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水産庁

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(4)「スマート水産業」の推進等に向けた技術の開発・活用

 

我が国の水産業は漁業生産量の減少、漁業従事者の減少・高齢化といった厳しい現状にあります。このような状況において漁業・養殖業の競争力の強化を図り、水産業を成長産業とするためには、漁業の根幹である水産資源の維持・回復はもちろんのこと、近年著しい技術革新が図られているICT*1・IoT*2・AI*3といった技術やドローン・ロボット技術等を有効に活用し、漁業・養殖業現場へ導入・普及していくことが重要です。こういった分野については、様々な技術開発や民間企業等における取組が進められており、これらの取組の充実・横展開を目指していくとともに、更なる高度化に向けた検討・実証も推進していくことが必要です。例えば、従来、経験や勘を基本として行われてきた漁場の探索について、ICTを用いて、水温や塩分、潮流等漁場環境に関する情報の可視化に向けた実証試験やかつお一本釣り漁船への自動釣機導入の実証試験等も進められており、こうした新たな技術の導入によって、省人・省力化による収益性の向上やデータに基づく漁業の実現が期待されます。

  1. Information and Communication Technology:情報通信技術、情報伝達技術。
  2. Internet of Things:モノのインターネットといわれる。自動車、家電、ロボット、施設などあらゆるモノがインターネットにつながり、情報のやり取りをすることで、モノのデータ化やそれに基づく自動化等が進展し、新たな付加価値を生み出す。
  3. Artificial Intelligence:人工知能。機械学習ともいわれる。

養殖業においては、各地の養殖地でICTブイを活用した漁場環境データの収集・活用が始まりつつあり、これらのデータを共有し、衛星情報や海況情報等を新たに活用することにより、例えば赤潮の予測や、高水温による養殖魚の斃死等に対応できる情報提供システムの開発を目指しています。

また、資源の評価・管理においては、より多くの魚種の資源状態を正確に把握していくため、漁船にデジタル操業日誌等のICT機器を搭載し、直接操業・漁場環境情報を収集する体制の整備に向けた実証試験を進めているところです。今後はこれに加え、ICTを活用して産地市場から水揚情報を迅速に収集していく仕組みの構築に向けた検討・検証を開始していくこととしています。これらの取組を通じて資源評価の高度化を図り、資源状態の悪い魚種については適切な管理の実施につなげていくことを目指しています。

水産物の加工・流通の分野では、種々の魚種について画像センシング技術を活用した高速での選別技術の開発を行っているほか、水産物の水揚げから輸出に至る履歴情報をICTを活用して管理する取組の実証を行っています。今後は、このような技術も活用して、生産と加工・流通が連携して水産バリューチェーンの生産性を改善する取組を推進することとしています。

加えて、これらの取組を含め、生産から流通にわたる多様な場面で得られるデータの連携・共有・活用を可能とする「水産業データ連携基盤(仮称)」を構築することで、更なるデータ有効活用が可能となり、データのフル活用による効率的・先進的なスマート水産業への転換につなげていくことが期待されます(図3-2-17)。

その他にも様々な技術開発が行われています。資源の減少が問題となっているニホンウナギや太平洋クロマグロについて、資源の回復を図りつつ天然資源に依存しない養殖種苗の安定供給を確保するため、人工種苗を量産するための技術開発が進められています。さらに、カキやホタテガイ等における正確な貝毒検出方法に関する技術開発等、消費者の安全・安心につながる技術開発も行われています。

スマートフォンで提供する漁場形成予測画面など

図3-2-17 スマート水産業のイメージ

図3-2-17 スマート水産業のイメージ