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(1)漁業経営体構造の変化

 

(海面漁業・養殖業の経営体数は30年間で58%減少)

海面漁業・養殖業の漁業経営体数は、昭和63(1988)年から平成30(2018)年までの30年間で、約19万経営体から約7万9千経営体まで、58%減少しました。漁業層*1別で見ると、沿岸漁業層*2で10万6千経営体(59%)、中小漁業層*3で4,812経営体(50%)、大規模漁業層*4で166経営体(75%)減少しました(図特-2-1)。

それぞれの層について、昭和63(1988)年に経営体数が多かった漁業種類の平成30(2018)年までの経営体数の変化を見てみると、沿岸漁業層については採貝・採藻で59%、釣漁業(かつお一本釣及びいか釣を除く)で54%、刺網漁業(さけ・ます流し網を除く)で63%、中小漁業層についてはいか釣漁業で68%、船びき網漁業で22%、小型底びき網漁業で40%、大規模漁業層については遠洋・近海まぐろはえ縄漁業で68%、大中型まき網漁業で58%、遠洋底びき網漁業で97%減少しました(図特-2-2)。

  1. 漁業経営体が過去1年間に使用した動力漁船の合計トン数により区分された経営体階層。
  2. 沿岸漁業層:漁船非使用、無動力漁船、船外機付漁船、過去1年間に使用した動力漁船の合計トン数が10トン未満、定置網及び海面養殖の各階層を総称したものをいう。
  3. 中小漁業層:過去1年間に使用した動力漁船の合計トン数が10トン以上1,000トン未満の各階層を総称したものをいう。
  4. 大規模漁業層:過去1年間に使用した動力漁船の合計トン数が1,000トン以上の各階層を総称したものをいう。

図特-2-1 海面漁業・養殖業の漁業経営体数の推移

図特-2-1 海面漁業・養殖業の漁業経営体数の推移

図特-2-2 各漁業層の漁業種類別漁業経営体数の推移

図特-2-2 各漁業層の漁業種類別漁業経営体数の推移

(個人経営体数は後継者不足と高齢化により減少)

海面漁業・養殖業の漁業経営体の9割以上を占める沿岸漁業層では、96%が個人経営体*1です(図特-2-3)。

個人経営体のうち、基幹的漁業従事者*2が65歳以上の経営体の割合は、昭和63(1988)年の17%から徐々に増加し、平成30(2018)年には53%となりました。また、ある年の漁業経営体が5年後までに休廃業に至る割合(以下「休廃業率*3」といいます。)を見ると、65歳未満の年齢階層では20%前後となっていましたが、65歳以上では年齢が高くなるにつれ急激に高くなる傾向が見られました(図特-2-4)。また、個人経営体については、後継者がいる割合は、全体の2割以下となっていました(図特-2-5)。これらのことは、個人経営体については高齢になっても後継者がおらず、経営を継続できず廃業に至る場合が多いことを示していると考えられます。

  1. 個人で漁業を自営する経営体
  2. 個人経営体の世帯員のうち、満15歳以上で自家漁業の海上作業従事日数が最も多い者。
  3. 休廃業率とは、漁業センサスの該当年の漁業経営体のうち、次回の漁業センサスの漁業経営体(継続経営体)にならなかった経営体(休廃業経営体)の割合。継続経営体とは、該当年の漁業センサスと次回の漁業センサスの海面漁業調査客体名簿を照合して、同一漁業地区内で世帯主氏名、事業所名又は代表者名が一致(世帯主氏名等が世代交代等により不一致であっても実質的に経営が継続しているものを含む。)し、かつ、経営組織が一致した経営体。なお、休廃業経営体には、操業を継続する経営体や事業を後継者に引き継いだ経営体は含まれないが、実質的に経営が継続している経営体であっても、漁業地区をまたがって転出した経営体は含まれる。

図特-2-3 沿岸漁業層に含まれる漁業種類における個人経営体数の割合(平成30(2018)年)

図特-2-3 沿岸漁業層に含まれる漁業種類における個人経営体数の割合(平成30(2018)年)

図特-2-4 基幹的漁業従事者の年齢別個人経営体数と休廃業率の推移

図特-2-4 基幹的漁業従事者の年齢別個人経営体数と休廃業率の推移

図特-2-5 個人経営体における後継者の有無の推移

図特-2-5 個人経営体における後継者の有無の推移

(団体経営体数は規制強化や公海での資源管理措置の強化等により減少)

中小・大規模漁業層の多くの漁業種類は沖合や遠洋で操業する漁業であり、団体経営体*1が中小漁業層では30%、大規模漁業層では98%を占めています(図特-2-6)。かつては沿岸国の200海里水域や公海での操業が活発に行われてきました。しかし、海外の沿岸国による200海里水域からの締め出し等の規制強化や、公海での資源管理措置の強化等により、減船が行われたことなどを背景に、その漁業を行う経営体も減少したものと考えられます。

  1. 個人経営体以外の経営体。会社、漁協、漁業生産組合、共同経営、その他に区分されている。

図特-2-6 中小・大規模漁業層における団体経営体数の割合(平成30(2018)年)

図特-2-6 中小・大規模漁業層における団体経営体数の割合(平成30(2018)年)

(内水面漁業の経営体数は30年間で61%減少)

内水面漁業の経営体数*1は、昭和63(1988)年から平成30(2018)年までの30年間で3,031経営体(61%)減少しました(図特-2-7)。経営組織別で見ると、個人経営体が全体の9割以上を占めており、30年間で2,957経営体(62%)減少しました。個人経営体以外の漁業経営体については、30年間で漁協及び共同経営の経営体数は減少していますが、会社経営体数と漁業生産組合数については、30年間で増減したものの平成30(2018)年には昭和63(1988)年と同数となり、全体に占める割合はやや増加してきています。

主な漁獲魚種別で見ると、いずれの経営体数も減少しており、特に、食用コイを漁獲する経営体数は30年前の1割以下となっています(図特-2-8)。

  1. 年間湖上作業従事日数29日以下の個人経営体は除く。

図特-2-7 内水面漁業経営体数の推移

図特-2-7 内水面漁業経営体数の推移

図特-2-8 内水面漁業の主な漁獲魚種別経営体数の推移

図特-2-8 内水面漁業の主な漁獲魚種別経営体数の推移

(内水面養殖業の経営体数は30年間で70%減少)

内水面養殖業の経営体数は、昭和63(1988)年から平成30(2018)年までの30年間で6,357経営体(70%)減少しました(図特-2-9)。経営組織別で見ると、個人経営体数は、昭和63(1988)年には全体の約8割を占めていましたが、平成30(2018)年には約7割となっています。団体経営体数も30年間で減少していますが、その中で、会社経営体数は近年横ばい傾向となっています。

販売金額1位の養殖種類別で見ると、食用コイを養殖する経営体数が特に減少しています(図特-2-10)。これは、需要の減少に加え、コイヘルペスウイルス病による大量斃死が原因と考えられます。

図特-2-9 内水面養殖業経営体数の推移

図特-2-9 内水面養殖業経営体数の推移

図特-2-10 内水面養殖業の販売金額1位の養殖種類別経営体数の推移

図特-2-10 内水面養殖業の販売金額1位の養殖種類別経営体数の推移

(大海区ごとの漁業種類の構成)

全国を8つの海域に分けた大海区*1別の漁業経営体数を主な漁業種類別に見てみると、昭和63(1988)年には、上位の採貝・採藻、小型底びき網漁業、のり養殖で全体の31%を占めており、平成30(2018)年には、同じく上位の採貝・採藻、小型底びき網漁業、のり類養殖で全体の28%とほぼ同じ割合を占めていました(図特-2-11)。

一方で、大海区の中には、漁業種類の構成において顕著な変化があったものがあり、北海道区では、ホタテガイを対象とすると考えられる小型底びき網漁業を主とする経営体数・割合が増加しました。また、日本海北区では、ほたてがい養殖を主とする経営体は、昭和63(1988)年にはありませんでしたが、平成30(2018)年には最も多くなりました。一方で、太平洋北区のほがてがい養殖を主とする経営体の割合は減少しました。北海道区、日本海北区、日本海西区では、いか釣漁業を主とする経営体の割合が、また、太平洋中区、瀬戸内海区、東シナ海区では、のり養殖を主とする経営体の割合が減少しました。さらに、太平洋南区では、ぶり(はまち)養殖を主とする経営体の割合が減少した一方で、まだい養殖を主とする経営体の割合が増加しました。

  1. 漁業の実態を地域別に明らかにするとともに、地域間の比較を容易にするため、海況、気象等の自然条件、水産資源の状況等を勘案して定めた区分(水域区分ではなく地域区分)。北海道区、太平洋北区、太平洋中区、太平洋南区、日本海北区、日本海西区、東シナ海区及び瀬戸内海区の8つ。北海道区は、平成14(2002)年から北海道日本海北区と北海道太平洋北区の2つに分けられたが、昭和63(1988)年と平成30(2018)年を比較するため、2区を合わせて北海道区とした。

図特-2-11 主な漁業種類別経営体の割合

図特-2-11 主な漁業種類別経営体の割合1988
図特-2-11 主な漁業種類別経営体の割合2018

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
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