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水産庁

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(2)燃油等の漁業用生産資材における影響と対応

ア 燃油

〈燃油価格の高騰〉

油費の漁労支出に占める割合は、直近5か年の平均で、沿岸漁船漁業を営む個人経営体で16%、漁船漁業を営む会社経営体で14%を占めており、燃油の価格動向は、漁業経営に大きな影響を与えます。

燃油価格は、過去10年ほどの間、新興国における需要の拡大、中東情勢の流動化、投機資金の流入、米国におけるシェール革命、産油国合意に基づく産出量の増減、為替相場の変動等、様々な要因により大きく変動してきました。その後、新型コロナウイルス感染症により世界の経済活動が停滞し、石油需要が減退するとの懸念が高まったこと等から、令和2(2020)年4月に大幅に下落し、一時的に平成28(2016)年以来4年ぶりの低水準となりました。

しかしながら、令和2(2020)年12月以降は、世界的に経済活動が徐々に再開し、石油需要が増加するとの期待が高まったこと等から燃油価格は急激に上昇し、更に令和4(2022)年2月からのロシア・ウクライナ情勢による影響や急速な円安により、高値水準で、かつ、不安定な動きを見せています。なお、同年1月からの資源エネルギー庁による燃料油価格激変緩和対策事業の実施により、ガソリン価格が所定の基準を超えた場合に燃料油元売りに補助金が支給されたことから、燃油価格の高騰が若干緩和されたところです(図表特-1-10)。

図表特-1-10 燃油価格の推移

図表特-1-10 燃油価格の推移

〈燃油価格高騰対策の実施〉

これまでも、水産庁は、燃油価格が変動しやすいこと及び漁業経営に与える影響が大きいことを踏まえ、漁業者と国があらかじめ積立てを行い、燃油価格が一定の基準以上に上昇した際に積立金から補填金ほてんきんを交付する漁業経営セーフティーネット構築事業により、燃油価格高騰の際の漁業経営への影響の緩和を図ってきました。

今般の燃油価格の高騰を受け、政府は、令和4(2022)年3月に、原油価格高騰に対する緊急対策を取りまとめました。このうち、漁業については、積立金に98億円の国費の積み増しを行うとともに、漁業者の省エネ機器の導入支援について対象を拡充しました。さらに、同年10月には、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を取りまとめ、同年12月に成立した令和4(2022)年度第2次補正予算において330億円の国費の積み増しを行うとともに、漁業者の省エネ機器の導入についても引き続き支援することとしました。あわせて、期中における漁業者による追加の積み増しを1回に限り可能としました。積立金からの補填金は、令和3(2021)年1月から令和4(2022)年12月まで8期*1連続して交付されている状況であり、政府は、引き続き燃油価格の動向を注視しつつ、状況の変化に応じ、必要な対策について検討していくこととしています。

  1. 漁業経営セーフティーネット構築事業では、燃油価格の補填に関する期間を3か月で一つの期としている。

イ 養殖用配合飼料

〈養殖用配合飼料価格の高騰〉

魚類養殖において餌代はコストの6割以上を占めており、養殖用配合飼料の価格動向は、給餌養殖業の経営を大きく左右します。近年、中国をはじめとした新興国における魚粉需要の拡大を背景に、配合飼料の主原料である魚粉の輸入価格は上昇傾向で推移してきました。

これに加え、平成26(2014)年夏から平成28(2016)年春にかけて発生したエルニーニョ現象の影響により、最大の魚粉生産国であるペルーにおいて魚粉原料となるペルーカタクチイワシ(アンチョベータ)の漁獲量が大幅に減少したことから、魚粉の輸入価格は、平成27(2015)年4月には、1t当たり約21万円まで上昇しました。その後、魚粉の輸入価格は下落し、平成28(2016)年7月には1t当たり約13万円に下落の後やや落ち着いて推移していましたが、令和2(2020)年12月以降は、新型コロナウイルス感染症による世界的な経済活動の停滞からの回復やロシア・ウクライナ情勢の影響に加え、急速な円安により上昇傾向にあり、令和4(2022)年10月には1t当たり約24万円まで上昇するなど高い水準で推移しています(図表特-1-11)。

図表特-1-11 配合飼料及び輸入魚粉価格の推移

図表特-1-11 配合飼料及び輸入魚粉価格の推移

〈配合飼料価格高騰対策の実施〉

水産庁は、魚の成長とコストの兼ね合いが取れた高効率な低魚粉養殖用配合飼料の開発や、配合飼料原料の多様化及び国産化、高成長系統の作出を目指す育種技術の開発等の取組を推進するとともに、燃油価格高騰対策と同様に、配合飼料価格が一定の水準以上に上昇した際に、漁業者と国による積立金から補填金を交付する漁業経営セーフティーネット構築事業により、飼料価格高騰による養殖業経営への影響の緩和を図ってきました。

積立金からの補填金は、配合飼料価格の高騰を受けて、令和3(2021)年は1月から6月までの2期、令和4(2022)年は1月から12月まで4期連続して交付されている状況であり、水産庁は、引き続き配合飼料価格の動向を注視しつつ、状況の変化に応じ、必要な対策について検討していくこととしています。

ウ その他の漁業用生産資材

〈その他の漁業用生産資材価格の高騰と対策〉

新型コロナウイルス感染症による世界的な経済活動の停滞からの回復、ロシア・ウクライナ情勢や急速な円安の進行を背景に、燃油だけでなく、漁業用生産資材の価格も高騰しています。例えば漁業用ロープの価格は令和4(2022)年4月に1か月で10%近く急激に上昇したほか、漁船のうち鋼船の建造に使用される厚中板についても、令和3(2021)年以降急激に上昇し、平成27(2015)年の価格と比較して、93%上昇しています。また、FRP(繊維強化プラスチック)漁船の建造に使用されるプラスチックの一つである不飽和ポリエステル樹脂は、令和3(2021)年後半以降上昇し、平成27(2015)年の価格と比較して、32%上昇しています(図表特-1-12)。

図表特-1-12 漁業用生産資材価格指数の推移(平成27(2015)年=100)

図表特-1-12 漁業用生産資材価格指数の推移(平成27(2015)年=100)

このような状況を踏まえ、漁業構造改革総合対策事業(もうかる漁業)や漁船・漁具等のリース方式による導入、施設の整備においては、鋼材等の高騰に伴う船価や資材価格等の高騰を踏まえつつ、支援していくこととしています。

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344