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水産庁

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(4)水産物貿易の動向

目標8
目標9

ア 水産物輸入の動向

〈水産物輸入額は2兆160億円〉

我が国の水産物輸入量は、国際的な水産物需要の高まりや国内消費の減少等に伴って緩やかな減少傾向で推移してきました。

令和5(2023)年は、輸入量(製品重量ベース)は前年から3%減少の216万tとなり、輸入額は前年から3%減少の2兆160億円となりました(図表1-16)。

主な輸入先国・地域は中国、チリ、米国となりました。輸入額の上位を占める品目は、サケ・マス類、カツオ・マグロ類、エビ等となっています(図表1-17)。輸入先国・地域は品目に応じて様々であり、サケ・マス類はチリ、ノルウェー等、カツオ・マグロ類は台湾、中国、マルタ等、エビはインド、ベトナム、インドネシア等から多く輸入されています(図表1-18)。

図表1-16 我が国の水産物輸入量・輸入額の推移

図表1-16 我が国の水産物輸入量・輸入額の推移

図表1-17 我が国の水産物輸入先国・地域及び品目内訳

図表1-17 我が国の水産物輸入相手国・地域及び品目内訳

図表1-18 我が国の主な輸入水産物の輸入先国・地域

図表1-18 我が国の主な輸入水産物の輸入先国・地域

イ 水産物輸出の動向

〈水産物輸出額は3,901億円〉

我が国の水産物輸出額は、平成20(2008)年のリーマンショックや平成23(2011)年の東京電力福島第一原子力発電所の事故による諸外国の輸入規制の影響等により落ち込んだ後、平成24(2012)年以降はおおむね増加傾向で推移してきました。令和5(2023)年においては、1月から6月までの輸出額は前年から約255億円増加したものの、同年8月24日のALPS処理水*1の海洋放出開始以降の中国による全都道府県の水産物の輸入停止により7月から12月までの輸出額は前年から約227億円減少し、令和5(2023)年は、輸出量(製品重量ベース)は前年から25%減の48万tとなり、輸出額は前年から1%増の3,901億円となりました(図表1-19)。

主な輸出先国・地域は香港、米国、中国となりました。令和4(2022)年において中国への輸出額が輸出額総額の22%を占めていましたが、令和5(2023)年には同国の輸入規制により16%に減少しました。品目別では、ホタテガイ、真珠、ブリが上位となりました。令和4(2022)年において中国への輸出割合が5割を超えていたホタテガイの割合が減少しました(図表1-20、図表1-21)。

  1. 多核種除去設備(ALPS:Advanced Liquid Processing System)等によりトリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たすまで浄化処理した水

図表1-19 我が国の水産物輸出量・輸出額の推移

図表1-19 我が国の水産物輸出量・輸出額の推移

図表1-20 我が国の水産物輸出先国・地域及び品目内訳

図表1-20 我が国の水産物輸出先国・地域及び品目内訳

図表1-21 我が国の主な輸出水産物の輸出先国・地域

図表1-21 我が国の主な輸出水産物の輸出先国・地域

ウ 水産物輸出の拡大に向けた取組

〈水産物輸出目標は、令和12(2030)年までに1.2兆円〉

国内の水産物市場が縮小する一方で、世界の水産物市場はアジアを中心に拡大しています。このため、我が国の漁業者等の所得向上を図り、水産業が持続的に発展していくためには、水産物の輸出の大幅な拡大を図り、世界の食市場を獲得していくことが不可欠です。

このため、令和2(2020)年3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」等において、令和12(2030)年までに農林水産物・食品の輸出額を5兆円とする目標が位置付けられました。なお、この目標の中で水産物の輸出額は1.2兆円とされています。

この目標の実現のため、令和2(2020)年12月に「農林水産業・地域の活力創造本部*1」において、マーケットインで輸出に取り組む体制を整備するため、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を決定しました。同戦略では、海外で評価される我が国の強みがあり、輸出拡大の余地が大きく、関係者が一体になった輸出促進活動が効果的な品目として、29品目*2の輸出重点品目(水産物では、ぶり、たい、ホタテ貝、真珠及び錦鯉の5品目)を選定して、これらの品目について、主として輸出向けの生産を行う輸出産地をリスト化することとしており、水産物については、延べ22産地(令和5(2023)年12月時点)が掲載されています。

また、「農林水産物・食品輸出プロジェクト(GFP)」により、輸出診断、ビジネスマッチング、輸出事業者のレベルに応じたサポートが行われているほか、新たに輸出に取り組む輸出スタートアップを増やしていくため、現場に密着したサポート体制を強化することとしています。このほか、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)による輸出総合サポート、日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)による戦略的プロモーションや民間団体・民間事業者等によるPR・販売促進活動等が行われています。また、香港や米国等の主要な輸出先国・地域において、現地発の情報・戦略に基づき輸出事業者を専門的・継続的に支援するため、在外公館、JETRO海外事務所、JFOODO海外駐在員を主要な構成員とする輸出支援プラットフォームが設立されました。さらに、海外現地法人を設立し、設備投資等を行う場合の資金供給を促進するとともに、投資円滑化法*3に基づき、民間の投資主体による輸出に取り組む事業者への資金供給の促進に取り組んでいます。くわえて、輸出先国・地域の衛生基準等に適合した輸出環境を整備するため、農林水産省は、欧米への輸出時に必要とされる水産加工施設等のHACCP*4対応や、輸出増大が見込まれる漁港における高度な衛生管理体制の構築の取組を行うとともに、海外の規制・ニーズに対応した生産・流通体系への転換を通じた大規模な輸出産地形成の取組等を進めています。

令和4(2022)年10月には農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律*5が改正され、輸出重点品目についてオールジャパンによる輸出促進活動を行う体制を備えた農林水産物・食品輸出促進団体(以下「品目団体」といいます。)の認定制度や、株式会社日本政策金融公庫による貸付制度である農林水産物・食品輸出基盤強化資金が創設されました。このうち認定品目団体については、令和5(2023)年度末時点で、ぶり、たい、ホタテ貝等27品目15団体を認定しています。

農林水産省では「農林水産物・食品輸出本部」において、輸出を戦略的かつ効率的に促進するための基本方針や実行計画(工程表)を策定し、進捗管理を行うとともに、関係省庁が一丸となって、輸出先国に対する輸入規制等の緩和・撤廃に向けた協議、輸出証明書発行や施設認定等の輸出を円滑化するための環境整備、輸出に取り組む事業者の支援等を実施しています。

  1. 令和4(2022)年6月28日、「食料安定供給・農林水産業基盤強化本部」に改組。
  2. 牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、牛乳・乳製品、果樹(りんご)、果樹(ぶどう)、果樹(もも)、果樹(かんきつ)、果樹(かき・かき加工品)、野菜(いちご)、野菜(かんしょ等)、切り花、茶、コメ・パックご飯・米粉及び米粉製品、製材、合板、ぶり、たい、ホタテ貝、真珠、錦鯉、清涼飲料水、菓子、ソース混合調味料、味噌・醤油、清酒(日本酒)、ウイスキー、本格焼酎・泡盛。
  3. 正式名称:農林漁業法人等に対する投資の円滑化に関する特別措置法(平成14年法律第52号)
  4. Hazard Analysis and Critical Control Point:危害要因分析・重要管理点。原材料の受入れから最終製品に至るまでの工程ごとに、微生物による汚染や金属の混入等の食品の製造工程で発生するおそれのある危害要因をあらかじめ分析(HA)し、危害の防止につながる特に重要な工程を重要管理点(CCP)として継続的に監視・記録する工程管理システム。FAOと世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス)委員会がガイドラインを策定して各国にその採用を推奨している。
  5. 令和元年法律第57号
QRコード
農林水産物・食品輸出本部(輸出先国規制対策)(農林水産省):https://www.maff.go.jp/j/shokusan/hq/index-1.html
QRコード
農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略の進捗(農林水産省):https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/progress/

〈ALPS処理水海洋放出後の輸入規制に対し輸出先の転換対策を支援〉

令和5(2023)年8月のALPS処理水の海洋放出開始以降の中国、ロシア、香港及びマカオによる輸入規制強化を踏まえ、特定の国・地域への輸出の依存を分散するため、輸出先の多角化等を支援しています。

具体的には、JETROによる海外販路の開拓、海外見本市への出展等の取組等を支援しています。

第5章(3)を参照

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344