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水産庁

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(3)水産業の就業者をめぐる動向

ア 漁業就業者の動向

特集第2節(3)

(漁業就業者は15万1,701人)

我が国の漁業就業者は一貫して減少傾向にあり、平成30(2018)年には前年から1%減少して15万1,701人となっています(図2-12)。

図2-12 漁業就業者数の推移

図2-12 漁業就業者数の推移

イ 新規漁業就業者の確保に向けた取組

特集第3節(2)イ

(国では新規就業者の段階に応じた支援を実施)

我が国の漁業経営体の大宗を占めるのは、家族を中心に漁業を営む漁家であり、こうした漁家の後継者の主体となってきたのは漁家で生まれ育った子弟です。しかしながら、近年、生活や仕事に対する価値観の多様化により、漁家の子弟が必ずしも漁業に就業するとは限らなくなっています。一方、新規漁業就業者のうち、他の産業から新たに漁業就業する人はおおむね6割*1を占めており、就業先・転職先として漁業に関心を持つ都市出身者も少なくありません。こうした潜在的な就業希望者を後継者不足に悩む漁業経営体や地域とつなぎ、意欲のある漁業者を確保し担い手として育成していくことは、水産物の安定供給のみならず、漁業・漁村の持つ多面的機能の発揮や地域の活性化の観点からも重要です。

このような状況を踏まえ、水産庁では、平成14(2002)年から、漁業経験ゼロからでも漁業に就業・定着できるよう、全国各地で漁業就業相談や漁業を体験する就業準備講習会の開催を支援しています。さらに、就職氷河期世代(現在、30代半ばから40代半ばに至っている、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代)を含む新規就業者の確保と定着を促進するため、通信教育等を通じたリカレント教育(学び直し)を整備し、その受講を支援するほか、漁業学校で学ぶ者に対して資金を交付するとともに、就業希望者が、漁業就業後も引き続き漁業に定着するよう漁業現場でのOJT*2方式での長期研修を支援するなど、新規就業者の段階に応じた支援を行っています(図2-13)。

  1. 都道府県が実施している新規就業者に関する調査から水産庁で推計。
  2. On-the-Job Training:日常の業務を通じて必要な知識・技能を身に着けさせ、生産技術について学ぶ職業訓練。

図2-13 国内人材確保及び海技士資格取得に関する国の支援事業

図2-13 国内人材確保及び海技士資格取得に関する国の支援事業

さらに、国の支援に加えて、各都道府県・市町村においても地域の実情に応じた各種支援が行われています(表2-5)。

表2-5 地方公共団体による支援の例

表2-5 地方公共団体による支援の例

また、特に沖合・遠洋漁業においては、漁船の運航に必要な海技士の確保が深刻な課題となっています。漁船漁業の乗組員不足に対応するため、平成29(2017)年2月に官労使からなる「漁船乗組員確保養成プロジェクト」(事務局:一般社団法人大日本水産会)が創設され、水産庁もこの取組を支援しています。

プロジェクトの取組の1つに水産高校生を対象とした「漁業ガイダンス」があり、全国の水産高校に漁業経営者自らが出向いての求人活動や、漁業の魅力や実際の漁労作業等を生徒に直接説明し、漁業を知ってもらう活動を行っています。これまでは、漁業関係者と水産高校との連携があまり進んでおらず、漁業の情報が水産高校に十分に発信されない、求人票も届かないという現状がありました。また、教育現場で漁船漁業を経験した指導者も少なくなっており、生徒が漁業に対するイメージを持ちにくいという実態もありました。しかし、漁業ガイダンスの実施により、参加した生徒が漁業に興味や具体的なイメージを持ち、また、参加した企業からも、生徒だけでなく先生とのつながりを持つきっかけとなり、更なる連携につながっていくと高く評価されています。プロジェクトの取組は拡大しており、今後、水産高校生の漁船漁業への就業が期待されます。

このように、国と地域の両方の継続的な支援により、漁業に参入しやすい環境を整え、漁業の担い手を育成していくことが重要です。

ウ 漁業における海技士の確保・育成

特集第3節(2)イ

(漁業における海技士の高齢化と不足が深刻化)

20トン以上の船舶で漁業を営む場合は、漁船の航行の安全性を確保するため、それぞれの漁船の総トン数等に応じて、船長、機関長、通信長等として乗り組むために必要な海技資格の種別や人数が定められています。

海技免許を取得するためには国土交通大臣が行う海技士国家試験に合格する必要がありますが、航海期間が長期にわたる遠洋漁業においては、乗組員がより上級の海技免許を取得する機会を得にくいという実態があります。また、就業に対する意識や進路等が多様化する中で、水産高校等の卒業生が必ずしも漁業に就業するわけではなく、これまで地縁や血縁等の縁故採用が主であったこととあいまって、漁業における海技士の高齢化と不足が深刻化しています。

海技士の確保と育成は我が国の沖合・遠洋漁業の喫緊の課題であり、必要な人材を確保できず、操業を見合わせるようなことがないよう、関係団体等では、漁業就業相談会や水産高校等への積極的な働きかけを通じて乗組員を募るとともに、乗船時における海技免許の取得を目指した計画的研修の取組や免許取得費用の助成を行っています。

国では、平成30(2018)年度から、水産高校卒業生を対象とした新たな四級海技士養成のための履修コースを設置する取組について支援を行い、令和元(2019)年度から6か月間の乗船実習を含む新たな履修コースが水産大学校で開始されました。これにより、従来、水産高校卒業生が四級海技士試験を受験するのに必要な卒業後1年9か月間の乗船履歴を短縮することが可能となり、水産高校卒業生の早期の海技士資格の取得が期待されます。

また、令和2(2020)年度より、総トン数20トン以上長さ24m未満の中規模漁船で100海里内の近海を操業するものについて、安全の確保を前提に、併せて必要となる措置等を講じた上で、これまでの海技士(航海)及び海技士(機関)の2名の乗組みを、小型船舶操縦士1名の乗組みで航行が可能となるよう、海技資格制度の見直しが行われました。

エ 女性の地位向上と活躍

特集第2節(6)

(漁業・漁村における女性の一層の地位向上と活躍を推進)

女性の地位向上と活躍の推進は、漁業・漁村の課題の1つです。海上での長時間にわたる肉体労働が大きな部分を占める漁業においては、就業者に占める女性の割合は約12%となっていますが、漁獲物の仕分や選別、カキの殻むきといった水揚げ後の陸上作業や、漁獲物の主要な需要先である水産加工業においては、女性がより大きな役割を果たしています。このように、海女漁等の伝統漁業のみならず、水産物の付加価値向上に不可欠な陸上での活動を通し、女性の力は水産業を支えています。

一方、女性が漁業経営や漁村において重要な意思決定に参画する機会は、いまだ限定的です。例えば、平成30(2018)年の全国の漁業協同組合(以下「漁協」といいます。)における正組合員に占める女性の割合は5.5%となっています。また、漁協の女性役員は、近年少しずつ増加してきてはいるものの、全体の0.5%に過ぎません(表2-6)。

表2-6 漁業協同組合の正組合員及び役員に占める女性の割合

表2-6 漁業協同組合の正組合員及び役員に占める女性の割合

平成27(2015)年12月に閣議決定された「第4次男女共同参画基本計画」においては、農山漁村における地域の意思決定過程への女性の参画の拡大を図ることや、漁村の女性グループが行う起業的な取組を支援すること等によって女性の経済的地位の向上を図ること等が盛り込まれています。

漁業・漁村において女性の一層の地位向上と活躍を推進するためには、固定的な性別役割分担意識を変革し、家庭内労働を男女が分担していくことや、漁業者の家族以外でも広く漁村で働く女性の活躍の場を増やすこと、さらには、保育所の充実等により女性の社会生活と家庭生活を両立するための支援を充実させていくことが重要です。国は、水産物を用いた特産品の開発、消費拡大を目指すイベントの開催、直売所や食堂の経営等、漁村コミュニティにおける女性の様々な活動を推進するとともに、子供待機室や調理実習室等、女性の活動を支援する拠点となる施設の整備を支援しています。

また、平成30(2018)年11月に発足した「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」は、水産業に従事する女性の知恵と多様な企業等の技術、ノウハウを結び付け、新たな商品やサービスの開発等を進める取組であり、水産業における女性の存在感と水産業の魅力を向上させることを目指しています。これまで、同プロジェクトのメンバーによる講演や企業等と連携したイベントへの参加等の活動が行われています。このような様々な活動や情報発信を通して、女性にとって働きやすい水産業の現場改革及び女性の仕事選びの対象としての水産業の魅力向上につながることが期待されます。

事例食べる磯焼け対策!!「そう介(イスズミ)のメンチカツ」

「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」メンバーの犬束いぬつかゆかりさんは、長崎県対馬つしま市の有限会社丸徳まるとく水産で水産加工の仕事に従事しています。

地元の浜で深刻な状況となっている磯焼け(海藻類が枯れる現象)の原因の1つといわれている食害魚「イスズミ」を食べることにより、駆除する魚から新たな水産資源へとする活動を始めました。

この「イスズミ」は独特の磯臭さのある魚で、地元では魚価も低く駆除する魚といわれていました。これを何とか食用として利用できないかと様々な機関に出かけ、研究を重ねた結果、臭みを抑える下処理方法を開発し、すり身として製品化につなげました。また、イスズミを「そう介」と呼び、磯臭さや厄介な魚とレッテルを貼られたイスズミの固定概念を覆す「そう介プロジェクト」を立ち上げました。

令和元(2019)年11月に開催された「第7回Fish-1グランプリ」(国産水産物流通促進センター(構成員:JF全漁連)主催)の国産魚ファストフィッシュ商品コンテストでは、このイスズミを使った「そう介のメンチカツ」を出品し、見事グランプリを受賞しました。

このような活動が、水産物の価値を高め、さらには浜を元気にする取組として各地でも発展していくことが期待されます。

第7回Fish‐1グランプリ授賞式での犬束さん(前列中央)の写真
そう介プロジェクトのチラシの写真

オ 外国人労働をめぐる動向

特集第2節(3)(6)

(漁業・養殖業における技能実習の適正化及び特定技能外国人の受入れ)

遠洋漁業に従事する我が国の漁船の多くは、主に海外の港等で漁獲物の水揚げや転載、燃料や食料等の補給、乗組員の交代等を行いながら操業しており、航海日数が1年以上に及ぶこともあります。このような遠洋漁業においては、日本人漁船員の確保・育成に努めつつ、一定の条件を満たした漁船に外国人が漁船員として乗り組むことが認められており、令和元(2019)年12月末現在、4,302人の外国人漁船員がマルシップ方式*1により日本漁船に乗り組んでいます。

また、平成30(2018)年12月に成立した「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律*2」を受け、新たに創設された在留資格「特定技能」の漁業分野(漁業、養殖業)及び飲食料品製造業分野(水産加工業を含む。)においても、平成31(2019)年4月以降、一定の基準*3を満たした外国人の受入れが始まりました。今後は、このような外国人と共生していくための環境整備が重要であり、漁業活動やコミュニティ活動の核となっている漁協等が、受入れ外国人との円滑な共生において適切な役割を果たすことが期待されることから、国においても必要な支援を行うこととしています。令和元(2019)年12月末現在、漁業分野の特定技能1号在留外国人数は21人となっています。

外国人技能実習制度については、水産業においては、漁業・養殖業における9種の作業*4及び水産加工業における8種の作業*5について技能実習が実施されており、技能実習生は、現場での作業を通じて技能等を身に着け、開発途上地域等の経済発展を担っていきます。

漁業・養殖業分野における技能実習生は年々増加しており、漁船漁業職種は1,738人(平成31(2019)年3月1日現在)*6、養殖業職種は1,851人(平成31(2019)年3月31日現在、推計値)*7となっています。国は、海上作業の伴う漁業・養殖業について、その特有の事情に鑑みて、技能実習生の数や監理団体による監査の実施に関して固有の基準を定めるとともに、平成29(2017)年12月、漁業技能実習事業協議会を設立し、事業所管省庁及び関係団体が協議して技能実習生の保護を図る仕組みを設けるなど、漁業・養殖業における技能実習の適正化に努めています。

  1. 我が国の漁業会社が漁船を外国法人に貸し出し、外国人漁船員を配乗させた上で、これを定期用船する方式。
  2. 平成30(2018)年法律第102号
  3. 各分野の技能試験及び日本語試験への合格又は各分野と関連のある職種において技能実習2号を良好に修了していること等。
  4. かつお一本釣り漁業、延縄漁業、いか釣り漁業、まき網漁業、ひき網漁業、刺し網漁業、定置網漁業、かに・ えびかご漁業及びほたてがい・まがき養殖作業
  5. 節類製造、加熱乾製品製造、調味加工品製造、くん製品製造、塩蔵品製造、乾製品製造、発酵食品製造及びかまぼこ製品製造作業
  6. 技能実習評価試験実施機関調べ
  7. 水産庁調べ(協議会証明書交付件数から推計)

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX番号:03-3501-5097