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水産庁

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(3)水産物消費の変化

 

(世界の1人当たりの食用魚介類の消費量は半世紀で約2倍に)

世界では、1人当たりの食用魚介類の消費量が過去半世紀で約2倍に増加し、平成期においてもそのペースは衰えていません(図特-1-11)。

FAOは、食用魚介類の消費量の増加の要因として、輸送技術等の発達により食品流通の国際化が進展し、また、都市人口の増加を背景に国際的なフードシステムとつながったスーパーマーケット等での食品購入が増えていること、また、この結果として経済発展の進む新興国や途上国では芋類等の伝統的主食からたんぱく質を多く含む肉、魚等へと食生活の移行が進んでいることなどを挙げています。さらに、健康志向の高まりも水産物の消費を後押ししているものと考えられます。魚介類は、世界の動物性たんぱく質供給量の17%を担う重要な食料資源となっています。

1人当たりの食用魚介類の消費量の増加は世界的な傾向ですが、とりわけ、元来、魚食習慣の強いアジアやオセアニア地域では、生活水準の向上に伴って顕著な増加を示しています。特に、中国では過去半世紀に約9倍、インドネシアでは約4倍となるなど、新興国を中心とした伸びが目立ちます(図特-1-12)。

一方、動物性たんぱく質の摂取が既に十分な水準にある欧州及び北米地域では、その伸びは鈍化傾向にあります。我が国の1人当たりの食用魚介類の消費量は、世界平均の2倍を上回っているものの、約50年前と同水準まで減少してきており、世界の中では例外的な動きを見せています。

図特-1-11 地域別の世界の1人1年当たり食用魚介類消費量の推移(粗食料ベース)

図特-1-11 地域別の世界の1人1年当たり食用魚介類消費量の推移(粗食料ベース)

図特-1-12 主要国・地域の1人1年当たり食用魚介類消費量の推移(粗食料ベース)

図特-1-12 主要国・地域の1人1年当たり食用魚介類消費量の推移(粗食料ベース)

(食用魚介類の国内消費仕向量は平成中期から減少)

我が国における食用魚介類の国内消費仕向量は、平成元(1989)年度から13(2001)年度に850万トン前後で推移した後に減少し続け、平成28(2016)年度には肉類の国内消費仕向量を下回り、平成30(2018)年度には569万トン(概算値)となりました(図特-1-13)。

また、我が国における食用魚介類の1人1年当たりの消費量*1は、平成13(2001)年度の40.2kgで過去最高となりました。その後は減少傾向にあり、平成23(2011)年度に初めて肉類の消費量を下回り、平成30(2018)年度には23.9kg(概算値)となりました。

  1. 農林水産省では、国内生産量、輸出入量、在庫の増減、人口等から「食用魚介類の1人1年当たり供給純食料」を算出している。この数字は、「食用魚介類の1人1年当たり消費量」とほぼ同等と考えられるため、ここでは「供給純食料」に代えて「消費量」を用いる。

図特-1-13 食用魚介類の国内消費仕向量及び1人1年当たり消費量の変化

図特-1-13 食用魚介類の国内消費仕向量及び1人1年当たり消費量の変化

また、「国民健康・栄養調査」に基づいて年齢階層別の魚介類摂取量を見てみると、平成10(1998)年以降はほぼ全ての世代で摂取量が減少傾向にあります(図特-1-14)。

図特-1-14 年齢階層別の魚介類の1人1日当たり摂取量の変化

図特-1-14 年齢階層別の魚介類の1人1日当たり摂取量の変化

(よく消費される生鮮魚介類は、イカ・エビからサケ・マグロ・ブリへ変化)

我が国の1人当たり生鮮魚介類の購入量は減少し続けていますが、よく消費される生鮮魚介類の種類は変化しています。平成元(1989)年にはイカやエビが上位を占めていましたが、近年は、切り身の状態で売られることの多い、サケ、マグロ及びブリが上位を占めるようになりました(図特-1-15)。

図特-1-15 生鮮魚介類の1人1年当たり購入量及びその上位品目の購入量の変化

図特-1-15 生鮮魚介類の1人1年当たり購入量及びその上位品目の購入量の変化

消費の上位を占めているサケ、マグロ及びブリの3魚種について、1世帯1年当たりの地域ごとの購入量を平成元(1989)年と平成30(2018)年で比較すると、地域による購入量の差が縮まっています(図特-1-16)。かつては、地域ごとの生鮮魚介類の消費の中心は、その地域で獲れるものでしたが、流通や冷蔵技術の発達により、以前はサケ、マグロ及びブリがあまり流通していなかった地域でも購入しやすくなったことや、調理しやすい形態で購入できる魚種の需要が高まったことなどにより、全国的に消費されるようになったと考えられます。特にサケは、平成期にノルウェーやチリの海面養殖による生食用のサーモンの国内流通量が大幅に増加したこともあり、地域による大きな差が見られなくなっています。

図特-1-16 都道府県庁所在都市別のサケ、マグロ及びブリの1世帯1年当たり鮮魚購入量

図特-1-16 都道府県庁所在都市別のサケ、マグロ及びブリの1世帯1年当たり鮮魚購入量

(消費者の食の簡便化志向が強まる)

平成期には、女性の社会進出や共働き家庭の増加に伴う家事時間の短縮により、食の簡便化志向が強まり、簡単に調理できる、又はすぐに食べられる食品がより一層求められるようになってきました(図特-1-17)。また、単身世帯の増加等の世帯人数の減少に伴い、世帯によっては、調理食品(弁当などを含む。)の購入や外食の方が家庭内で調理するより合理的と考える人が増えてきたとも考えられます。

こうしたことを背景として、家計の食料支出額に占める調理食品や外食の支出額の割合が増加してきました(図特-1-18)。一方、魚介類購入額の比率は減少し続けており、水産物消費は、家庭内での調理から調理食品や外食に比重が移ってきています。

このようにライフスタイルが変化する中、水産物の消費を拡大するためには、消費者の簡便化志向に合わせた商品の開発・供給が必要です。一方で、水産物の多様な食文化を継承していくためには、これまでの主な継承の場であった家庭だけでなく、インターネットや漁業者、水産関係団体等による魚食普及の取組も重要です。

図特-1-17 女性就業率と平日の男女別家事時間の推移

図特-1-17 女性就業率と平日の男女別家事時間の推移

図特-1-18 食料支出額に占める外食等の支出額の割合の変化

図特-1-18 食料支出額に占める外食等の支出額の割合の変化

(魚食普及に向けた様々な取組が始まる)

平成期においては、1人当たりの魚介類の消費量が減少に転じる中で、漁業者、水産関係団体、流通業者等様々な関係者による魚食普及の活動が活発化し、様々な取組が始まりました。

「魚の国のしあわせ」プロジェクトは、消費者に広く魚食の魅力を伝え水産物消費を拡大していくため、漁業者、水産関係団体、流通業者、各種メーカー、学校・教育機関、行政等の水産に関わるあらゆる関係者による官民協働の取組として、平成24(2012)年8月に開始されました。

このプロジェクトの下、国は、水産物の消費拡大に資する様々な取組を行っている企業・団体を登録・公表し、魚食普及を目的に個々の活動の更なる拡大を図る「魚の国のしあわせ」プロジェクト実証事業を行っています。優良な取組は「魚の国のしあわせ」推進会議によって魚の国のしあわせ大賞として表彰されています。

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX番号:03-3501-5097