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水産庁

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(3)漁業労働環境をめぐる動向

ア 漁船の事故及び海中転落の状況

平成30(2018)年の漁船の船舶海難隻数は539隻、漁船の船舶海難に伴う死者・行方不明者数は26人となりました(図3-2-14)。漁船の事故は、全ての船舶海難隻数の約2割、船舶海難に伴う死者・行方不明者数の約3割を占めています。漁船の事故の種類としては衝突が最も多く、その原因は、見張り不十分、操船不適切、気象海象不注意といった人為的要因が多くを占めています。

漁船は、進路や速度を大きく変化させながら漁場を探索したり、停船して漁労作業を行ったりと、商船とは大きく異なる航行をします。また、操業中には見張りが不十分となることもあり、さらに、漁船の約9割を占める5トン未満の小型漁船は大型船からの視認性が悪いなど、事故のリスクを抱えています。

図3-2-14 漁船の船舶海難隻数及び船舶海難に伴う死者・行方不明者数の推移

図3-2-14 漁船の船舶海難隻数及び船舶海難に伴う死者・行方不明者数の推移

船上で行われる漁労作業では、不慮の海中転落*1も発生しています。平成30(2018)年における漁船からの海中転落者は73人となり、そのうち47人が死亡又は行方不明となっています(図3-2-15)。

また、船舶海難や海中転落以外にも、漁船の甲板上では、機械への巻き込みや転倒等の思わぬ事故が発生しがちであり、漁業における災害発生率は、陸上における全産業の平均の約5倍と、高い水準が続いています(表3-2-5)。

  1. ここでいう海中転落は、衝突、転覆等の船舶海難以外の理由により発生した船舶の乗船者の海中転落をいう。

図3-2-15 海中転落者数及び海中転落による死者・行方不明者数の推移

図3-2-15 海中転落者数及び海中転落による死者・行方不明者数の推移

表3-2-5 船員及び陸上労働者災害発生率

表3-2-5 船員及び陸上労働者災害発生率

イ 漁業労働環境の改善に向けた取組

漁業労働における安全性の確保は、人命に関わる課題であるとともに、漁業に対する就労意欲にも影響します。これまでも、技術の向上等により漁船労働環境における安全性の確保が進められてきましたが、漁業労働にはなお、他産業と比べて多くの危険性が伴います。このため、引き続き、安全に関する技術の開発と普及を通して、よりよい労働環境づくりを推進していくことが重要です。

このため、国では、全国で「漁業カイゼン講習会」を開催して漁業労働環境の改善や海難の未然防止に関する知識を持った安全推進員等を養成し、漁業者自らが漁業労働の安全性を向上させる取組を支援しています。

また、海中転落時には、ライフジャケットの着用が生存に大きな役割を果たします。平成30(2018)年のデータでは、漁業者の海中転落時のライフジャケット着用者の生存率(78%)は、非着用者の生存率(41%)の約2倍です(図3-2-16)。平成30(2018)年2月以降、小型船舶におけるライフジャケットの着用義務の範囲が拡大され、原則、船室の外にいる全ての乗船者にライフジャケットの着用が義務付けられました*1。しかしながら、「かさばって作業しづらい」、「着脱しにくい」、「夏場に暑い」、「引っかかったり巻き込まれたりするおそれがある」等の理由からライフジャケットを着用しない漁業者も依然として多く、平成30(2018)年の海中転落時におけるライフジャケット着用率は約5割となっており、国では、より着用しやすく動きやすいライフジャケットの普及を促進するとともに、引き続き着用率の向上に向けた周知啓発活動を行っていくこととしています。さらに、小型漁船の安全性向上のため、漁船の自船位置及び周辺船舶の位置情報等をスマートフォンに表示して船舶の接近等を漁業者にアラームを鳴らして知らせることにより、衝突、転覆事故を回避するための実証試験が進められています。

  1. 着用義務に違反した場合、小型船舶であっても、船長(小型船舶操縦士免許の所有者)に違反点数が付与され、違反点数が行政処分基準に達すると最大で6か月の免許停止(業務停止)となる場合がある。

図3-2-16 ライフジャケットの着用・非着用別の漁船からの海中転落者の生存率

図3-2-16 ライフジャケットの着用・非着用別の漁船からの海中転落者の生存率

陸上では、大容量の情報通信インフラの整備が進み、家族や友人等とのコミュニケーションの手段としてSNS*1などが普及しています。一方、海上では、衛星通信が利用されていますが、大容量の情報通信インフラの整備が遅れていること、利用者が船舶関係者に限定され需要が少ないこと、従量制料金のサービスが中心で定額制料金のサービスが始まったばかりであることなど陸上と異なる制約があるため、ブロードバンドの普及に関して、陸上と海上との格差(海上のデジタル・ディバイド)が広がっています。

このため、船員・乗客が陸上と同じようにスマートフォンを利用できる環境を目指し、利用者である船舶サイドのニーズも踏まえた海上ブロードバンドの普及が喫緊の課題となっています。水産庁では総務省や国土交通省と連携し、漁業者のニーズに応じたサービスが提供されるよう通信事業者等を交えた意見交換を実施したり、新たなサービスについて水産関係団体へ情報提供を行ったりするなど、海上ブロードバンドの普及を図っています。

  1. Social Networking Service:登録された利用者同士が交流できるwebサイトのサービス。