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水産庁

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(2)国内の水産物需給をめぐる状況

ア 国内の水産物需要に関する状況

〈食用魚介類の国内消費仕向量は減少傾向〉

我が国における食用魚介類の国内消費仕向量は、平成13(2001)年度までは850万トン前後で推移した後に減少し続け、平成28(2016)年度には肉類の国内消費仕向量を下回り、令和元(2019)年度には568万トン(概算値)となりました(図表特-1-5)。

図表特-1-5 食用魚介類の国内消費仕向量及び1人1年当たり消費量の変化

図表特-1-5 食用魚介類の国内消費仕向量及び1人1年当たり消費量の変化

また、我が国における食用魚介類の1人当たり消費量*1は平成13(2001)年度の40.2kgをピークに減少傾向にあり、平成23(2011)年度に初めて肉類の消費量を下回り、令和元(2019)年度には23.8kg(概算値)となりました。

また、年齢階層別の魚介類摂取量を見てみると、平成11(1999)年以降はほぼ全ての世代で摂取量が減少傾向にあります(図表特-1-6)。

  1. 農林水産省では、国内生産量、輸出入量、在庫の増減、人口等から「食用魚介類の1人1年当たり供給純食料」を算出している。この数字は、「食用魚介類の1人1年当たり消費量」とほぼ同等と考えられるため、ここでは「供給純食料」に代えて「消費量」を用いる。

図表特-1-6 年齢階層別の魚介類の1人1日当たり摂取量の変化

図表特-1-6 年齢階層別の魚介類の1人1日当たり摂取量の変化

〈6割の消費者が魚を食べる量や頻度を増やしたいと考えている〉

魚食に関する意識について見てみると、農林水産省による「食料・農業及び水産業に関する意識・意向調査」(以下「意識・意向調査」といいます。)においては、魚を食べる量や頻度を増やしたいと回答した人は約6割となっています(図表特-1-7)。これは、水産物の潜在的なニーズは高いことを示しているものと考えられます。

図表特-1-7 魚食の量と頻度に関する意向

図表特-1-7 魚食の量と頻度に関する意向

〈消費者の食の健康志向、簡便化志向が高まる〉

水産物消費量が減少し続けている一因として、消費者の食の志向の変化が考えられます。株式会社日本政策金融公庫による「食の志向調査」を見てみると、令和3(2021)年1月には健康志向、簡便化志向、経済性志向の割合が上位を占めています。平成20(2008)年以降の推移を見てみると、経済性志向の割合が横ばい傾向となっている一方、健康志向及び簡便化志向の割合が増加傾向となっています。特に、簡便化志向の割合の増加が著しく、令和3(2021)年1月には、経済性志向の割合を上回り、健康志向の割合との差が縮まりました。一方で、安全志向、手作り志向は減少しています(図表特-1-8)。

図表特-1-8 消費者の現在の食の志向(上位)の推移

図表特-1-8 消費者の現在の食の志向(上位)の推移

女性の社会進出や共働き家庭の増加に伴う家事時間の短縮により、簡便化志向が高まり、簡単に調理できる、又はすぐに食べられる食品がより一層求められるようになってきました(図表特-1-9)。また、単身世帯の増加等の世帯人数の減少に伴い、世帯によっては、調理食品(弁当等を含む。)の購入や外食の方が家庭内で調理するより合理的と考える人が増えてきたとも考えられます。

図表特-1-9 女性就業率と平日の男女別家事時間の推移

図表特-1-9 女性就業率と平日の男女別家事時間の推移

こうしたことを背景として、近年、家計の食料支出額に占める調理食品や外食の支出額の割合が増加傾向にありましたが、令和2(2020)年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により減少しました(図表特-1-10)。

図表特-1-10 食料支出額に占める外食等の支出額の割合の変化

図表特-1-10 食料支出額に占める外食等の支出額の割合の変化

〈消費者が魚介類をあまり購入しない要因は価格の高さや調理の手間等〉

肉類との比較で魚介類を消費する理由及びしない理由について見てみると、意識・意向調査においては、消費者が肉類と比べ魚介類をよく購入する理由について、「健康に配慮したから」と回答した割合が75.7%と最も高く、次いで「魚介類の方が肉類より美味しいから」(51.8%)となっています(図表特-1-11)。一方、肉類と比べ魚介類をあまり購入しない理由について、「肉類を家族が求めるから」と回答した割合が45.9%と最も高く、次いで「魚介類は価格が高いから」(42.1%)、「魚介類は調理が面倒だから」(38.0%)の順となっています。

図表特-1-11 魚介類をよく購入する理由及びあまり購入しない理由

図表特-1-11 魚介類をよく購入する理由及びあまり購入しない理由

これらのことから、肉類と比較して、魚介類の健康への良い効果の期待やおいしさが強みとなっている一方、魚介類の価格が高いこと、調理の手間がかかること、食べたい魚介類が入手しにくいこと、調理方法を知らないことが弱みとなっていると考えられます。消費者が魚介類を購入する上で支障となるこれらの要因については、水産関係事業者の取組によって解決できる場合もあります。先述のとおり水産物の潜在的なニーズが高いことを踏まえると、これらの課題の解決によって、魚食が大きく拡大することが期待できます。

〈新型コロナウイルス感染症拡大の影響により外食から内食に需要が移る〉

令和2(2020)年には、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、3月以降に外食の利用が大きく減少し、家での食事(内食)が増加しました。この傾向は同年4~5月の緊急事態宣言の期間中に、特に大都市で強く見られました(図表特-1-12)。

図表特-1-12 都市規模別の内食支出と外食支出の変化(令和2(2020)年4月・5月平均の対前年(令和元(2019)年)増減率)

図表特-1-12 都市規模別の内食支出と外食支出の変化(令和2(2020)年4月・5月平均の対前年(令和元(2019)年)増減率)

さらに、一般社団法人日本フードサービス協会の「外食産業市場動向調査」によると、令和2(2020)年の外食の売上高及び利用客数の前年同月比は、4月に最小の60%となり、平均ではそれぞれ85%、82%で推移しました(図表特-1-13)。

図表特-1-13 外食市場の全体の売上高及び利用客数の前年同月比(令和2(2020)年)

図表特-1-13 外食市場の全体の売上高及び利用客数の前年同月比(令和2(2020)年)

一方で、内食の機会が増加したことにより、外食を代替するものとして、スーパーマーケット等の小売店やウェブサイトでの購入のほか、宅配サービスや外食店からの持ち帰り(テイクアウト)の利用も拡大しました。一般社団法人全国スーパーマーケット協会等の「スーパーマーケット販売統計調査」によると、令和2(2020)年のスーパーマーケットの水産物(魚介類、塩干物)の全店売上高の前年同月比は、5月に最大の112%となり、平均107%で推移しました(図表特-1-14)。

図表特-1-14 スーパーマーケットの全店売上高の前年同月比(令和2(2020)年)

図表特-1-14 スーパーマーケットの全店売上高の前年同月比(令和2(2020)年)

コラム新型コロナウイルス感染症が消費者の行動へ与えた影響

新型コロナウイルス感染症は、消費者の行動にも大きな影響を与えました。株式会社日本政策金融公庫が令和2(2020)年7月に実施した「コロナ下での食品購入方法の変化に関する調査」では、「食品の購入方法に変化が生じた」との回答が25.8%となっており、利用する機会や量が増加した購入方法として、「インターネット」(38.0%)、「量販店・スーパー」(29.1%)及び「テイクアウト」(27.3%)が上位となっています(図1)。

図1:新型コロナウイルスの影響による農林水産物・食品の購入方法の変化

図1:新型コロナウイルスの影響による農林水産物・食品の購入方法の変化

また、同公庫が同月に実施した「コロナ下での調理方法の変化に関する調査」では、新型コロナウイルス感染症の影響により「調理をする時間・回数が増えた」との回答が32.9%となっています。また、調理時間や回数が「増えた」と回答した人のうち6割以上が今後の調理時間や回数は「このまま続くだろうと思う」と回答しています(図2)。

図2:今後の調理時間や回数はどうなると思うか

図2:今後の調理時間や回数はどうなると思うか

株式会社リクルートライフスタイルホットペッパーグルメ外食総研が令和2(2020)年9月に全国の男女を対象に実施した「外食店からのテイクアウトについて調査」によると、令和2(2020)年7~9月と前年の同時期を比べて、中食の購入頻度が増加した購入先の割合は、「スーパー、コンビニエンスストアなどの小売店」が28.1%と最も高く、次いで「外食店からのテイクアウト」(28.0%)、「持ち帰り専門店からのテイクアウト」(25.4%)の順となっています(図3)。

また、今後中食の購入頻度を増やしたい意向と減らしたい意向の差分を見てみると、増やしたい意向が上回った大きさの順に、「外食店からのテイクアウト」、「スーパー、コンビニエンスストアなどの小売店」、「持ち帰り専門店からのテイクアウト」の順となっています(図4)。

さらに、外食店からのテイクアウトで利用するメニューについては、「ハンバーガー・サンドイッチ・パン類」が26.3%と最も多く、次いで「カレー・牛丼」(22.5%)、「焼き鳥・鶏のから揚げ・フライドチキン」(20.0%)、「寿司・海鮮料理・海鮮丼」(17.3%)の順となっています(図5)。

* 中食:外で買ってきた料理を食べたり、出前や宅配を利用して食べること

図3:コロナ禍で増えた中食ランキング

図3:コロナ禍で増えた中食ランキング

図4:今後増やしたい中食ランキング

図4:今後増やしたい中食ランキング

図5:「外食店からのテイクアウト」メニューランキング

図5:「外食店からのテイクアウト」メニューランキング

イ 国内の水産物供給に関する状況

〈漁業・養殖業生産量の減少傾向が継続、生産額は近年増加傾向〉

我が国の漁業・養殖業生産量は、海洋環境の変動等の影響から資源量が減少する中で、昭和59(1984)年の1,282万トンをピークに減少傾向が続いています(図表特-1-15)。

図表特-1-15 漁業・養殖業の生産量の推移

図表特-1-15 漁業・養殖業の生産量の推移

漁業生産額は、昭和57(1982)年の2兆9,772億円をピークに平成24(2012)年まで長期的に減少してきましたが、海面養殖業における消費者ニーズの高い養殖魚種の生産の発展や養殖技術の普及・発展等に伴い、平成25(2013)年以降は増加傾向となっています(図表特-1-16)。

図表特-1-16 漁業・養殖業の生産額の推移

図表特-1-16 漁業・養殖業の生産額の推移

漁業においては、海洋環境の変動等によって生産量が変動します。需要に対して生産量が著しく多い場合には魚価の低下につながり、著しく少ない場合には魚価の高騰及び販売機会の損失につながることから、こうした状況を改善するための取組が漁業者、市場関係者の双方から期待されています。

一方、養殖業は、需要に応じて多様な商品を比較的安定して生産することができるという強みがあることから、この強みを生かして国内市場及び海外市場を開拓することが期待されています。

〈食用加工品生産量が減少傾向の中、ねり製品や冷凍食品は近年横ばい傾向〉

水産加工品のうち食用加工品の生産量は、平成元(1989)年以降、総じて減少傾向にありましたが、ねり製品や冷凍食品の生産量については、平成21(2009)年頃から横ばい傾向となっています(図表特-1-17)。

図表特-1-17 水産加工品生産量の推移

図表特-1-17 水産加工品生産量の推移

また、生鮮の水産物を丸魚のまま、又はカットしたりすり身にしただけで凍結した生鮮冷凍水産物の生産量は、平成前期には食用加工品の生産量を上回っていましたが、平成7(1995)年以降は食用加工品の生産量の方が上回っており、ねり製品や冷凍食品等、多様な商品に加工されています。

水産加工業の出荷額は、平成15(2003)~30(2018)年の間には、約3兆円から3兆5千億円の間で推移しました(図表特-1-18)。

図表特-1-18 水産加工業の出荷額の推移

図表特-1-18 水産加工業の出荷額の推移

〈水産物流通及び水産加工品に関する新型コロナウイルス感染症拡大の影響〉

令和2(2020)年には、新型コロナウイルス感染症拡大の影響及び緊急事態宣言(東京都では4月7日~5月25日)による巣ごもり消費に伴い、スーパーマーケットでの売上は好調となった一方、インバウンド需要の減退や外出自粛に伴うホテル・飲食店向け需要の減退により、市場で流通する水産物の取扱金額が、高級魚介類を中心に前年度に比べて下落しました。豊洲市場における水産物の令和2(2020)年の取扱金額の前年同月比を見てみると、緊急事態宣言が出された4月に最大の減少となる 66%となり、月平均では90%となりました(図表特-1-19)。

また、水産加工品については、巣ごもり消費によってスーパーマーケットでの売上が好調となったこと等により、流通における影響が水産物の中では比較的小さなものとなりました。豊洲市場における水産加工品の令和2(2020)年の取扱金額の前年同月比を見てみると、4月に最大の減少となる80%となり、月平均では97%となりました。

図表特-1-19 豊洲市場における水産物の取扱金額の前年同月比(令和2(2020)年)

図表特-1-19 豊洲市場における水産物の取扱金額の前年同月比(令和2(2020)年)

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
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