ルール等を適用してきました。さらに同漁獲戦略の中では、回復目標の達成後、管理戦略評価(MSE:Management Strategy Evaluation)に基づく長期的な管理方式の策定までの間に適用する、暫定的な漁獲制御ルールとして、(ア)初期資源量の20%を下回る確率が60%を超える場合、60%以上の確率で、10年以内に初期資源量の20%を上回るよう管理措置を強化し、(イ)初期資源量の20%を上回る確率が、60%を超える場合、同確率を60%以上に維持できる範囲で措置の調整を行うことに合意されています。

このような厳しい資源管理に対し、我が国漁業関係者が厳格な漁獲量の管理に取り組むなど我が国が率先して資源管理に取り組んだ結果、太平洋クロマグロの親魚資源量は回復傾向にあり、令和6(2024)年にISCが行った最新の資源評価によると、親魚資源量は、令和3(2021)年に回復目標を達成し、令和4(2022)年時点で約14.4万tにまで回復しています(図表4-10)。

令和6(2024)年のWCPFC年次会合では、太平洋クロマグロの親魚資源量の回復を踏まえ、北小委員会が勧告した小型魚10%、大型魚50%の増枠を基本とする措置が採択されました。これにより、令和7(2025)年以降、小型魚の漁獲上限は5,125t、大型魚の漁獲上限は11,869tに増枠され、我が国の漁獲上限は、小型魚は4,407t(400t増枠)、大型魚は8,421t(2,807t増枠)となりました。

また、増枠を踏まえた令和7(2025)管理年度の国内配分については、水産政策審議会資源管理分科会で決定された「くろまぐろの漁獲可能量の配分の考え方について」に基づき、漁業種類ごとの近年の漁獲実績をベースに、特に大型魚は放流等の負担の大きい沿岸漁業者に配慮して行いました(図表4-11)。

  1. 日本、中国、韓国、台湾、米国、メキシコ等の科学者で構成。

図表4-10 最新(令和6(2024)年)の資源評価結果(将来予測)

図表4-10 最新(令和6(2024)年)の資源評価結果(将来予測)

図表4-11 太平洋クロマグロの令和7(2025)管理年度の当初配分(総括表)

図表4-11 太平洋クロマグロの令和7(2025)管理年度の当初配分(総括表)

〈東部太平洋におけるカツオ・マグロ類の管理(IATTC)〉

東部太平洋のカツオ・マグロ類の資源管理を担うIATTCの水域では、我が国のまぐろはえ縄漁船約30隻が、熱帯性マグロ類(メバチ及びキハダ)、メカジキ等を対象に操業しています。

令和6(2024)年においては、太平洋クロマグロの親魚資源量の回復を踏まえ、WCPFC北小委員会・IATTC合同作業部会における令和7(2025)及び8(2026)年の増枠の合意を受け、年次会合において、7,990tから12,585tへ増枠する措置が採択されました。

〈大西洋におけるカツオ・マグロ類の管理(ICCAT)〉

大西洋のカツオ・マグロ類の資源管理を担うICCATの水域では、我が国のまぐろはえ縄漁船約70隻が、大西洋クロマグロ、メバチ、キハダ、ビンナガ等を対象として操業しています。

令和6(2024)年の年次会合では、メバチの漁獲可能量(TAC)を、令和6(2024)年の62,000tから令和7(2025)~9(2027)年は73,000tに増加させることが合意されました。我が国への割当量は、令和6(2024)年の13,979.84tから令和7(2025)~9(2027)年は13,865.86tとなりましたが、そこから差し引かれる他国への移譲分が900tから350tへと減少したことで、実質的な割当は436.02t増加することとなりました。また、集魚装置(FADs)使用数の上限は、現行の300個/隻を令和7(2025)年は継続しますが、令和8(2026)~9(2027)年は288個/隻まで削減することとなりました。

〈インド洋におけるカツオ・マグロ類の管理(IOTC)〉

インド洋のカツオ・マグロ類の資源管理を担うIOTCの水域では、約50隻の我が国のかつお・まぐろ漁船(はえ縄)が、メバチ、キハダ、カジキ等を漁獲しています。

令和6(2024)年の年次会合では、キハダの国別漁獲上限の改正が議論されましたが合意に至らず、令和3(2021)年の年次会合で合意された措置を継続することとなりました。我が国のキハダの漁獲上限は引き続き、平成29(2017)~令和元(2019)年の最大漁獲量である4,003tとなります。また、FADsの規制措置の見直しが合意され、FADs個数や支援船隻数の段階的な削減等、管理措置が強化されることとなりました。

〈ミナミマグロの管理(CCSBT)〉

南半球を広く回遊するミナミマグロの資源はCCSBTによって管理されており、同魚種を対象として我が国のまぐろはえ縄漁船約80隻が操業しています。

CCSBTでは、資源状態の悪化を踏まえ、平成19(2007)年からTACを大幅に削減したほか、漁獲証明制度の導入等を通じて資源管理を強化してきた結果、平成19(2007)年に3,000tだった我が国の漁獲割当量は、令和3(2021)年には6,245tまで増加しました。さらに、令和5(2023)年の年次会合では、令和6(2024)~8(2026)年の各年における我が国の漁獲割当量を7,295tとすることが決定され、令和6(2024)年の年次会合では、この決定を維持することが合意されました。

エ サンマ・マサバ等の地域漁業管理機関の動向

〈サンマ等の管理(NPFC)〉

北太平洋の公海では、NPFCにおいて、サンマやマサバ、クサカリツボダイ等の資源管理が行われています(図表4-12)。

サンマは、太平洋の温帯・亜寒帯域に広く生息する高度回遊性魚種です。以前は我が国、韓国及びロシア(旧ソ連)のみがサンマを漁獲していましたが、近年では台湾、中国及びバヌアツも漁獲するようになりました。これまで、我が国及びロシアは主に自国の200海里水域内で、その他の国・地域は主に北太平洋公海で操業していましたが、近年、サンマの漁場が沖合化したため、総漁獲量に占める公海での漁獲量の割合が増加しています。

このような背景を踏まえ、NPFCにおいては、令和元(2019)年7月に令和2(2020)年における公海でのTACを33万tとすることが合意されたことに続き、段階的に公海のTACを引き下げてきました。令和6(2024)年4月には、資源水準に応じてTACを算出する漁獲管理規則が合意されました。同規則では、直近の資源水準からTACが算出されるものの、毎年のTACの変動の幅は対前年比10%までとされています。令和7(2025)年3月には同規則により、令和7(2025)年におけるサンマの公海のTACを12万1,500t(令和6(2024)年から10%削減)とすること、沿岸国はEEZ内での漁獲量を8.1万t以内に抑えることが合意されました。これに加え、小型魚保護のための措置や、操業期間や操業隻数を制限する漁獲努力量削減のための措置も導入されてきました。引き続き、サンマ資源について、漁獲量の適切な制限等を通じた資源管理を進めていきます。

また、マサバ(太平洋系群)は、主に我が国EEZ内に分布する魚種ですが、近年、中国等の外国による公海での漁獲が増加しており、資源への影響が懸念されています。

このような背景から、NPFCにおいて、平成29(2017)年7月に公海でマサバを漁獲する遠洋漁業国・地域の許可隻数の増加禁止(沿岸国の許可隻数は急増を抑制)が合意されました。令和7(2025)年3月には、マサバの公海における漁獲上限を前年の10万tから、約3割削減して7.1万tとする措置が合意されました。

我が国は、今後とも、EEZ内のマサバ資源が持続的に利用されるよう、資源管理措置の更なる強化を働き掛けていきます。

図表4-12 NPFC等のカツオ・マグロ類以外の資源を管理する主な地域漁業管理機関と対象水域

図表4-12 NPFC等のカツオ・マグロ類以外の資源を管理する主な地域漁業管理機関と対象水域

オ IUU漁業の撲滅に向けた動き

〈IUU漁業の抑制・根絶に向けた取組が国際的に進展〉

各国や地域漁業管理機関等が国際的な資源管理に向け努力している中で、規制措置を遵守せず無秩序な操業を行うIUU漁業は、水産資源に悪影響を与え、適切な資源管理を阻害するおそれがあります。このため、IUU漁業の抑制・根絶に向けた取組が国際的に進められています。

例えば各地域漁業管理機関においては、正規の漁業許可を受けた漁船等のリスト化(ポジティブリスト)やIUU漁業への関与が確認された漁船や運搬船等をリスト化(ネガティブリスト)する措置が導入されており、さらに、ネガティブリストに掲載された船舶の一部に対して、国際刑事警察機構(ICPO)が各国の捜査機関に注意を促す「紫手配書」を出すなど、IUU漁業に携わる船舶に対する国際的な取締体制が整備されてきています。また、いくつかの地域漁業管理機関においては、漁獲証明制度*1によりIUU漁業由来の漁獲物の国際的な流通を防止しています。

ネガティブリストについては、例えばNPFCでは、令和6(2024)年12月末時点において40隻が掲載されるなど、着実にリストが充実されてきています。

二国間においても、我が国とロシアとの間で、ロシアで密漁されたカニが我が国に密輸出されることを防止する二国間協定の発効のほか、EU、米国及びタイとIUU漁業対策の推進に向けた協力を確認する共同声明を出すなど、IUU漁業の抑制・根絶を目指した取組を行っています。

また、締約国がIUU漁業に従事した外国漁船の寄港を禁止すること等の寄港国措置を通じて、IUU漁業の抑制・根絶を図る違法漁業防止寄港国措置協定*2により、広い洋上でIUU漁業に従事している船を探すのではなく、寄港地において効率的・効果的な取締りを行うことが可能となっています。

さらに、特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律*3において、国際的なIUU漁業防止の観点から特定の水産動植物等の輸入に際し、外国の政府機関が発行した証明書等の添付を義務付けることとしており、この法律の適正な運用を通じて、IUU漁業由来の漁獲物の我が国への流入を防ぐこととしています。

  1. 漁獲物の漁獲段階から流通を通じて、関連する情報を漁獲証明書に記載し、その内容を関係国の政府が証明することで、その漁獲物が地域漁業管理機関の資源管理措置を遵守して漁獲されたものであることを確認する制度。
  2. 正式名称:違法な漁業、報告されていない漁業及び規制されていない漁業を防止し、抑止し、及び排除するための寄港国の措置に関する協定
  3. 令和2年法律第79号

カ 二国間等の漁業関係

〈ロシアとの関係〉

我が国とロシアとの間では、1)サンマ、スルメイカ、マダラ、サバ等を対象とした相互入漁に関する日ソ地先沖合漁業協定*1、2)ロシア系サケ・マス(ロシアの河川を母川とするサケ・マス)の我が国漁船による漁獲に関する日ソ漁業協力協定*2、3)北方四島の周辺12海里内での我が国漁船の操業に関する北方四島周辺水域操業枠組協定*3の三つの漁業に関する政府間協定が結ばれています。また、これらに加え、民間協定として、北方四島のうち歯舞群島はぼまいぐんとうの一部である貝殻島かいがらじまの周辺12海里内において我が国の漁業者が安全にコンブ採取を行うための貝殻島昆布協定*4が結ばれています。

令和6(2024)年においては、日ソ地先沖合漁業協定、日ソ漁業協力協定及び貝殻島昆布協定に基づく交渉により決定された操業条件の下で、我が国漁船及びロシア漁船による操業が行われました。

一方、北方四島周辺水域操業枠組協定に基づく交渉については、令和5(2023)年分の操業に係る協議からロシア側が応じていない状況が続いています。

  1. 正式名称:日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の両国の地先沖合における漁業の分野の相互の関係に関する協定
  2. 正式名称:漁業の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定
  3. 正式名称:日本国政府とロシア連邦政府との間の海洋生物資源についての操業の分野における協力の若干の事項に関する協定
  4. 正式名称:日本漁民による昆布採取に関する北海道水産会とソヴィエト社会主義共和国連邦漁業省との間の協定

〈韓国との関係〉

我が国と韓国との間では、日韓漁業協定*1に基づき、相互入漁の条件(漁獲割当量等)のほか、日本海の一部及び済州島南部の水域に設定された暫定水域における資源管理と操業秩序の問題について協議を行っています。

韓国との間においては、我が国のまき網漁船等の操業機会の確保の要請がある一方で、我が国EEZにおける韓国漁船の違法操業や、暫定水域の一部の漁場の韓国漁船による占拠の問題の解決等が重要な課題となっています。

このような状況を踏まえ、これらの問題の解決に向けて働きかけていますが、合意に至っておらず、現在、相互入漁は行われていません。

  1. 正式名称:漁業に関する日本国と大韓民国との間の協定

〈中国との関係〉

我が国と中国との間では、日中漁業協定*1に基づき、相互入漁の条件や東シナ海の一部に設定された暫定措置水域等における資源管理等について協議を行っています。

近年、東シナ海では、暫定措置水域等において非常に多数の中国漁船が操業しており、水産資源に大きな影響を及ぼしていることが課題となっています。また、相互入漁については、中国側が我が国EEZへの入漁を希望しており、競合する我が国漁船への影響を念頭に、中国漁船の操業を管理する必要があります。

さらに、日本海大和堆やまとたい周辺の我が国EEZにおける多数の中国漁船による違法操業を防止するため、漁業取締船を同水域に重点的に配備し、海上保安庁と連携して対応するとともに、中国に対し、漁業者への指導等の対策強化を含む実効的措置をとるよう繰り返し強く申し入れてきており、今後も、関係省庁が連携し、厳しく対応していきます。

このような状況を踏まえ、違法操業の問題、水産資源の適切な管理及び我が国漁船の安定的な操業の確保について協議を行っていますが、合意に至っておらず、現在、相互入漁は行われていません。

また、我が国固有の領土である尖閣諸島せんかくしょとう周辺においては、中国海警局に所属する船舶による接続水域内での航行や領海侵入等の活動が相次いで確認されており、我が国漁船に近づこうとする動きを見せる事案も繰り返し発生しています。現場海域では、国民の生命・財産及び我が国の領土・領海・領空を断固として守るとの方針の下、関係省庁が連携し、我が国漁船の安全が確保されるよう、引き続き適切に対応していきます。

  1. 正式名称:漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定

〈台湾との関係〉

我が国と台湾の間での漁業秩序の構築と、関係する水域での海洋生物資源の保存と合理的利用のため、我が国の公益財団法人交流協会(現在の公益財団法人日本台湾交流協会)と台湾の亜東関係協会(現在の台湾日本関係協会)との間で「日台民間漁業取決め」が署名されています。この取決めの適用水域はマグロ等の好漁場で、日台双方の漁船が操業していますが、我が国漁船と台湾漁船では操業方法や隻数、規模等が異なることから、一部の漁場において我が国漁船の円滑な操業に支障が生じており、その解消等が重要な課題となっています。このため、我が国漁船の操業機会を確保する観点から、本取決めに基づき設置された日台漁業委員会において、日台双方の漁船が漁場を公平に利用するため、操業ルールの改善に向けた協議が継続されています。

令和7(2025)年1月の協議では、令和7(2025)年漁期の操業ルールについて、八重山北方三角水域において、日本漁船が操業する水域への台湾漁船の漁具流出を抑止するための台湾側の措置(漁業団体の自主管理や当局による行政処分等)を明確に規定することで一致しました。

〈太平洋島しょ国等との関係〉

カツオ・マグロ類を対象とする我が国の海外まき網漁業、遠洋まぐろはえ縄漁業、遠洋かつお一本釣り漁業等の遠洋漁船は、公海だけでなく、太平洋島しょ国やアフリカ諸国のEEZでも操業しています。各国のEEZ内での操業に当たっては、我が国と各国との間で、政府間協定や民間取決めが締結・維持され、二国間で入漁条件等について協議を行うとともに、これらの国に対する海外漁業協力を行っています。

特に太平洋島しょ国のEEZは我が国遠洋漁船にとって重要な漁場となっていますが、近年、太平洋島しょ国側は、カツオ・マグロ資源を最大限活用して、国家収入の増大及び雇用拡大を推進するため、入漁料の大幅な値上げ、漁獲物の現地水揚げ、太平洋島しょ国船員の雇用等を要求する傾向が強まっています。

これらに加え、太平洋島しょ国をめぐっては、中国が、大規模な援助と経済進出を行うなど太平洋島しょ国でのプレゼンスを高めており、入漁交渉における競合も生じてきています。このように我が国漁船の入漁をめぐる環境は厳しさを増していますが、引き続き海外漁業協力を行うとともに、令和6(2024)年7月に開催された第10回太平洋・島サミット等の様々な機会を活用した働きかけを行うことで、海外漁場での安定的な操業の確保に努めているところです。

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344