(4)水産物貿易をめぐる国際情勢

ア WTOに関する動き
〈漁業補助金交渉は合意に至らず、引き続き交渉中〉
平成13(2001)年に開始された世界貿易機関(WTO)のルール交渉会合においては、過剰漁獲能力及び過剰漁獲を抑制する観点から、各国の漁業補助金に関するWTO協定の規律を策定するための議論が行われてきました。平成27(2015)年、国連において持続可能な開発目標(SDGs)が採択されたことを受け、平成28(2016)年10月以降、EU等複数の国・グループからIUU漁業*1に対する補助金や乱獲状態の資源に悪影響を与える補助金を禁止するなどの提案がされるなど、議論が活発化しました。その後、平成29(2017)年12月に開催された第11回WTO閣僚会議を踏まえ、令和3(2021)年11月に予定されていた第12回WTO閣僚会議での合意を目指して集中的な交渉が行われましたが、同会議の延期等のため合意には至らず、引き続き交渉に取り組むこととされました。
これまで我が国は、政策上必要な補助金は認められるべきであり、禁止される補助金は、真に過剰漁獲能力・過剰漁獲につながるものに限定すべきとの立場で交渉に臨んできました。今後とも、このような我が国の立場を主張していくこととしています。
- Illegal, Unreported and Unregulated:違法・無報告・無規制。FAOは、無許可操業(Illegal)、無報告又は虚偽報告された操業(Unreported)、無国籍の漁船、地域漁業管理機関の非加盟国の漁船による違反操業(Unregulated)等、各国の国内法や国際的な操業ルールに従わない無秩序な漁業活動をIUU漁業としている。145ページ参照。
イ 経済連携協定に関する動き
〈RCEP協定が発効〉
平成24(2012)年に交渉の立上げが宣言された地域的な包括的経済連携協定(RCEP協定)が、令和3(2021)年 11月までに我が国を含む10か国において国内手続を完了し、協定の寄託者であるASEAN(東南アジア諸国連合)事務局長に批准書等を寄託したことから、令和4(2022)年1月に発効しました。韓国については、令和3(2021)年12月に寄託したことから、令和4(2022)年2月に発効しました。マレーシアについては、同年1月に寄託したことから、同年3月に発効しました。
RCEP協定は、我が国とASEAN構成国、豪州、中国、韓国、ニュージーランドの15か国が参加し、世界の国内総生産(GDP)、貿易総額及び人口の約3割、我が国の貿易総額のうち約5割を占める地域の経済連携協定です。また、我が国にとっては、最大の貿易相手国である中国や第3位の韓国との間での初の経済連携協定です。
日本側の関税については、海藻類、アジ、サバ等の多くの品目について関税の削減・撤廃から除外し、その他の品目についても関税撤廃率は環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)、日EU・EPAよりも大幅に低い水準に抑制しました。一方、各国の関税については、中国からは、ホタテガイ、ブリ、サケ等、韓国からは錦鯉等の関税の撤廃を得ることができました。
〈TPP11協定への英国の加入手続が開始〉
平成30(2018)年12月に発効したTPP11協定について、令和3(2021)年2月の正式な申請を受け、同年6月に行われたTPP委員会において、英国の加入手続の開始及び英国の加入に関する作業部会(AWG)の設置が決定され、同年9月に開始されたAWG第1回会合において、英国の協定義務の遵守等が議論・検討されました。同会合は令和4(2022)年2月に終了し、英国側の市場アクセスのオファー及び適合しない措置を提出するよう英国に伝達しました。
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