(6)陸上養殖をめぐる動向
〈陸上養殖業の届出制の導入〉
近年、多額の投資と高度な技術を用い、陸地において海面と同様の生育環境を整備した養殖場を設置して海水魚等を養殖する陸上養殖が営まれ始めており、異業種分野等からの新規参入も活発化しています。これらの新たな養殖方法を取り入れたものは、排水等に伴う周辺環境への影響等についての十分な知見が無く、持続的かつ健全に発展させていくため養殖場の所在地や養殖方法など当該陸上養殖の実態を把握する必要があることから、水産庁は、令和5(2023)年4月より、内水面漁業の振興に関する法律*1に基づき陸上養殖を届出養殖業としました*2。本制度に基づく届出件数は、令和6(2024)年1月1日時点で662件となっています。都道府県別では、沖縄県168件、大分県55件、鹿児島県35件の順に多く、九州地方に多い傾向がみられました。また、届出件数(延べ件数)の上位3種は、クビレヅタ(ウミブドウ)146件、ヒラメ132件、トラフグ99件でした。
- 平成26年法律第103号
- 対象となる陸上養殖業は、食用の水産物を、1)海水や淡水に塩分を加えた水等を使用して養殖しているもの、2)閉鎖循環式で養殖しているもの、3)餌や糞等を取り除かずに排水しているもの。

事例サーモンの陸上養殖の取組(株式会社FRDジャパン)
株式会社FRDジャパンは、千葉県木更津(きさらづ)市の陸上養殖施設でサーモントラウトの生産を行っています。
同社の施設では、先進的な取組として、バクテリアを利用した独自のろ過技術により水を浄化し繰り返し利用する閉鎖循環式と呼ばれるシステムを採用していることにより、換水が少なく水の冷却コストの削減が図られています。
平成30(2018)年から使用している現在の施設では、年間30t規模の生産に成功しており、1年間を通して安定した出荷を実現しています。
施設が消費地近郊にあることから、高鮮度な商品を低い輸送コストで流通させることができるメリットを活かし、令和3(2021)年からは関東圏のスーパーマーケットや飲食店で販売しています。
さらに、令和5(2023)年には、年間3,500t規模の生産が可能な商業プラントの建設工事に着手しました。同プラントでは令和8(2026)年からの生産開始を目指しています。
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