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水産庁

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(5)大学における水産教育

 

文部科学省が管轄する水産学部や水産学科などを有する大学及び農林水産省が管轄する国立研究開発法人水産研究・教育機構水産大学校(以下「水産大学校」といいます。)のうち、全国水産・海洋系学部等協議会の会員校(19校)は、図2-1-5のとおりです(以下これらを「水産系大学」といいます。)。

図2-1-5 全国の水産系大学(平成31(2019)年3月末現在)

図2-1-5 全国の水産系大学(平成31(2019)年3月末現在)

これらの水産系大学19校のうち、乗船実習や海洋調査等を行うための練習船を所持している大学は平成31(2019)年3月末現在、6校で15隻となっています(表2-1-5)。このうち、文部科学省に教育関係共同利用拠点として認定されている6隻の練習船(北海道大学おしょろ丸、東京海洋大学神鷹丸、三重大学勢水丸、広島大学豊潮丸、長崎大学長崎丸及び鹿児島大学かごしま丸)は他の大学の実習にも利用されています。

表2-1-5 全国水産系大学における練習船

表2-1-5 全国水産系大学における練習船

水産系大学では、特に研究開発や水産業及び関連産業の中核を担える人材の育成に力を入れています。

平成30(2018)年10月に水産庁が水産系大学に対して実施したアンケートによると、就職先は、水産系大学ごとに大きく異なり水産関連分野が8割を超えるところもありますが、全体では水産関連分野が34%となっており、その中では水産加工流通分野が54%と分野別では一番多くなっています(図2-1-6)。

図2-1-6 水産系大学における就職内定者の就職先(平成29(2017)年度)

図2-1-6 水産系大学における就職内定者の就職先(平成29(2017)年度)

また、「水産系学部・専攻に求められていると考えるものは何か」を尋ねたところ、研究開発としては「新しい水産業や科学技術のための基礎研究」や「適切な資源管理や水産業発展に資する応用研究」、人材育成としては「国際的な視野や新たな技術を生み出す発想力を持つ人材の育成」、「専門分野で技術提供・指導を主体的に行いつつ、広い視野を持ち、他者と連携を広げられる柔軟な調整力やコミュニケーション能力等を持つ人材の育成」などの回答がありました。各水産系大学においては、それぞれの特色を生かした独自のカリキュラムが組まれています。

事例海に遊び、海に学ぶ!(水産大学校)

水産大学校は、水産をめぐる海洋環境、船とその運航、海洋生物と生態、水産食品と健康機能から水産流通、企業経営までを幅広くカバーする教育・研究を行っています。平成28(2016)年からは国立研究開発法人水産総合研究センターと統合し、(研)水産研究・教育機構の人材育成部門となりました。海や魚食に親しむ教育、大型練習船による実習(全ての学生が受講)、海技士教育のほか、統合の強みを生かして水産庁職員や水産研究者、水産業界からの生の現場に直結した講義も受けられます。練習船による大型クラゲやマグロ類などの実際の水産資源調査に学生が参加できるのも大きな特徴です。

また、全学的な研究課題として、1)地域特産種を核とした産業振興、2)里海の保全、3)省エネや循環型社会に向けた技術開発・実用化の3課題を掲げ、学生とともに研究しています。1)の研究では、フグ食をめぐる産業振興に取り組み、近年の地球温暖化によると考えられる雑種フグ多発事例を発見しました。2)の例でも、南方性植食性魚類の食害による藻場の減少(磯焼け)をくい止める研究を行っています。3)では、燃料に水を混合するという逆転の発想によって燃費を悪くすることなく排気ガスをクリーンにする装置を開発し練習船に搭載して、実験・実習を行っています。

以上の充実した教育を受けた卒業生は、そのほとんどが幅広く水産関連の業界、公務員、研究所等に就職し、リーダーとして活躍しています。

事例ダルスの栽培による漁業資源回復の取組(北海道大学水産学部)

北海道八雲町やくもちょうの日本海側では、海水温の変動などにより、スケトウダラやイカの漁獲量が激減し、さらに、海藻類が育たない「磯焼け」にも直面し、ウニやナマコの水揚げが落ち込んでいました。そこで日本海沿岸の漁業資源の回復のため、北海道大学と八雲町で共同研究を行う「八雲町水産試験研究施設」が平成31(2019)年1月、同町の熊石くまいし漁港内に開設されました。同施設では、水温が低く安定し細菌も少ない熊石沖の海洋深層水を活用して資源回復を目指します。共同研究のテーマの1つが、低カロリーで栄養豊富なスーパーフードとして注目されている紅藻類の「ダルス」の試験栽培です。「ダルス」は冬季に生長しますが、夏場でも5℃以下の海洋深層水を活用することで通年栽培を目指します。このほか、生育不良で漁獲に至らず、磯焼けの一因となっている「痩せウニ」に人工の餌を与えて養殖する実証実験も行われる予定です。将来的には町に面する日本海と噴火湾双方を網羅する研究拠点を目指しており、地元漁業の活性化につながることが期待されます。

魚食体験の写真
漁業現場体験の写真

事例3大学連携による三陸水産業の復興と水産システム学コースの新設(岩手大学)

岩手大学では、東日本大震災が発生した平成23(2011)年の10月に、東京海洋大学や北里大学とともに、「三陸水産業の復興と地域の持続的発展に寄与する3大学連携推進に関する基本合意書」を取り交わし、水産業の復興・発展に寄与する研究開発の企画・実施及び高度専門人材の育成を開始しました。

平成24(2012)年から開始した「SANRIKU(三陸)水産研究教育拠点形成事業」では、従来の水産業に科学的根拠に基づく付加価値を加え、川下から川上まで一貫した水産業の高度化・三陸水産品のブランド化を目指しました。

図:SANRIKU(三陸)水産研究教育拠点形成事業の概要

図:SANRIKU(三陸)水産研究教育拠点形成事業の概要

その研究成果を確実に教育・人材育成に生かすため、平成28(2016)年4月、それまで世界有数の好漁場である三陸沖に面した岩手県にありながら、水産・海洋とは無縁だった岩手大学の農学部に学生定員20名、専任教員6名の水産システム学コースを新設し、三陸地域の震災復興や地域創生に携わる人づくりを開始しました。

水産システムを構築する1つ1つの個別研究は既に主要な水産研究分野として多くの研究機関に存在していますが、三陸に代表される高い生産力に裏打ちされた多様な漁業を基軸とする水産システムは極めて複雑で、潜在的に高い学術的価値を有しています。このため、本コースは、海洋の生産力に依存して成り立つ水産物の生産・供給に関わる全てのセクターが連動する水産業のシステムに着目し、水産業を構成する個別セクターにとらわれない俯瞰ふかん的な研究・教育を目指しています。

また、平成29(2017)年4月から、岩手大学の大学院として総合科学研究科地域創生専攻地域産業コース水産業革新プログラムを新設して、更に高度な専門性を持ち水産業を俯瞰的に理解できる「水産プロモーター」の育成を行っており、持続的な水産業とその先にある東日本大震災からの復興に貢献しうる人材として活躍することが期待されます。

さらに、3大学では、専門性の高い大学院の授業を相互補完し教育内容や人材育成の充実を図るため、平成30(2018)年10月に「単位互換に関する協定」を締結し、3大学間での連携を進めています。

事例海洋に関する総合的な教育・研究(東京海洋大学)

平成15(2003)年にそれまでの東京水産大学と東京商船大学が統合した東京海洋大学は、研究者を含む高度専門職業人養成を核として、海洋に関する総合的教育研究を行い、海洋分野において国際的に活躍する産官学のリーダーを輩出するための卓越した教育の実現を目指しています。さらに、海洋に特化した大学であるという特色を生かし、環境、資源、エネルギーを中心に、これら3領域の複合部分と周辺領域を含めた幅広い分野を包括した海洋分野におけるグローバルな学術研究の強力な推進とその高度化に取組んでいます。

表:平成30(2018)年度実績

表:平成30(2018)年度実績

また、水産・海洋系の高校を中心にいくつかの高校との間で、高大連携による協定を締結しています。この連携は高校生が大学の講義を体験し、キャンパスの雰囲気に直接触れることによって、学問に対する意欲の啓発や進路意識の向上を図り、また、最新の研究情報や実習施設・機器に触れることにより、学習をより進化させる一助とすることを目的としています。

事例地下海水で陸上養殖(東海大学海洋学部)

東海大学海洋学部のキャンパスは静岡県静岡市清水地区に位置しています。キャンパスのある駿河湾に突き出した半島では地下20~50mに海水が浸透している層があり、井戸を掘ると地下海水を引くことができます。この地下海水は、1年を通して水温が20℃前後と安定していることと、酸素を含まないため細菌や寄生虫の混入がないことなどの特徴があり、東海大学ではこの地下海水を用いた陸上養殖の研究が行われています。

陸上養殖の研究の成果の1つがカワハギです。カワハギの肝は海のフォアグラと呼ばれ、高値で取引されていますが、天然のカワハギは産卵期を迎える夏に肝が小さくなってしまいます。しかし、水温が一定である地下海水を用いた養殖では、カワハギは年間を通して肝が大きくなるため、夏には肝が天然物よりも大きくなる上に、細菌や寄生虫の混入がないため、魚病対策のための薬を使う必要もありません。平成26(2014)年度からは地元の業者による養殖が始まり、市内のすし店などで提供されています。

陸上養殖の研究はカワハギのほかに、トラウトサーモン(ニジマスの降海型)やマグロ、アワビ、トラフグなどにも取り組んでいます。今後、様々な魚種の陸上養殖の技術が開発されることが期待されます。

カワハギの稚魚の写真
クロマグロの写真

事例グローバルな人材の育成(長崎大学水産学部)

長崎大学水産学部では、魚の生態系から食品加工や養殖技術まで水産に関連するグローバルな人材の育成に力を入れています。

長崎大学では、大型の「長崎丸」と沿岸用の「鶴洋丸かくようまる」の2隻の練習船を用いて、有明海や対馬周辺などの近海から、漁業資源に恵まれた東シナ海などの外洋まで乗船実習を行っています。「長崎丸」は光の届かない深海まで探査できる最新の水中ロボットや薫製くんせい装置などの食品加工設備を装備しています。近年は周辺諸国による水産資源の争奪戦が繰り広げられるなど資源の減少が心配されていますが、乗船実習では海洋の汚染状況や汚染による魚介類への影響、資源量等を研究し、東シナ海を囲む中国や韓国、台湾、ベトナムなどの教育機関と連携し、共同研究や国際シンポジウムを開催しています。

乗船実習の他に、同大学の環東シナ海環境資源研究センターでの臨海実習、食品加工工場での実習、東シナ海でのトロール実習や漁業調査・海洋観測実習など多くの実習を取り入れています。

長崎大学の学生は様々な授業や実習を通して、水産業の現場で役立つ応用力を磨いています。

長崎大学水産学部教員、日本人学生及び留学生の議論の写真

事例アジアの大学と連携した国際共同教育(鹿児島大学水産学部)

鹿児島大学水産学部では、平成26(2014)年に、大学院(修士課程)において「熱帯水産学国際連携プログラム」が設置されました。本プログラムは、グローバル化する国内外の産業社会で活躍できる人材育成を目的としています。鹿児島大学が主唱し、カセサート大学(タイ)、フィリピン大学、サムラトランギ大学(インドネシア)、トレンガヌ大学(マレーシア)、ニャチャン大学(ベトナム)の6大学が連携して1つのカリキュラムを形成しています。プログラムに登録した学生が、構成大学で自由に学修し単位を取得できる画期的な制度です。プログラム登録学生は、例えば世界一の水産食品産業を背景としたカセサート大学の教育、フィリピン大学の高い英語教育、サムラトランギ大学の世界遺産に指定されたフィールドでの実習など、各大学の特徴ある科目を履修することができ、単一大学では不可能な魅力的な授業を、追加受講料を払うことなく履修することができます。本プログラムは、多国の大学がカリキュラムを共有し、水産学の国際共同教育を進めるアジア初の取組です。今後もこのアジア水産系高等教育の拠点から、質の高いグローバル人材が育成されていくことが目指されています。

鹿児島大学での講義に参加した各国の学生と教員の写真
各国の学生による実験の様子の写真