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水産庁

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(4)食の安全や持続可能な漁業・養殖業に関する取組

ア 食の安全に関する取組

〈多くの水産食品事業者がHACCP対応に取り組む〉

近年、海外のみならず国内においても、水産物の販路拡大のためにHACCP導入の必要性が高まっており、多くの水産食品事業者がHACCPに対応するための取組を行っています。国においても、水産食品事業者のHACCP導入を推進するため、一般衛生管理やHACCPに基づく衛生管理に関する講習会の開催等を支援しているほか、EUや米国への輸出に際して必要なHACCPに基づく衛生管理及び施設基準等の追加的な要件を満たす施設としての認定の取得を促進するため、水産加工・流通施設の改修等を支援しています。また、水産物の流通拠点となる漁港においては、高度な衛生管理に対応した荷さばき所等の整備を推進しています。例えば、焼津やいづ漁港では、大型漁船の入港、衛生管理対策、冷蔵施設の不足といった課題に対応することにより、輸出拡大に寄与する効果等が見られています(事例20)。

事例20高品質な水産物の輸出に向けた供給体制の構築(焼津漁港)

海外まき網船の水産物が水揚げされる焼津漁港では、大型漁船への対応や衛生管理対策、高品質で単価の高い冷凍水産物であるPS製品を対象とした冷蔵施設の不足が課題となっていました。

そこで、焼津漁港では、これらの課題の克服とともに輸出の拡大を図るべく、大型漁船に対応できる水深の深い岸壁、高度衛生管理型荷さばき所、PS製品を保管できる能力を持った冷凍・冷蔵施設の整備が行われました(令和元(2019)年12月に完成)。

その結果、PS製品の陸揚量の増加や輸出向け商材の安定的な確保のほか、焼津地区においてEU・HACCP認定施設が増加するといった効果も得られており、今後も輸出拡大に寄与していくことが期待されます。

* PS製品:約マイナス20℃の濃い塩水に鮮度の良いカツオ等をすぐに入れて急速冷凍し、その後超低温保存をした生食向け製品。

焼津漁港において実施した対策例

イ 持続可能な漁業・養殖業に関する取組

〈水産エコラベル認証取得が増加〉

世界的に持続可能な漁業・養殖業への関心が高まっている中で、我が国において、生産現場等での水産エコラベル認証の取得が増えつつあります。かつては輸出先のマーケットのニーズに対応することを主な目的として漁業・養殖業で認証取得が行われてきましたが、近年、千葉県の海光かいこう物産株式会社の事例のように、必ずしも輸出を目的としていない漁業・養殖業での認証取得の動き(事例21)や、イオン株式会社、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社JR東日本フーズ及び羽田市場株式会社の事例のように小売店及び外食店での認証取得の動きも見られるようになっています(事例22)。2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会*1において持続可能性に配慮した調達コードが策定され、水産エコラベル認証品等の調達が推進されていることも、こうした認証への関心が広がるきっかけになっていると考えられます。

国においても、水産エコラベル認証の取得を促進すべく、水産エコラベルの認証取得を目指す事業者へのコンサルティングについて支援を行っているほか、認証を取得した国産水産物について、海外の見本市等におけるプロモーションの支援を行っています。

  1. 令和2(2020)年3月30日に、東京オリンピック競技大会は令和3(2021)年7月23日から8月8日に、東京パラリンピック競技大会は同年8月24日から9月5日に開催されることが決定された。

事例21持続可能な江戸前の漁業に向けた取組(海光物産株式会社)

千葉県船橋市に所在する海光物産(株)は、江戸前で漁獲される鮮魚の販売、物流事業を営んでいます。

同社は、漁船漁業を営む株式会社大傳だいでん丸及び有限会社中仙なかせん丸と連携してスズキを対象としたまき網漁業の漁獲情報を収集するなど、率先して資源管理に向けた取組を行っており、平成30(2018)年4月には、生産及び流通加工の両段階においてMEL認証を取得しました。

また、同社は、江戸前漁業の伝統・文化を次世代につなげることを目的として学校教育の場で漁業の実態を伝える取組を行っているほか、資源管理と価値の創造の両立に向けてICTを用いた漁獲物のトレーサビリティの導入に向けて取り組んでいます。

* Information and Communication Technology:情報通信技術、情報伝達技術。

海光物産(株)と連携して取組を行うまき網漁船

事例22小売店・外食店における水産エコラベル認証の取得

水産エコラベル認証は、漁業・養殖業の生産段階についての認証のほか、加工した上で店舗に並ぶまで、もしくは外食産業を通じて顧客の目の前に届けられるまでの流通・加工段階についての認証もあります。近年、我が国においても、流通・加工段階の水産エコラベル認証(CoC認証)を取得し、水産エコラベルを表示した水産物を販売する小売店や外食店が見られるようになってきています。

* 製品の製造・加工・流通の全ての過程において、認証水産物が適切に管理され、非認証原料の混入やラベルの偽装がないことを認証するもの。

(1)イオン株式会社

イオン(株)は、平成18(2006)年にMSCのCoC認証、平成26(2014)年にASCのCoC認証を取得したことを皮切りに、平成29(2017)年4月に策定した「2020年目標」では、イオングループの総合スーパー、スーパーマーケット企業でMSC・ASCのCoC認証の100%取得を目指すことを掲げて取組を進めています。令和元(2019)年度は、80%を超えるグループの店舗でCoC認証の取得に至っており、取り扱うMSC・ASC認証の魚種及び品目は国産の水産物も含めて拡大しています。

MSC認証の北海道産ホタテ貝柱等の太巻商品

(2)株式会社イトーヨーカ堂

(株)イトーヨーカ堂は、国産養殖魚のオリジナルブランド商品の生産者とともにMEL認証の取得に取り組み、令和2(2020)年3月、日本の大手小売業として初めてMEL認証を取得し全国の店舗でMELマークを付与したブリ(熊本県産)、カンパチ(鹿児島産)、マダイ(三重県産)、ヒラメ(三重県産)の販売を開始しました。

MELマークを付与したオリジナルブランド商品

(3)株式会社JR東日本フーズ及び羽田市場株式会社

(株)JR東日本フーズ及び羽田市場(株)は、東京駅内の「回転寿司 羽田市場」で、MSC・ASC認証の水産物を扱うためのCoC認証を取得し、令和2(2020)年10月、MSC認証を取得したタイセイヨウクロマグロ及びASC認証を取得した銀鮭の取扱いを開始しました。タイセイヨウクロマグロは宮城県気仙沼市の株式会社臼福うすふく本店が供給しており、銀鮭は宮城県女川町の株式会社マルキンが供給しています。

取扱いを開始したMSC認証タイセイヨウクロマグロ
取扱いを開始したASC認証銀鮭

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX番号:03-3501-5097