このページの本文へ移動

水産庁

メニュー

(3)消費者への情報提供や知的財産保護のための取組

目標12
目標14

ア 水産物に関する食品表示

〈貝類の原産地表示を厳格化〉

消費者が店頭で食品を選択する際、安全・安心、品質等の判断材料の一つとなるのが、食品の名称、原産地、原材料、消費期限等の情報を提供する食品表示であり、食品の選択を確保する上で重要な役割を担っています。水産物を含む食品の表示は、平成27(2015)年より「食品表示法*1」の下で包括的・一元的に行われています。

食品表示のうち、加工食品の原料原産地表示については、平成29(2017)年9月に同法に基づく食品表示基準が改正され、輸入品以外の全ての加工食品について、製品に占める重量割合上位1位の原材料が原料原産地表示の対象となっています*2。さらに、国民食であるおにぎりののりについては、重量割合としては低いものの、のりの生産者の意向が強かったこと、消費者が商品を選ぶ上で重要な情報と考えられること、表示の実行可能性が認められたこと等から、表示義務の対象とされています。

また、水産物の原産地表示については、1)国産品にあっては水域名又は地域名(主たる養殖場が属する都道府県名)、2)輸入品にあっては原産国名、3)2か所以上の養殖場で養殖した場合は主たる養殖場(最も養殖期間の長い場所)が属する都道府県名*3となっています。このような中、令和4(2022)年2月に農林水産省が公表した「広域小売店におけるあさりの産地表示の実態に関する調査」において、漁獲量を大幅に上回る量の熊本県産あさりが販売されていることが推測され、科学的分析の結果、農林水産省が買い上げた熊本県産のあさりのほとんどが「外国産あさりが混入されている可能性が高い」と判定されました。このため、あさりの産地表示適正化のための対策として、消費者庁は、同年3月に食品表示基準Q&Aを改正し、出荷調整用その他の目的のため、貝類を短期間一定の場所に保存することを「蓄養」とした上で、蓄養が上記3)の期間の算定に含まれないことを明確化したほか、輸入したあさりの原産地は、蓄養の有無にかかわらず輸出国となること等のルールの適用の厳格化を行いました*4

  1. 平成25(2013)年法律第70号
  2. 消費者への啓発及び事業者の表示切替えの準備のための経過措置期間は、令和4(2022)年3月31日で終了。
  3. ただし、サケ・マス類やブリ類など、養殖を行った2か所の養殖場のうち、第2段階の育成期間が短いものの、重量が大きい場合には、当該養殖場における育成により水産物の品質が決定されることから、重量の増加が大きい養殖場が属する都道府県が原産地となる。
  4. 例外として、輸入した稚貝のあさりを区画漁業権に基づき1年半以上育成(養殖)し、育成等に関する根拠書類を保存している場合には、国内の育成地を原産地として表示することができる。

イ 機能性表示食品制度の動き

〈機能性表示食品として、7件の生鮮食品の水産物が届出〉

機能性を表示することができる食品は、国が個別に許可した特定保健用食品(トクホ)と国の規格基準に適合した栄養機能食品のほか、機能性表示食品があります。

食品が含有する成分の機能性について、安全性と機能性に関する科学的根拠に基づき、食品関連事業者の責任で表示することができる機能性表示食品制度では、生鮮食品を含め全ての食品*1が対象となっており、令和4(2022)年3月末現在、生鮮食品の水産物としては、カンパチ2件(「よかとと 薩摩さつまカンパチどん」及び「生鮮プレミアム 活〆かんぱち」)、ブリ1件(「活〆黒瀬くろせ ぶりロイン200g」)、イワシ1件(「大トロいわしフィレ」)、マダイ1件(「伊勢黒潮まだい」)及びクジラ2件(「凍温熟成鯨赤肉」及び「鯨本皮」)の7件が届出されています。

  1. 特別用途食品、栄養機能食品、アルコールを含有する飲料、並びに脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、糖類(単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないものに限る。)及びナトリウムの過剰な摂取につながるものを除く。

事例鯨肉初の機能性表示食品(共同船舶株式会社)

共同船舶(株)は、令和3(2021)年9月に鯨肉初の機能性表示食品として「凍温熟成鯨赤肉」と「鯨本皮」の2商品を届出しました。

クジラの筋肉には、イミダゾールジペプチド(バレニン、カルノシン、アンセリン)が多く含まれています。イミダゾールジペプチドは、日常生活や身体的な作業による一時的な疲労感の軽減に役立つ機能と、日常生活における一時的なストレスの軽減に役立つ機能があることが報告されています。「凍温熟成鯨赤肉」は、一時的な疲労感やストレスが気になる中高年層をターゲットにした商品です。

また、クジラの皮にはDHA が多く含まれています。DHAを900mg/日摂取することで、加齢により低下する認知機能の一部である記憶力(言語や図形などを覚え思い出す力)の維持に役立つ機能があることが報告されています。「鯨本皮」は、30g食べることで、機能性が報告されている1日当たりのDHAの量の50%を摂取できる、記憶力が気になる健常な中高年層をターゲットにした商品です。

同社は、このような商品により、鯨肉の機能性をアピールしていくことで、鯨肉の販売促進を図っています。

機能性表示食品の「凍温熟成鯨赤肉」と「鯨本皮」
小売店での販売促進イベント

ウ 水産エコラベルの動き

〈令和3(2021)年度は新たに90件が国際基準の水産エコラベルを取得〉

水産エコラベルは、水産資源の持続性や環境に配慮した方法で生産された水産物に対して、消費者が選択的に購入できるよう商品にラベルを表示する仕組みです。国内では、一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会による漁業と養殖業を対象とした「MEL」(MarineEco-Label Japan)、英国に本部を置く海洋管理協議会による漁業を対象とした「MSC」(Marine Stewardship Council)、オランダに本部を置く水産養殖管理協議会による養殖業を対象とした「ASC」(Aquaculture Stewardship Council)等の水産エコラベル認証が主に活用されており、それぞれによる漁業と養殖業の認証実績があります(図表1-13)。

図表1-13 我が国で主に活用されている水産エコラベル認証

図表1-13 我が国で主に活用されている水産エコラベル認証

水産エコラベルは、国際連合食糧農業機関(FAO)水産委員会が採択した水産エコラベルガイドラインに沿った取組に対する認証を指すものとされています。しかし、世界には様々な水産エコラベルがあることから、水産エコラベルの信頼性確保と普及改善を図るため、「世界水産物持続可能性イニシアチブ(GSSI:Global Sustainable Seafood Initiative)」が平成25(2013)年に設立され、GSSIから承認を受けることが、国際的な水産エコラベル認証スキームとして通用するための潮流となっています。令和3(2021)年度末現在、MSC、ASC、MEL等九つの水産エコラベル認証スキームがGSSIの承認を受けています*1。なお、国内では、令和3(2021)年度に、新たに国際基準の水産エコラベル90件(MSC15件、ASC14件、MEL61件)が認証されました。水産庁は、引き続き水産エコラベルの認証取得の促進や水産エコラベルの認知度向上のための周知活動を推進していくこととしています。

また、我が国の水産物が持続可能で環境に配慮されたものであることを消費者に情報提供し、消費者が水産物を購入する際の判断の参考とするための取組として、国立研究開発法人水産研究・教育機構が「SH"U"N(Sustainable, Healthy and "Umai" Nippon seafood)プロジェクト」を行っており、令和3(2021)年度末現在、40種の水産物について、魚種ごとに資源や漁獲の情報、健康と安全・安心といった食べ物としての価値に関する情報をWebサイトに公表しています。

  1. ASCは、サーモン、エビのみがGSSI承認の対象。
QRコード
水産エコラベルの推進について(水産庁):https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/budget/suishin.html
QRコード
SH"U"N プロジェクト((研)水産研究・教育機構):https://sh-u-n.fra.go.jp/[外部リンク]

エ 地理的表示保護制度

〈これまでに水産物14産品が地理的表示に登録〉

地理的表示(GI)保護制度は、品質や社会的評価等の特性が産地と結び付いている産品について、その名称を知的財産として保護する制度です。我が国では、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律*1」(地理的表示法)に基づいて平成27(2015)年から開始されました。この制度により、生産者にとっては、その名称の不正使用からの保護が図られるほか、副次的効果として地域ブランド産品としての付加価値の向上等が見込まれます。消費者にとっても、GI保護制度により保護された名称の下で流通する一定の品質等の特性を有した産品を選択できるという利点があります。また、GIと併せて「GIマーク*2」を付すことで、当該名称を知らない者に対する真正な特産品であることの証明になります。

我が国のGI産品等の保護のため、引き続き、国際協定による諸外国とのGIの相互保護に向けた取組を進めるほか、海外における我が国のGI等の名称の使用状況を調査し、都道府県等の関係機関と共有するとともに、GIに対する侵害対策等の支援を行い、海外における知的財産侵害対策の強化を図ることで、農林水産物・食品等の輸出促進が期待されます。

GI登録状況については、令和3(2021)年度に農林水産物全体で新たに13産品が登録され、同年度末現在で119産品となりました。このうち、水産物は14産品登録されています(図表1-14)。

  1. 平成26(2014)年法律第84号
  2. 登録された産品の地理的表示と併せて付すことができるもので、産品の確立した特性と地域との結び付きが見られる真正な地理的表示産品であることを証するもの。

図表1-14 登録されている水産物の地理的表示(令和3(2021)年度末現在)

図表1-14 登録されている水産物の地理的表示(令和3(2021)年度末現在)
QRコード
地理的表示(GI)保護制度(農林水産省):https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344
FAX番号:03-3501-5097