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水産庁

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(5)資源の持続的利用の取組

ア 栽培漁業の変遷

(大量生産・放流体制から共同生産体制へ)

栽培漁業は、人間の管理下で種苗を生産し、これを天然の水域へ放流することで、対象とする水産動物の資源の持続的な利用を図ろうとするものです。

昭和後期、世界的な200海里水域の設定の広がりによる遠洋漁業の衰退縮小を背景として、栽培漁業による生産量の増大が期待されるようになりました。1980年代から1990年代にかけては、国及び地方公共団体の栽培漁業センターの整備が進み、種苗の大量生産、大量放流の体制が確立したことによって、アワビ類、ウニ類、マダイ、ヒラメ、クルマエビ、サケなどの主な種苗放流の対象種の放流数がピークとなりました(表特-1-1)。その後、平成12(2000)年に策定された第4次栽培漁業基本方針においては、放流資源と天然資源を併せて管理するという考え方が導入されました。

さらに、平成期には種苗放流の効果が検証されるようになったほか、平成18(2006)年には、栽培漁業関連の国の補助金・交付金が都道府県に税源移譲され、栽培漁業は都道府県などの裁量の下で自主的に取組を進めることになりました。一方、アワビ類やウニ類といった磯根資源の種苗放流の適地である藻場が、海水温の上昇が主要因と考えられる磯焼けの拡大によって減少し、種苗放流によって効果を得ることが困難となってきたと言われています。

サケ(シロサケ)やマダイ等は漁業者自らの負担で放流が行われていますが、近年では、都道府県の種苗生産能力の低下等によって放流量が減少しています。このような状況を踏まえ、国としては、資源管理の取組との連携を強めるとともに、都道府県の区域を越えた広域種について、種苗放流に係る受益と費用負担の公平化に向けた取組や関係都道府県の種苗生産施設間での連携、分業等による低コストで生産能力の高い共同種苗生産体制の構築の取組等を推進しています。

表特-1-1 種苗放流の主な対象種・放流数

表特-1-1 種苗放流の主な対象種・放流数

イ 資源管理の進展

(漁獲可能量制度の導入)

「国連海洋法条約」では、沿岸国がEEZを設定した場合には、その沿岸国は当該水域における漁獲可能量(以下「TAC」といいます。)を定め、水産資源の適切な保存・管理措置を講ずることが義務付けられています。このため、我が国では「国連海洋法条約」の批准に際してTAC法が制定され、平成9(1997)年1月から同法に基づくTAC制度の運用が開始されました。TAC制度は、魚種別に1年間の漁獲量をTACとしてあらかじめ定め、漁業の管理主体である国及び都道府県ごとに割り当て、それぞれの管理主体が、漁業者の報告を基に割当量の範囲内に漁獲量を収めるよう漁業を管理する制度です。対象種である「特定海洋生物資源」として、採捕数量及び消費量が多く、国民生活上又は漁業上重要な魚種を中心にサンマ、スケトウダラ、マアジ、マイワシ、サバ類及びズワイガニの6魚種が指定され、平成10(1998)年にスルメイカが追加されました。当初は漁獲実績等を勘案して生物学的許容漁獲量(ABC)を超えたTACを設定していましたが、平成20(2008)年のTAC制度等の検討に係る有識者懇談会以降、ABCを超えることのないようにTACを設定することとし、平成27(2015)年にはその例外となっていたスケトウダラ日本海北部系群でも同様に設定することとするなど改善を進めました(図特-1-19)。

図特-1-19 TACとABCの推移

図特-1-19 TACとABCの推移

(太平洋クロマグロについてTAC制度の運用開始)

太平洋クロマグロについては、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)で決定された漁獲規制措置の的確な実行のため、平成30(2018)年漁期からTAC法に基づく管理措置に移行しました。太平洋クロマグロ以外のTAC魚種については、漁獲量の少ない都道府県に対しては、漁獲努力量を増加させないことを条件に、TACの配分では数量を明示しない「若干」配分とするなどの弾力的な運用が行われてきました。しかし、太平洋クロマグロについては、国際約束を遵守するため、TAC制度に基づく管理の開始に伴い、全ての沿海都道府県に数量を明示した配分を行い、個々の漁業者の漁獲数量の把握及び漁獲量の上限に達した場合の採捕停止措置を講じるなど、全ての漁業者に対して厳格な漁獲量管理を導入する初めての魚種となりました。

(漁業者等による資源管理の展開)

我が国の水産資源管理においては、「漁業法」等による公的規制と併せ、漁業者の間で、休漁、漁獲物の体長制限、操業期間・区域の制限等の自主的な資源管理が行われてきました。平成3(1991)年度からは、資源管理型漁業推進総合対策事業の下、キンメダイ等の広域回遊資源について国や地方公共団体、 漁業者組織が一体となった管理の取組が行われるようになりました。さらに、平成14(2002)年度から、国や都道府県が策定する「資源回復計画」が開始されました。「資源回復計画」は、減少傾向にある魚種について、幅広い範囲の関係漁業者、都道府県、国等が協力して、必要な対策を計画的、総合的に行い、その回復を図ろうとするもので、漁業者の自主的な取組を国や県の公的な管理枠組みの中に整合的に取り込んだものです。平成23(2011)年度からは、国及び都道府県が、水産資源に関する管理方針とこれを踏まえた具体的な管理方策をまとめた「資源管理指針」を策定し、これに沿って、関係する漁業者・団体が、管理目標とそれを達成するための公的・自主的管理措置を含む「資源管理計画」を作成・実践するという資源管理体制が導入されました。

さらに、平成27(2015)年からは、計画の策定から5年目を迎えた「資源管理計画」に対し、科学的指標である資源評価結果や単位努力量当たり漁獲量(CPUE)を用いて、取組内容を評価・検証し、その結果を踏まえ、必要に応じ、取組内容を見直すこととしました。平成31(2019)年3月までに、2,031件*1の「資源管理計画」が策定されており、我が国の漁業生産量の約9割が「資源管理計画」の下で生産されています。

平成23(2011)年度からは、これらの「資源管理計画」の取組を支援するため、資源管理措置の実施に伴う一時的な収入の減少を補てんする「資源管理・収入安定対策」(平成27(2015)年度からは「漁業収入安定対策」に名称変更)も併せて導入され、漁業者が積極的に資源管理に取り組むことができる環境が整備されています。

  1. 令和2(2020)年3月時点では、2,041件の「資源管理計画」が策定。

(国際的な資源管理の推進)

「国連海洋法条約」では、沿岸国及び高度回遊性魚種を漁獲する国は、当該資源の保存及び利用のため、EEZの内外を問わず地域漁業管理機関を通じて協力することが規定されています。この地域漁業管理機関では、沿岸国や遠洋漁業国などの関係国・地域が参加し、資源評価や資源管理措置の遵守状況の検討を行った上で、漁獲量規制、漁獲努力量規制、技術的規制などの実効ある資源管理の措置に関する議論が行われます。

カツオ・マグロ類資源に関する地域漁業管理機関としては、昭和期に全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)及び大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)が設立されていましたが、平成期においては、平成6(1994)年にみなみまぐろ保存委員会(CCSBT)*1、平成8(1996)年にインド洋まぐろ類委員会(IOTC)*2、平成16(2004)年に中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)*3が新たに設立され、これら5つの地域漁業管理機関によって世界のカツオ・マグロ類資源は全てカバーされることとなりました。

また、カツオ・マグロ類以外の底魚等の資源に関しても、平成24(2012)年に南インド洋漁業協定(SIOFA)及び南太平洋公海資源保存管理条約が発効しました。平成27(2015)年には中国、台湾等の漁船の公海での漁獲が増加してきたことを踏まえ、北太平洋公海におけるサンマ、サバ類、クサカリツボダイ等の資源管理を行う北太平洋漁業委員会(NPFC)*4が我が国の主導により設立されるなど、平成期には世界各地で新たな地域漁業管理機関の設立が相次ぎました。さらに、漁業活動が行われていなかった中央北極海の公海水域についても、平成30(2018)年10月に「中央北極海における規制されていない公海漁業を防止するための協定(中央北極海無規制公海漁業防止協定)」が署名され、我が国は令和元(2019)年7月に同協定を締結しました。

  1. 平成6(1994)年に発効した「みなみまぐろの保存のための条約」に基づいて設置。
  2. 平成8(1996)年に発効した「インド洋まぐろ類委員会の設置に関する協定」に基づいて設置。
  3. 平成16(2004)年に発効した「西部及び中部太平洋における高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する条約(中西部太平洋まぐろ類条約)」に基づいて設置。我が国は平成17(2005)年に同条約に加入。
  4. 平成27(2015)年に発効した「北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約(北太平洋漁業資源保存条約)」に基づいて設置。

(周辺諸国・地域との新たな漁業協定等の締結)

周辺諸国・地域との間では、平成8(1996)年に我が国が「国連海洋法条約」を批准する際に、それまで適用除外としていた日本海西部と東シナ海にEEZを導入することとなりました。これに合わせて、平成8(1996)年から、周辺諸国との間で新たな漁業協定の交渉を累次にわたり行い、中国との間では平成9(1997)年に「漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定(日中漁業協定)*1」、韓国との間では平成10(1998)年に「漁業に関する日本国と大韓民国との間の協定(日韓漁業協定)*2」を締結しました。また、台湾との間では平成25(2013)年に、我が国の公益財団法人交流協会(現在の日本台湾交流協会)と台湾の亜東関係協会(現在の台湾日本関係協会)との間で、「日台民間漁業取決め」が署名されました。

これらの協定等に基づき、日本海等において沿岸国による措置をとらない日韓暫定水域や日中暫定措置水域等が設定されています。これらの水域においては、周辺諸国等の漁船と我が国の漁船の双方が操業できることにより、操業上のトラブルが発生するほか、外国漁船の放置漁具による漁場環境や水産資源への悪影響等が懸念されています。

このような問題を含む周辺諸国等との間の漁業問題の解決に向け、政府間の協議を行うとともに、民間協議を支援してきています。

  1. 平成12(2000)年に発効。
  2. 平成11(1999)年に発効。

(IUU漁業撲滅に向けた動きが進展)

各国や地域漁業管理機関が国際的な資源管理に努力している中で、規制措置を遵守せず無秩序な操業を行うIUU(Illegal, Unreported and Unregulated:違法、無報告及び無規制)漁業は、水産資源に悪影響を与え、適切な資源管理を阻害するおそれがあります。

IUU漁業については、平成13(2001)年、FAOにおいてIUU漁業対策の考え方を取りまとめた「IUU漁業国際行動計画」が採択され、我が国も、同計画に基づき、国内漁船がIUU漁業に従事しないよう適切に管理するとともに、EEZ内で行われる漁業について適正な管理・検査等を着実に実施しています。また、平成15(2003)年、公海において操業する漁船に関する旗国の責任を定めた「保存及び管理のための国際的な措置の公海上の漁船による遵守を促進するための協定(フラッギング協定)」が発効し、我が国も、同協定の履行のため、「漁業法」に基づき、公海で操業する国内漁船に対して、適切に漁業許可制度を運用し、IUU漁業を排除しています。

また、平成29(2017)年には、IUU漁業に従事した外国漁船の寄港を禁止すること等を通じてIUU漁業を防止・抑止・排除することを目的とした「違法な漁業、報告されていない漁業及び規制されていない漁業を防止し、抑止し、及び排除するための寄港国の措置に関する協定(違法漁業防止寄港国措置協定)」の効力が我が国において発生し、我が国はその履行のため、「外国人漁業の規制に関する法律*1」に基づいてIUU漁船リストの非掲載漁船のみに農林水産大臣の寄港許可を発出する等の措置を実施しています。

平成27(2015)年に国連で合意された「持続可能な開発目標(SDGs)」においては、「令和2(2020)年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業やIUU漁業及び破壊的な漁業慣行を終了」することが規定されており、IUU漁業に携わる船舶に対する国際的な取締体制の整備や漁獲証明制度*2によるIUU漁業由来の漁獲物の国際的な流通の防止等、IUU漁業の抑制・根絶に向けた取組が国際的に進められています。

例えば、地域漁業管理機関において、IUU漁船リストの作成、漁獲証明制度の導入等による対策の強化が進められており、我が国では、「外国為替及び外国貿易法*3」に基づき、日本に輸入されるマグロ類等に関して事前審査を行い、IUU漁船リストとの照合等を通じ、IUU漁獲物が輸入されないよう措置しています。さらに、我が国では、IUU漁業の懸念がある魚種の輸入に際し、漁船の所属国政府発行の漁獲証明書を確認する仕組みの創設についても、制度化に向けた検討を進めています。

  1. 昭和42(1967)年法律第60号
  2. 漁獲物の漁獲段階から流通を通じて、関連する情報を漁獲証明書に記載し、その内容を関係国の政府が証明することで、その漁獲物が地域漁業管理機関の資源管理措置を遵守して漁獲されたものであることを確認する制度。
  3. 昭和24(1949)年法律第228号

コラム持続可能な開発目標(SDGs)

世界の人口の爆発的な増加、エネルギー・食料資源の需給の逼迫ひっぱく、地球温暖化など世界規模での環境悪化が懸念される中で、令和12(2030)年に向けて、全ての人々が豊かで平和に暮らし続けられる社会を目指し、平成27(2015)年9月の国連サミットで150を超える加盟国首脳の参加の下、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が全会一致で採択され、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)(SDGs)」が掲げられました。

SDGsは、先進国・途上国全ての国を対象に、経済・社会・環境の3つの側面のバランスがとれた社会を目指す世界共通の目標として、17の目標とその課題ごとに設定された169のターゲット(達成基準)から構成されます。これらは、貧困や飢餓から環境問題、経済成長やジェンダーに至る広範な課題を網羅しており、豊かさを追求しながら地球環境を守り、そして「誰一人取り残さない」ことを強調し、人々が人間らしく暮らしていくための社会的基盤を令和12(2030)年までに達成することが目標とされています。漁業に関連する目標としては、「14.持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」があります。

我が国では、関係行政機関相互の緊密な連携を図り、SDGsの実施を総合的かつ効果的に推進するため、平成28(2016)年5月に「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」が設置され、「SDGs実施指針」が策定されました。令和元(2019)年12月の会合では、「SDGs実施指針」を改定するとともに、「SDGsアクションプラン2020」が決定されました。

SDGsの目標14のアイコン

表:目標14に関するターゲットと漁業に関する主な施策の例

表:目標14に関するターゲットと漁業に関する主な施策の例

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水産庁漁政部企画課

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