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水産庁

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(3)潜在的なニーズを発掘する取組

 

多くの消費者にとって、小売店で魚介類の旬やおいしい食べ方等の情報を得る機会は減少してきていますが、近年、特色ある売場づくりを目指す地域の食品スーパー等において、国産魚介類の販売拡大を目指した取組が見られます。また、消費者は食べ方が想像できないとなかなか商品を買ってくれないことから、魚介類の調理に詳しい人材が消費者との対面販売を行うことで消費者のニーズに合わせておいしい魚を食べる機会を提供することを試みるところや、地産地消をスローガンに、地域の新鮮な魚介類を提供する機会を設けているところもあります。例えば、首都圏を中心に鮮魚店を展開する角上かくじょう魚類ホールディングス株式会社は、魚のおいしい食べ方を伝える対面販売と鮮度が良く手頃な魚の調達に力を入れることで年々売上を伸ばしています(事例16)。さらに、インターネットを活用して水産物の情報やさばき方・調理方法を紹介する動画を配信するなどの取組も広がってきています。例えば、JFグループでは、地域ごと、季節ごとに漁師自らが自信を持って勧める水産物を「プライドフィッシュ」として選定し、インターネットで情報発信し、販売するなどの取組を行っています(事例17)。こういった様々な水産関係事業者による取組は、消費者の潜在的な魚食のニーズを掘り起こし、水産物の消費拡大や多様な魚介類の価値向上につながることが期待されます。

事例16調達と対面販売の強化により魚の本当のおいしさを消費者に伝える
     (角上魚類ホールディングス株式会社)

首都圏を中心に鮮魚店を22店舗経営する角上魚類ホールディングス(株)は、多様で鮮度の良い魚を手頃な価格で販売することで、普段魚を食べ慣れていない内陸の地域においても人気を集め、年々売上を伸ばしています。

これを可能としているのは、市場で鮮度が良く手頃な魚を見分けて買い付ける自社のバイヤーと、店内で消費者に多様な魚のおいしい食べ方を伝える対面販売の人材の存在です。同社で販売される鮮魚は、経験豊富なバイヤーが朝に市場で買い付け、当日昼頃には各店舗に届けられます。また、店舗では対面販売によって魚の食べ方の説明や下処理のサービスを行うことにより、消費者のニーズに合わせて、おいしい魚を食べる機会を提供しています。

対面販売を行う鮮魚売り場

事例17潜在的なニーズの発掘に向けた「プライドフィッシュ」の取組(JFグループ)

JFグループ(全国の漁連・漁協)では、平成26(2014)年度から、地域ごと、季節ごとに漁師自らが自信を持って勧める水産物を「プライドフィッシュ」として選定し、情報発信する取組を行っています。具体的には、全国各地のスーパーマーケットや百貨店、飲食店でのフェアや、Fish-1グランプリ等のPRイベント等を開催するとともに、プライドフィッシュを味わえるご当地の飲食店や各種コンテンツ等の国産水産物の消費拡大に関する様々な情報をインターネットで発信しているほか、令和2(2020)年2月に開設した産直通販サイト「JFおさかなマルシェ ギョギョいち」においてもプライドフィッシュの販売を行っています。

「プライドフィッシュ」のウェブサイト

コラムスーパーマーケットの人材不足

かつては、いわゆる街の魚屋さんが魚介類の旬や産地、おいしい食べ方等を消費者に教え、調理方法に合わせた下処理のサービス等も提供して人々の食生活を支えていましたが、鮮魚専門の小売店の数は減少し、消費者の多くはスーパーマーケット等の量販店で魚介類を買うことが多くなっています。近年、日本人の水産物消費量が減少していますが、主要な販売場所であるスーパーマーケットにおいては人材不足が課題となっています。

令和2(2020)年7~8月に、全国の小売団体3協会が発表した「スーパーマーケット年次統計調査報告書」によると、正社員が不足している部門として、水産・鮮魚売場部門が最も多い回答でした(図)。水産物は、そのままで売る野菜等と違い、店頭に並べる際に内臓を除去したり3枚におろしたりすることが多くなります。また、魚種が多くしかもいろいろなサイズを扱うため、魚に対する幅広い知識と魚をさばく技術が求められますが、そのような知識と技術を有する人は少なく、また技術を有する人の業務が固定化され、休みが取りづらくなってしまうといった課題もあるようです。

図:スーパーマーケットの部門別の正社員不足の割合

図:スーパーマーケットの部門別の正社員不足の割合

今般、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって外食から内食へと食の需要が大きく変化しましたが、漁業者がインターネットを使った水産物の直接販売を始めるなど、水産関係事業者がこの変化に対応してニーズを発掘しようと新たな取組を開始する動きが見られました。例えば、宮城県の若手漁師等から成る団体「一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン」は、内食の需要の増加をチャンスと捉え、消費者向けに鮮魚の詰め合わせの通信販売を開始し、好調な売上につなげています(事例18)。また、羽田市場株式会社は、同年5月に消費者向けに業務用の商品を販売するECサイトを立ち上げ、売上の大きな回復につなげています(事例19)。

事例18新型コロナウイルス感染症拡大を契機として生産者が鮮魚の通信販売に挑戦
     (一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン)

(一社)フィッシャーマン・ジャパンは、宮城県内で活動している若手漁師や流通業者等から成る団体です。

同団体は、今般の新型コロナウイルス感染症拡大によって外食向けの売上が大きく落ち込むなどの影響を受けましたが、内食の需要の増加を「質の良い魚の味わいと、さばき方・楽しみ方を消費者に伝えるチャンス」と捉え、令和2(2020)年4月、消費者向けに、従来飲食店等に提供されていた高品質・高単価の鮮魚を含む詰め合わせの通信販売を開始しました。注文者にはオンライン会議アプリ等を使ってさばき方を指南しているほか、魚料理の普及に向けたインターネット動画の配信も行っています。こうした取組が功を奏し、好調な売上が続いています。

魚のさばき方のオンライン動画付きの鮮魚の通信販売

事例19新型コロナウイルス感染症拡大を契機として業務用ECサービスから消費者向けECサービスへ拡大
     (羽田市場株式会社)

羽田市場(株)は従来、小売店や飲食店へ、空輸により究極まで鮮度の良さを求めた水産物を提供するサービスを行っていましたが、令和2(2020)年4月頃、新型コロナウイルス感染症拡大によって外食産業が影響を受けると、同社も売上がほとんど無くなる程の影響を受けました。

そこで、同年5月、この厳しい状況を打破するべく、消費者向けに業務用の商品を販売するECサイト「漁師さん応援プロジェクト」を立ち上げたところ、インターネットやSNSを通じて広く知られる様になり、消費者の内食需要を掴んで売上の大きな回復に至っています。

また、国は、水産物販売促進緊急対策事業において、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で販売が落ち込んだ水産物の販売を促進するため、学校給食での水産物の提供や、インターネット通販での送料支援、PR活動等の取組を支援しました。この事業を活用して、大手鮮魚チェーン店では試供品提供による水産物の販売促進を実施しました(図表特-2-1)。

図表特-2-1 小売店での水産物販売促進の例

図表特-2-1 小売店での水産物販売促進の例

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX番号:03-3501-5097