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水産庁

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(6)流通加工構造の変化

 

(市場外流通が増加)

一般的に、水揚げされた水産物は、まず水揚港に隣接する産地市場で集荷され、魚種、サイズ、品質等により仕分された後、産地出荷業者や加工業者等に販売されます。全国各地の水産物は、そのまま又は加工等を経て消費地卸売市場に出荷され、仲卸業者、小売業者等を経て消費者の手元に届けられるのが、従来の水産物の流通です。実際に漁業経営体のうち7割は市場又は荷さばき所を主な出荷先としています。水産物は水揚量が変動し、多様な魚種を短時間で処理する必要があるため、水揚げが集中したときでも目利き・値決めをし、荷さばきをし、代金決済を行うという市場の機能が、消費者への安定供給を図る上で不可欠なものとなっています。しかし、平成期においては、漁業経営体数の減少に伴って、漁協の市場又は荷さばき所や漁協以外の卸売市場に出荷する漁業経営体数も減少してきました(図特-2-29)。

一方、近年は、漁業者による直販や、漁業者と小売店又は外食チェーン等との直接取引が増加しており、これには流通コストの縮減、流通時間の短縮、従来の流通ルートに乗らなかった未利用魚の販売といったメリットが考えられます(図特-2-30)。このため、従来の市場流通に加え、多様な流通ルートを構築することにより、一層バラエティーに富んだ水産物を消費者に届けることが可能になると考えられます。直売所に出荷する漁業経営体数の近年の増加傾向は、このような観点から漁業者及び漁業者団体による直売の取組が活発化してきているためと考えられます。

図特-2-29 漁業経営体の出荷先の推移

図特-2-29 漁業経営体の出荷先の推移

図特-2-30 水産物の価格構造

図特-2-30 水産物の価格構造

平成期においては、水産物消費の減少を背景として国内の水産物流通量が減少し、消費地市場を経由して流通された水産物の量は、平成元(1989)年の652万トンから平成28(2016)年の294万トンに減少しました(図特-2-31)。また、水産物の消費地卸売市場経由率は、平成元(1989)年の75%から平成28(2016)年の52%へと低下しました。

図特-2-31 水産物の消費地市場経由量と経由率の推移

図特-2-31 水産物の消費地市場経由量と経由率の推移

事例ICTを活用した水産物流通

1.飲食店向け鮮魚卸売Eコマース「うおポチ」~株式会社フーディソン(東京都)~

株式会社フーディソンは、ITを活用した水産流通プラットフォームとして、飲食店向け鮮魚仕入れオンラインサービス「魚ポチ」を平成26(2014)年から運営しています。現在は、関東1都6県を中心に15,000店舗以上の飲食店等の利用者登録があり、取扱い水産物1,800種類以上、月間15,000件以上の取引が行われるまでに事業が拡大しています。「魚ポチ」は、開店準備中や閉店後など都合の良い時間にパソコンやスマートフォンで注文すれば、翌日の仕込みに間に合うように鮮魚などの水産物が配達されるサービスです。卸売市場との距離や取引の規模などにかかわらず、誰でも手軽に小ロットからの取引が可能になります。さらに、買える魚をまとめて検索できる機能や購買履歴からおすすめを表示する機能があり、仕入れの効率化と新しい商品の発見を手助けしています。

また、販売される水産物については、仲卸業者との仲介だけではなく、産地からの直接仕入れや大田おおた市場(東京都内に11か所ある東京都中央卸売市場の1つ)にある子会社仲卸からの仕入れによる魅力ある商品の充実が図られているとともに、これら商品の詳細な情報を提供する等、利便性や信頼性の確保にも努めています。加えて、自社ドライバーによる配送エリアを拡大するとともに、複数あった出荷拠点を統合し自社出荷センター化する等、物流の効率化にも力を入れています。このほか、生産者団体とタイアップした販売促進にも取り組んでおり、昨年は、「東京諸島フェア」や「ふくしま常磐じょうばんものフェア」などを実施し、飲食店や消費者への認知度向上や販売拡大に協力しています。

「魚ポチ」を始めとするITを活用した新たな水産流通プラットフォームの構築により、様々な取組が展開され水産業界が活性化されることが期待されています。

魚ポチのUIの写真
トラックとセールスドライバーの写真
ふくしま常磐ものフェアの様子の写真

2.産直通販サイト「JFおさかなマルシェ ギョギョいち」開設

全国漁業協同組合連合会(JF全漁連)は、令和2(2020)年2月に産直通販サイト「JFおさかなマルシェ ギョギョいち」を開設しました。消費者の魚離れを食い止めようと、全国各地の漁師が薦める旬の海の幸を浜の情報とともに消費者に届ける産直方式は、生産者団体ならではの取組です。直接的・間接的に生産者と消費者の距離を縮めることで、国産水産物の消費拡大と魚食普及を図ります。また、現状のバリューチェーンの改善を図り、直接販売することで漁業者の所得改善につなげることも狙いの1つです。

「ギョギョいち」では、漁師自慢の魚介類「プライドフィッシュ」などを中心に厳選した商品を掲載し、また、食材の魅力や浜の旬の情報、おいしい食べ方などを動画でも紹介しています。

また、これと並行して、株式会社京急ストア もとまちユニオン元町店で実店舗販売を実施し、「ギョギョいち」で扱う商品の店頭テスト販売による消費者ニーズの把握や、O2O(「Online To Offline」の略)プロモーションによる相乗効果の創出など、さらなる魚食拡大につなげる取組を進めています。

今後、「ギョギョいち」の参加県域と取扱商品を順次増やし、将来的には、JFグループのネット販売プラットフォームとしていく構想です。

産直通販サイト「JFおさかなマルシェ ギョギョいち」の写真
プライドフィッシュ海鮮丼金目鯛煮炙り丼の写真
明石だこのやわらか煮・いかなごくぎ煮セットの写真
長崎俵物干物セットの写真

(市場の二極化、魚の高付加価値化が進む)

魚市場の数は、平成期を通して減少傾向にあり、30年間で約7割まで減少しました(図特-2-32)。一方で、年間取扱金額が5,000万円未満の市場は増加傾向、10億円以上の市場は近年横ばい傾向にあり、市場の二極化が進んでいると考えられます。また、年間取扱数量も減少傾向にありますが、活魚の取扱量は近年増加傾向にあります(図特-2-33)。これは、魚の高付加価値化の取組が進められてきたことによるものと考えられます。

図特-2-32 年間取扱金額規模別魚市場数の推移

図特-2-32 年間取扱金額規模別魚市場数の推移

図特-2-33 魚市場の年間取扱数量の推移

図特-2-33 魚市場の年間取扱数量の推移

(冷凍・冷蔵工場において大型化・集約化が進む)

冷凍・冷蔵工場の数は、平成期において減少傾向にありましたが、平成後期には冷蔵能力は下げ止まりの傾向にあり、1日当たり凍結能力は増加傾向になりました(図特-2-34)。これは、冷凍・冷蔵技術の発達や魚市場の集約等に伴い、冷凍・冷蔵工場において大型化・集約化が進んでいるためと考えられます。また、冷凍・冷蔵工場の従業者は約5割を女性が占めており、近年は外国人労働者が増加しています(図特-2-35)。

図特-2-34 沿海地区の冷凍・冷蔵工場数及び能力の推移

図特-2-34 沿海地区の冷凍・冷蔵工場数及び能力の推移

図特-2-35 冷凍・冷蔵工場の従業者数の推移

図特-2-35 冷凍・冷蔵工場の従業者数の推移

(減少していた練り製品や冷凍食品の生産量は近年横ばい傾向)

水産食用加工品の生産量は、平成期においては、総じて減少傾向にありましたが、練り製品や冷凍食品の生産量については、平成20(2008)年頃から横ばい傾向となっています(図特-2-36)。

また、生鮮の水産物を丸魚のまま、又はカットしたりすり身にしただけで凍結した生鮮冷凍水産物の生産量は、平成前期には水産食用加工品の生産量を上回っていましたが、平成7(1995)年以降は水産食用加工品の生産量の方が上回っており、練り製品や冷凍食品など多様な商品に加工されています。

水産加工業の出荷額は、平成14(2002)年から29(2017)年の間には、約3兆円から約3兆5千億円の間で推移しました(図特-2-37)。

図特-2-36 水産食用加工品生産量の推移

図特-2-36 水産食用加工品生産量の推移

図特-2-37 水産加工業の出荷額の推移

図特-2-37 水産加工業の出荷額の推移

(冷凍食品を主とする加工工場は近年増加)

水産加工場の数は、平成期には総じて減少傾向にあり、30年間で約半分まで減少し、特に、素干し品を主とする加工工場の数は30年間で約3割まで減少しました(図特-2-38)。一方で、冷凍食品を主とする加工工場の数は、平成中期から増加傾向となりました。

水産加工場の従業者規模別の工場数について見てみると、従業員が9人以下の工場は、平成初期は60%近くを占めていましたが、平成末期には50%弱にシェアを落としています(図特-2-39)。一方で、従業員が10人以上の工場は減少率が小さく、全体に占める割合は増加しています。

また、水産加工場の従業者のうち約6割は女性が占めていますが、近年は女性の従業者数が減少する一方、外国人労働者が増加しています(図特-2-40)。

図特-2-38 主とする加工種類別水産加工場数の推移

図特-2-38 主とする加工種類別水産加工場数の推移

図特-2-39 従業員規模別水産加工場数の推移

図特-2-39 従業員規模別水産加工場数の推移

図特-2-40 水産加工場の従業者数の推移

図特-2-40 水産加工場の従業者数の推移

(流通加工分野での鮮度保持や衛生管理の技術導入・取組が進んできた)

戦後から昭和後期にかけて、コールドチェーンやスーパーチルド(氷温冷凍技術)の発達や無菌充填じゅうてん等包装技術の開発など、冷凍・冷蔵能力や加工技術が発達し、水産物を始めとした生鮮物の長期保存や遠隔地への輸送が可能となってきました。その後、平成にかけて、共働き家庭の増加など人々のライフスタイルの変化に伴い、時間をかけず簡単に食べられる加工・冷凍食品へのニーズが高まってきました。一方で、冷凍食品への異物混入事件や産地偽装など食に関する信頼を揺るがす事案が発生し、鮮度等の品質や安全性に対する消費者の関心が高まってきました。そのような中、卸売市場での冷凍・冷蔵施設の整備が進められ、特に、水産物の集出荷拠点となる漁港においては、高度な衛生管理に対応した荷さばき所等が順次整備されています。

また、流通加工分野では、平成10(1998)年に「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法*1」が制定される等、HACCP*2を始めとする衛生管理の取組が進展し、平成30(2018)年には「食品衛生法*3」が改正され、令和3(2021)年6月までに原則として全ての食品等事業者に対しHACCP対応が義務化されることとなっています。

このほか、水産流通加工分野では、従業員の不足及び高齢化が大きな課題となっています。大きさ、形状が不揃いのものを扱う水産加工分野では、製造業の他分野に比べ自動化、ロボット化の導入が遅れていますが、画像認識等の技術を応用し、自動化、ロボット化の取組が出てきています(図特-2-41)。水産加工分野の省力化・効率化等のためには、ICT*4・IoT*5・AI*6などを活用した技術開発を推進するとともに、水産加工業への普及が重要です。

  1. 平成10(1998)年法律第59号
  2. Hazard Analysis and Critical Control Point:原材料の受入れから最終製品に至るまでの工程ごとに、微生物による汚染や金属の混入等の食品の製造工程で発生するおそれのある危害要因をあらかじめ分析(HA)し、危害の防止につながる特に重要な工程を重要管理点(CCP)として継続的に監視・記録する工程管理システム。FAOと世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス)委員会がガイドラインを策定して各国にその採用を推奨している。
  3. 昭和22(1947)年法律第233号
  4. Information and Communication Technology:情報通信技術、情報伝達技術
  5. Internet of Things:モノのインターネットといわれる。自動車、家電、ロボット、施設などあらゆるモノがインターネットにつながり、情報のやり取りをすることで、モノのデータ化やそれに基づく自動化等が進展し、新たな付加価値を生み出す。
  6. Artificial Intelligence:人工知能。機械学習ともいわれる。

図特-2-41 水産加工業の省力化・効率化等の技術

図特-2-41 水産加工業の省力化・効率化等の技術

コラム漁業者・水産加工業者から見た平成期における水産業の変化

平成の30年間で漁獲量の減少や国際情勢の変化、技術の発展など、漁業や水産加工業を取り巻く環境は大きく変化してきました。実際に漁業や水産加工業に従事している人々は、平成期の水産業の変化をどのように感じているのでしょうか。

農林水産省は、令和元(2019)年12月~2(2020)年1月、漁業や水産加工業に従事する人等を対象とした「食料・農業及び水産業に関する意識・意向調査」を実施しました。

このうち、漁業者を対象とした調査においては、「平成期における水産業の振興に最も良い影響を与えたもの」として「資源管理の取組の強化」が最も回答が多く、次いで「産地での付加価値向上の取組」、「漁業者の経営意識の向上」となっています(図1)。これは、平成期において水産業界と行政が一体となって取り組んできた資源管理の取組、付加価値向上の取組、収益性を重視した操業の重要性と成果を、多くの漁業者が実感していることを表していると考えられます。一方で、「平成期における水産業の振興に最も悪い影響を与えたもの」については、「気候変動等による海洋環境の変化(温暖化や酸性化等世界的な変化)」と「漁場環境の悪化(藻場や干潟の減少等地域的な変化)」の上位2つの回答で全体の約6割を占めており、多くの漁業者が地球規模又は地域的な自然環境の悪化を実感又は懸念していることがうかがえます。

図1:平成期における水産業の変化

図1:平成期における水産業の変化

また、平成期にはICT・IoT・AIなどを始め様々な技術が発展しましたが、漁業者で技術や設備が発展したと回答した人は合計で約6割であったものの、他分野に比べて遅れている又は発展していないと回答した人は7割以上となっており、より多くの漁業者の実感につながる技術の一層の発展が望まれています(図2)。労働環境においても「とても向上した」又は「やや向上した」と回答した人は約4割となる一方、「とても悪化した」又は「やや悪化している」と回答した人は約1割であり、平成期における水産業の労働環境は全体的には向上したと考えられます。

図2:平成期における漁業の技術・労働環境の変化

図2:平成期における漁業の技術・労働環境の変化

水産加工業の従事者を対象とした調査においては、「平成期における水産物の流通加工業に最も良い影響を与えたもの」としては、「冷蔵・流通における技術の発展」が約5割を占めており、かつ、「水産物の流通加工業における技術や設備の変化」が品質向上と生産性向上の両面で大きく発展してきたと考える流通加工業者が過半数を占めています(図3、図4)。また、「平成期における水産物の流通加工業に最も良い影響を与えたもの」の2番目に回答が多かったのは「食の安全性への注目」であり、「平成期の30年間での食に対する消費者ニーズの変化」においても、「安全指向が強くなった」と回答した人が約8割となっています(図5)。「水産物の流通加工業における衛生水準の変化」についても、9割以上が「とても向上した」又は「やや向上した」と回答しており、消費者の食の安全性への関心の高まりを受けて水産流通加工業の衛生水準の向上が進められてきたと考えられます。

一方で、「平成期における水産物の流通加工業に最も悪い影響を与えたもの」としては、「加工原材料確保の困難化」や「国内の魚離れ」の回答が多く、漁獲量の減少や消費者の食の志向の変化は、水産加工業に仕入れと販売の両面で大きな影響を与えていることがうかがえます。

図3:平成期における水産加工業の変化

図2:平成期における水産加工業の変化

図4:平成期における水産加工業の技術・設備や衛生水準の変化

図4:平成期における水産加工業の技術・設備や衛生水準の変化

図5:平成期における食に対する消費者ニーズの変化

図5:平成期における食に対する消費者ニーズの変化

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX番号:03-3501-5097