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水産庁

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(2)漁場環境をめぐる動き

 

(顕在化しつつある気候変動の影響への対策を推進)

気候変動は、地球温暖化による海水温の上昇等により、水産資源や漁業・養殖業に影響を与えます。日本近海における、令和元(2019)年までのおよそ100年間にわたる海域平均海面水温(年平均)の上昇率は、+1.14℃/100年です(図特-1-7)。 この上昇率は、世界全体で平均した海面水温の上昇率(+0.55℃/100年)よりも大きく、日本の気温の上昇率(+1.24℃/100年)と同程度の値です。一方、海面水温の推移には10年規模の変動も認められ、近年は平成12(2000)年頃に極大、平成22(2010)年頃に極小となった後、上昇しています。さらに、局所的な海況の変化も日々起こっており、水産資源の現状や漁業・養殖業への影響を考える際には、これら様々なスケールの変動・変化を考慮する必要があります。

図特-1-7 日本近海の平均海面水温の推移

図特-1-7 日本近海の平均海面水温の推移

平成期において、我が国周辺水域では海水温の上昇が主要因と考えられる現象が顕在化してきており、近年では、北海道でのブリの豊漁やサワラの分布域の北上、九州沿岸での磯焼けの拡大とイセエビやアワビ等の磯根資源の減少、南方性エイ類の分布拡大による西日本での二枚貝やはえ縄漁獲物の食害の増加等が報告されています(図特-1-8)。中期的な変化としては、北太平及び北極海の過去36年分の表面水温データから、サケの夏季の分布可能域(水温2.7℃~15.6℃)が北へシフトし、その面積は約1割減少した可能性があることが報告されています(図特-1-9)。

気候変動はまた、海水温だけでなく、深層に堆積した栄養塩類を一次生産が行われる表層まで送り届ける海水の鉛直混合、表層海水の塩分、海流の速度や位置にも影響を与えるものと推測されています*1。このような環境の変化を把握するためには、調査船や人工衛星を用いた観測によりモニタリングを行っていくことが重要です。また、地域の水産資源や水産業に将来どのような影響が生じ得るかを把握するため、関係省庁や大学等とも連携して、数値予測モデルを使った研究や影響評価を行うとともに、取り得る対策案を事前に検討しておく取組も進められており、今後もこれらを継続していくことが重要です(図特-1-10)。

気候変動に対しては、近年、水産分野においても、気温上昇をできるだけ抑えるための温室効果ガスの排出抑制等による「緩和」と、高水温耐性を有する養殖品種の開発等の「適応」の両面から対策が進められています。

  1. 温暖化により表層の水温が上昇すると、表層の海水の密度が低くなり沈みにくくなるため、鉛直混合が弱まると予測されている。

図特-1-8 北海道におけるブリ漁獲量の推移

図特-1-8 北海道におけるブリ漁獲量の推移

図特-1-9 北太平洋及び北極海におけるサケの分布可能域の変化

図特-1-9 北太平洋及び北極海におけるサケの分布可能域の変化

図特-1-10 北日本におけるコンブ類11種の種多様性の変化予測

図特-1-10 北日本におけるコンブ類11種の種多様性の変化予測

(漁場環境改善に向けた施策・取組を推進)

東京湾、瀬戸内海等の内湾では、高度経済成長期以降、工業廃水や生活排水による栄養塩類の過剰な流入によって富栄養化が進行し赤潮の発生頻度の増加が顕著になりました。昭和45(1970)年に制定された「水質汚濁防止法*1」による排水規制の強化等により、各地で水質が改善して赤潮の発生頻度は減少しましたが、平成期においても、依然としてある程度の件数の発生が確認されてきました。また、国では、海面を利用する養殖業について、平成11(1999)年に「持続的養殖生産確保法*2」を制定し、同法に基づき、漁協等が漁場環境改善のための取組等をまとめた「漁場改善計画」を策定し、これを平成23(2011)年度から「資源管理・収入安定対策*3」により支援することで、養殖漁場の環境改善を推進しています。

有明ありあけ海や八代やつしろ海では、周辺の経済社会や自然環境の変化に伴い、底質の泥化や有機物の堆積等海域の環境が悪化し、赤潮の増加や貧酸素水塊の発生等が見られる中で、二枚貝を始めとする漁業資源の悪化が進み、海面漁業生産が減少しました。これらの状況に鑑み、平成12(2000)年度のノリの不作を契機に「有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律*4」が平成14(2002)年に制定され、関係県は環境の保全及び改善並びに水産資源の回復等による漁業の振興に関し実施すべき施策に関する計画を策定し、有明海及び八代海等の再生に向けた各種施策を実施しています。

瀬戸内海では、「水質汚濁防止法」に基づく対策に加え、「瀬戸内海環境保全特別措置法*5」等に基づき水質改善に取り組んだ結果、水質は総体として改善されましたが、依然として、赤潮や貧酸素水塊等の発生、漁業生産量の低迷、藻場や干潟の減少等の課題が残っています。これを受けて、平成27(2015)年10月には、同法が改正され、瀬戸内海を、人の活動が自然に対して適切に作用することを通じて美しい景観が形成され、生物の多様性・生産性が確保されるなど多面的価値・機能が最大限に発揮される豊かな海(里海)とするため、栄養塩類の管理の在り方について、検討が開始され、調査研究等の様々な施策が取り組まれています。

  1. 昭和45(1970)年法律第138号
  2. 平成11(1999)年法律第51号
  3. 平成27(2015)年度から「漁業収入安定対策」に名称変更。
  4. 平成14(2002)年法律第120号。平成23(2011)年に法律名を「有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律」に改正。
  5. 昭和48(1973)年法律第110号

(海洋ごみへの注目が高まる)

昭和後期から、日常生活に伴い排出されるプラスチック類や流出した漁具等の海洋ごみによる生物及び船舶航行への悪影響について、国内外で関心が高まってきました。そのような中で、平成4(1992)年には、国連環境開発会議(地球サミット)がリオデジャネイロで開催され、現在の環境保全や開発に関する考え方の基盤ができました。国内では、平成5(1993)年に水産関係者が中心となって「社団法人海と渚環境美化推進機構(マリンブルー21)」(現在の公益財団法人海と渚環境美化・油濁対策機構)が設立され、同機構を中心に、浜辺のごみ回収等の海洋・海岸環境の保全活動が全国的に開始されました。同機構や漁協系統団体等の取組によって海浜・河岸の清掃活動が積極的に行われるようになり、同機構の調査によれば、近年では毎年延べ100万人程度が海浜等清掃活動に参加しています。

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX番号:03-3501-5097