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水産庁

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(1)今後の水産教育の方向性

平成29(2017)年4月に閣議決定された新たな水産基本計画においては、水産教育に関して、「水産業において指導的役割を果たす人材を育成するため、関係府省が連携し、水産に関する課程を備えた高校・大学や水産大学校において、水産業の現場の要望を踏まえた実践的な専門教育の充実を図ることにより、水産業及びその関連分野の人材育成・確保を図る」こととなっています。

第1節でみてきたように、かつては遠洋漁業の技術者の育成が中心だった水産高校は、現在では、食品の安全に関する教育、環境に関する教育、あるいは国際交流・研修により豊かな人間性とグローバル感覚を身に付ける教育など幅広い教育を行ってきています。今後も、時代の流れに応じた教育を行っていくことが重要です。

ほとんどの都府県で水産高校が県内1校であることから、水産専門の教員の多くは異動がなく、自らの専門分野を生かした教育活動を長期にわたって計画的に実践したり、地元に就職した卒業生を通した地域のニーズを把握するなど地域の活性化に大きな貢献が期待できます。しかし、水産高校では、将来、水産専門の教員不足が懸念されています。水産専門の教員の資格は水産の教職課程を有する大学を卒業することによって得られることから、今後、これらの大学との連携により、水産専門の教員を確保していくことが重要です。

高校の普通科で専門教科「水産」を履修する生徒はほとんどいないため、具体的な将来像を持たずに水産系大学に入学する生徒が多いこともあって、大学を卒業後、水産に関連した職業に就く学生が少ないことが課題となっています。このため、大学入学後の早い段階などで、「海洋利用の多様化」、「海洋環境保全の担い手」、「漁業文化の継承と現代化」など幅広く水産業に触れる機会を設け、水産に関する職業の将来像を描きやすくする工夫が必要です。

水産系大学では、近年、地元との連携を強め、地元の水産業に貢献することも念頭に置いた研究開発や人材育成の取組がスタートしています。今後ともこのような取組が推進されていくことにより、地元の水産業の維持・発展にもつながることが期待されます。

現場では、生産から小売りまで課題を察知し問題解決できる能力を備えた人材が求められています。また、最新の科学的知見に基づいた適切な水産資源管理の実施がますます重要となる中で、資源評価等の資源学を担う人材やそれを関係者に分かりやすく伝えられるような人材の育成も期待されています。近年、輸出が拡大し、海外顧客に向けた生産と販売が始まっていることから、海外顧客を意識したもの作りを実現するためのグローバルな感覚やコミュニケーション能力を備えた人材を、さらに、漁労機器もICT等の発達で進化していることから、新しい技術に対応できる人材を育成することが水産系大学には求められています。また、今後はこれまでの水産業の枠を越えた産業化が予想されることから、ICTを中心とする工学やマーケティングを中心とする商学など、幅広い教育分野と連携していく必要があります。