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水産庁

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(3)水産物の消費拡大、消費者への情報提供や知的財産保護のための取組

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ア 水産物の消費拡大に向けた取組

〈「さかなの日」の水産物の消費拡大に向けた取組を推進〉

四方を海に囲まれている我が国では、四季折々の多種多様な水産物に恵まれ、地域ごとに特色ある料理や加工品といった豊かな魚食文化が形成されてきました。また、我が国では、市場流通をはじめとする流通業の発達により、消費者は高鮮度な水産物が手に入る環境にあります。

しかしながら、我が国の水産物の消費量が長期的に減少傾向にあることから、水産物の消費拡大に向けた官民の取組を推進するため、水産庁では、令和4(2022)年10月から、毎月3~7日を「さかなの日」とし、11月3~7日は「いいさかなの日」として、水産物の消費拡大に向けた活動の強化週間と位置付けています。

水産資源は元来持続可能な資源であり、我が国では水産資源の管理の高度化に取り組んでおり、また養殖業においても持続可能な生産を推進しています。このため、このように適切に漁獲・生産された魚を選択して食べることは、持続可能な開発目標(SDGs)における持続可能な消費行動であるため、「さかな×サステナ」を「さかなの日」のコンセプトとしています。

令和7(2025)年3月末時点で、「さかなの日」の賛同メンバー数は1,011にのぼり、その業態は、小売、コンビニエンスストア、百貨店、食品メーカー、外食、水産関係(漁業者・卸・仲卸・鮮魚店等)、料理教室、メディア、地方公共団体、民間団体、個人等多岐にわたっています。各賛同メンバーは、例えば大手量販店による低・未利用魚や認証取得水産物の販売、コンビニエンスストアでの「さかなの日」のロゴを活用した魚総菜の販売、飲食店等による国産天然魚のフェアの開催、これまで価値がないとされてきた魚や加工段階で捨てられてきた部位のEC*1サイトによる商品化、食品メーカーによる魚介類に合う調味料の開発、水産卸売市場でのイベント等、水産物消費拡大に向けて、様々な取組を実施しています。

また、「さかなの日」アンバサダーであるさかなクンに魚や魚食の魅力に関する情報発信を行っていただいているほか、「ハロー!プロジェクト」所属のさかな好きメンバーからなる「さかなの日」応援隊に魚食に関する情報発信に取り組んでいただいています。さらに、令和6(2024)年11月には、さかなと海にまつわる名前を持つ国民的人気の家族であるサザエさん一家を「さかなの日」の応援団に任命し、さかなのおいしさや魅力、漁業者等による資源管理の取組等に関する情報発信に取り組んでいただいています。

  1. Electronic Commerce:電子商取引。
「さかなの日」アンバサダー さかなクン
「さかなの日」応援隊
「さかなの日」応援団 サザエさん一家
「さかなの日」のロゴ さかなクンが命名「いいなクン」

事例「さかなの日」賛同メンバー数が1,000に到達!

水産物の消費拡大に向けては、「さかなの日」の趣旨やコンセプトに賛同する企業・組織の協力のもと、官民連携で取組を進めていくことが重要であるため、賛同メンバーを募集しています。

令和7(2025)年2月には、「さかなの日」賛同メンバー数が1,000に到達しました。その業態は、小売、食品メーカー、外食、水産関係(漁業者・卸・仲卸・鮮魚店等)、地方公共団体に加え、メディアや調理器具メーカー等多岐にわたっています。

賛同メンバーによるフェアやイベントの開催など、様々な取組が行われているところですが、賛同メンバー間の情報共有と連携により、消費拡大の機運をより一層高めるため、令和6(2024)年度には2回目となる「さかなの日」賛同メンバー交流会を開催しました。

令和5(2023)年度の交流会をきっかけに、組織間連携につながった事例も生まれています。その一例としては、東京湾で漁業・水産物の販売を行う海光物産かいこうぶっさん株式会社と株式会社おやつカンパニーが連携し、コノシロを使ったスナック菓子の共同開発が実現しました。

コノシロは成長するにつれて呼び名が変わる魚として知られています。小型のときはシンコやコハダと呼ばれ、寿司ネタとして好まれていますが、成長してコノシロになると小骨の多さから敬遠され、そのおいしさが評価されず、食材としての認知度が下がってしまいます。そこで、コノシロを落とし身にし、小骨が気にならない食べやすいスナック菓子にすることで、利用度と認知度向上を目指しています。

今後も賛同メンバー間の連携による取組の拡大、商機拡大の機運向上が期待されます。

「さかなの日」賛同メンバー交流会の様子
コノシロ
QRコード
水産庁「さかなの日」Webサイト:/j/kakou/sakananohi1137.html
QRコード
消費者向け「さかなの日」Webサイト:https://sakananohi.jp/

〈消費者のニーズに合わせた商品提供や流通効率化の取組〉

水産物の消費拡大には、簡単においしく魚を調理する方法が知られていないこと、魚の調理自体が煩雑であること、下処理やごみ処理などの後処理に時間と手間がかかること等の課題がある中、近年、鮮度の良さや品揃えの多さ、消費者との対面販売により注文に応じて調理を行うことを売りにした特色ある売場づくりを目指す地域のスーパーマーケットや鮮魚店等が注目を浴びています。

水産庁は、調理の手間等の課題に対し、生産、加工、流通、販売の関係者が連携して行う簡便性に優れた商品や提供方法の開発、流通効率化の取組等のマーケットインの発想*1に基づく「売れるものづくり」に向けた取組を支援しています。

これらの取組により、消費者の潜在的な魚食のニーズを掘り起こし、水産物の消費拡大や多様な魚介類の価値向上につながることが期待されます。

  1. 消費者や顧客の要求、困りごとを突き止め、それらに応える商品やサービスを提供しようとする考え方(令和2(2020)年度水産白書)。

事例水産物も野菜も消費拡大「やさかなプロジェクト」

水産物同様、野菜の1人当たりの年間消費量も減少傾向にあります。水産物業界も野菜業界もどちらも消費者に「自分たちが手塩にかけて育てた生産物をもっと食べてもらいたい」という強い気持ちがあるものの、水産物も野菜も、調理の手間がかかることや、苦手な子どもがいる家庭では調理機会が減っていることなどが減少の原因になっていると考えられます。

そこで、静岡県おさかな普及協議会(事務局:静岡県漁業協同組合連合会)、静岡県、キューピー株式会社が連携し、調理が簡単で、水産物と野菜を一緒に食べてもらえるメニューの提案等を行う「やさかなプロジェクト」を開始しました。

現在、「やさかなプロジェクト」は「さかなの日」に合わせ、「やさかなメニュー」を静岡県内の量販店等の店頭で試食するイベントを開催して、水産物と野菜の販売促進をしたり、SNSを活用した情報発信、消費者との交流に取り組んでいます。

やさかなプロジェクトの概要
イベントでのメニュー提案、試食

〈学校給食等での食育の重要性〉

食の簡便化志向等が高まり、家庭において魚食に関する知識の習得や体験等の食育の機会を十分に確保することが難しくなっており、このことが、若年層における食用魚介類の摂取量が減少傾向にある一つの要因と考えられます。このため、若いうちから魚食習慣を身に付けるには、学校給食等を通じ、水産物に親しむ機会を作ることが重要です。

令和3(2021)年3月に策定された「第4次食育推進基本計画」においては、「学校給食における地場産物の活用は、地産地消の有効な手段であり、地場産物の消費による食料の輸送に伴う環境負荷の低減や地域の活性化は、持続可能な食の実現につながる」、「地域の関係者の協力の下、未来を担う子供たちが持続可能な食生活を実践することにもつながる」という考えに基づき、学校給食における地産地消の取組が推進されています。同計画では地場産物の使用割合を現状値(令和元(2019)年度)から維持・向上した都道府県の割合を令和7(2025)年度には90%以上とすることを目標としています。

一方、一定の予算の範囲内での安定的な提供やあらかじめ献立を決めておく必要がある学校給食における地場産水産物の利用には、その価格面の課題に加え、水揚げが不安定な中で規格の定まった一定の材料を決められた日に確実に提供できるかという供給面の課題、加工度の低い魚介類は調理に一定の設備や技術が必要になるという調理面の課題があります。

これらの課題を解決し、おいしい地場産水産物を給食で提供するためには、地域の水産関係者と学校給食関係者による連携が必要です。

近年では、児童に漁業への理解を深めてもらうとともに学校給食等による低・未利用魚の活用を図るため、漁業者が小学校に出向き、地元の漁業や魚に関する授業を行った後、児童と一緒に地場産の魚を使った給食を味わうといった取組も行われています。

事例次世代を育み、水産業を活性化する持続可能な「ぎょしょく」の構築

平成16(2004)年頃、愛媛県愛南町あいなんちょうの主要産業である漁業・養殖業は、魚価の低迷、餌や燃油代の高騰など厳しい状況にあり、また、子供の魚離れも問題となっていました。

このため、平成17(2005)年に、愛南町、漁協、漁業者及び教育行政機関で組織する愛南町ぎょしょく普及推進協議会が設立され、従来の「魚食」のみならず、魚の生産、流通、環境、文化まで、七つのぎょしょく「1)魚触、2)魚色、3)魚職、4)魚殖、5)魚飾、6)魚食、7)魚植」を学ぶ「ぎょしょく教育」に取り組み始めました。

近年、特に力を注いでいるのが、学校給食での愛南町産水産物の活用です。町内はもちろん、東京都をはじめ町外でも、出前授業とともに、愛南町の水産物を使った給食メニューを提供しています。生産地と消費地の交流により、都会の子供たちに愛南町の魚や水産業に対する理解が深まるとともに、給食食材としての販路拡大にもつながっています。

さらに、令和4(2022)年度からは、関東圏の小学校5年生の社会科の授業で出前授業を行う人材育成を目的とした、「ぎょしょく教育伝道師育成事業」を開始しました。3泊4日の現地研修で、自身の体験に基づく授業を実施するために、実際に漁船に乗船して獲る漁業を体験をしたり、マダイ養殖の餌やりや出荷作業等の育てる漁業を体験したりします。現地研修終了後には、関東圏の小学校でぎょしょく普及推進協議会からの派遣職員が立会して、獲る漁業と育てる漁業で各45分の授業を行い合否を判定します。認められた者のみが「伝道師」として活動することで、愛南産水産物の消費拡大や魚離れの抑制が図られます。

伝道師制度により、新しい人脈やネットワークの形成、潜在的な愛南ファンの獲得など、波及効果も期待されます。

ぎょしょく教育
伝道師による出前授業
学校給食のメニュー

イ 水産物の健康効果

〈オメガ3脂肪酸や魚肉たんぱく質等、水産物の摂取は健康に良い効果〉

水産物の摂取が健康に良い効果を与えることが、様々な研究から明らかになっています*1(図表1-13)。

1)DHA、IPA(EPA)

魚肉や鯨肉の脂質に多く含まれているn-3(オメガ3)系多価不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)やイコサペンタエン酸(IPA)*2は、他の食品にはほとんど含まれていない脂肪酸です。DHAは、胎児期の網膜等の発達に必要であるほか、加齢に伴い低下する認知機能の一部である記憶力、注意力、判断力や空間認識力を維持することが報告されており、広く胎児期から老年期に至るまでの脳、網膜や神経の発達・機能維持に重要な役割があることが分かっています。また、双方とも血小板凝集抑制作用があることや抗炎症作用、血圧降下作用のほか、血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪を減らす機能があることが分かっており、脂質異常症、心筋梗塞、その他生活習慣病の予防・改善が期待され、医薬品にも活用されています。

2)たんぱく質

魚肉たんぱく質は、畜肉類のたんぱく質と並び、人間が生きていく上で必要な9種類の必須アミノ酸をバランス良く含む良質なたんぱく質であるだけでなく、大豆たんぱく質や乳たんぱく質と比べて消化されやすく、体内に取り込まれやすいという特徴もあり、「フィッシュプロテイン」という名称で注目されています。また、離乳食で最初に摂取することが勧められている動物性たんぱく質は白身魚とされているほか、血圧上昇を抑える作用等の健康維持の機能を有している可能性も示唆されています。

3)アミノ酸(タウリン)

貝類(カキ、アサリ等)やイカ、タコ等に多く含まれるタウリンは、肝機能の強化や視力の回復に効果があること等が示されています。

4)カルシウム、ビタミンD

カルシウムについては、不足すると骨粗鬆症こつそしょうしょう、高血圧、動脈硬化等を招くことが報告されています。また、ビタミンDは、カルシウムの吸収を促進することが報告されており、水産物では、サケ・マス類やイワシ類等に多く含まれています。

5)鉄

鉄は、ヘモグロビンや各種酵素を構成し、その欠乏は貧血や運動機能、認知機能等の低下を招きます。水産物では、イワシ、カツオ、マグロ、貝類、海藻類等に多く含まれています。

6)食物繊維(アルギン酸、フコイダン等)

食物繊維は、便通を整える作用のほか、脂質や糖質等の排出作用により、生活習慣病の予防・改善にも効果が期待されています。また、腸内細菌のうち、ビフィズス菌や乳酸菌等の善玉菌の割合を増やし、腸内環境を良好に整える作用も知られています。さらに、善玉菌を構成する物質には、体の免疫機能を高め、血清コレステロールを低下させる効果も報告されています。海藻類には、ビタミンやミネラルに加え、食物繊維が含まれています。モズクやヒジキ、ワカメ、コンブ等の褐藻類に含まれるアルギン酸やフコイダン等をはじめとする海藻類の食物繊維は一般的に水溶性です。

このように、水産物は優れた栄養特性と機能性を持つ食品であり、様々な魚介類や海藻類をバランス良く摂取することにより、健康の維持・増進が期待されます。

  1. 島一雄・關文威・前田昌調・木村伸吾・佐伯宏樹・桜本和美・末永芳美・長野章・森永勤・八木信行・山中英明編『最新 水産ハンドブック』(2012)、鈴木平光・和田俊・三浦理代編『水産食品栄養学-基礎からヒトへ-』(2004)等を参考に、水産庁において記述した。
  2. エイコサペンタエン酸(EPA)ともいう。

図表1-13 水産物に含まれる主な機能性成分

図表1-13 水産物に含まれる主な機能性成分

図表1-14 主な食品の100g当たりのたんぱく質・脂質含有量

図表1-14 主な食品の100g当たりのたんぱく質・脂質含有量

ウ 水産物に関する食品表示

〈輸入品以外の全加工食品について、上位1位の原材料の原産地が表示義務の対象〉

消費者が店頭で食品を選択する際、安全・安心、品質等の判断材料の一つとなるのが、食品の名称、原産地、原材料、消費期限等の情報を提供する食品表示であり、水産物を含む食品の表示は食品表示法*1の下で包括的・一元的に行われています。

食品表示のうち、加工食品の原料原産地表示については、輸入品以外の全ての加工食品について、製品に占める重量割合上位1位の原材料が原料原産地表示の対象となっています*2

また、水産物の原産地表示については、1)国産品にあっては水域名又は地域名(主たる養殖場が属する都道府県名)、2)輸入品にあっては原産国名、3)2か所以上の養殖場で養殖した場合は主たる養殖場(最も養殖期間の長い場所)が属する都道府県名*3となっており、出荷調整用その他の目的のため貝類を短期間一定の場所に保存する「蓄養」は養殖期間の算定に含まれないこととなっています*4

  1. 平成25年法律第70号
  2. おにぎりのノリについては、重量割合としては低いものの表示義務の対象。
  3. サケ・マス類やブリ類等、養殖を行った2か所の養殖場のうち、第2段階の育成期間が短いものの、重量の増加が大きい場合には、当該養殖場における育成により水産物の品質が決定されることから、重量の増加が大きい養殖場が属する都道府県が原産地となる(第1段階は種苗の育成期間であり養殖期間には含まれないものと考える。)。
  4. 輸入したアサリの原産地は蓄養の有無にかかわらず輸出国となるが、例外として、輸入した稚貝のアサリを区画漁業権に基づき1年半以上育成(養殖)し、育成等に関する根拠書類を保存している場合には、国内の育成地を原産地として表示することができる。

エ 機能性表示食品制度の動き

〈機能性表示食品として、8件の生鮮食品の水産物の届出が公表〉

機能性を表示することができる食品には、国が個別に許可した特定保健用食品(トクホ)と国の規格基準に適合した栄養機能食品のほか、機能性表示食品があります。

機能性表示食品は、食品表示法に基づく食品表示基準に規定されているものであり、安全性及び機能性に関する一定の科学的根拠に基づき、事業者の責任において、機能性関与成分によって健康の維持及び増進に資する特定の保健の目的が期待できる旨を表示することができる食品です。同制度では、生鮮食品を含む全ての食品*1が対象となっており、令和7(2025)年3月末時点で、生鮮食品の水産物としては、ブリ1件(「うみのファームぶり」)、カンパチ1件(「よかとと 薩摩カンパチどん」)、イワシ2件(「大トロいわしフィレ」及び「大阪産マイワシ」)、マダイ1件(「伊勢黒潮まだい」)、サーモン1件(「薬膳サーモン」)及びクジラ2件(「凍温熟成鯨赤肉」及び「鯨本皮」)の8件*2の届出が消費者庁ウェブサイトで公表されています。

機能性表示食品については、一部の製品による健康被害の発生を受け、当該事案を踏まえた今後の対応等が議論され、令和6(2024)年9月*3から、健康被害と疑われる情報の提供を届出者に義務付けることや、新規の機能性関与成分等の届出に際し安全性や機能性について専門家の意見を聴く仕組みを導入すること等、信頼性を高めるための措置が導入されました。

  1. 特別用途食品、栄養機能食品、アルコールを含有する食品(アルコールを人体に摂取するためのものに限る。)、並びに脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、糖類(単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないものに限る。)及びナトリウムの過剰な摂取につながるものを除く。
  2. 届出後に、販売終了等により撤回届出があったものは含まない。
  3. 新規の機能性関与成分の届出に際し安全性や機能性について専門家の意見を聴く仕組みの導入は、令和7(2025)年4月に施行。

オ 水産エコラベルの動き

〈水産エコラベルの認証・活用の推進〉

水産エコラベルは、水産資源の持続性や環境に配慮した方法で生産された水産物に対して、消費者が選択的に購入できるよう商品にラベルを表示する仕組みです。我が国では、一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会による漁業と養殖業を対象とした「MEL」(Marine Eco-Label Japan)、英国に本部を置く海洋管理協議会による漁業を対象とした「MSC」(Marine Stewardship Council)、オランダに本部を置く水産養殖管理協議会による養殖業を対象とした「ASC」(Aquaculture Stewardship Council)等の水産エコラベル認証が主に活用されています(図表1-15)。

図表1-15 我が国で主に活用されている水産エコラベル認証

図表1-15 我が国で主に活用されている水産エコラベル認証

水産エコラベルは、国際連合食糧農業機関(FAO)水産委員会が採択した水産エコラベルガイドラインに沿った取組に対する認証を指すものとされています。しかし、世界には様々な水産エコラベルがあることから、水産エコラベルの信頼性確保と普及改善を図るために設立された「世界水産物持続可能性イニシアチブ(GSSI:Global Sustainable Seafood Initiative)」から承認を受けることが、国際的な水産エコラベル認証スキームとして通用するための潮流となっています。世界全体では、令和6(2024)年度末時点で、MSC、ASC、MEL等7種類の水産エコラベル認証スキームがGSSIの承認を受けています*1。我が国の漁業・養殖業の国内生産量に占める水産エコラベルが認証された生産量の割合は、MSCにおいて漁業生産量の16%、ASCで養殖業生産量の1.6%、MELで漁業・養殖業生産量の12%と推計されています*2。水産庁では、引き続き水産エコラベルの認証取得の促進や水産エコラベルの認知度向上のための周知活動を推進していくこととしています。

  1. ASCは、サーモン、エビのみがGSSI承認の対象。
  2. MSCは令和5(2023)年の我が国の漁業生産量(概数)に対する令和5(2023)年のMSC取得の漁業生産量推計値の割合、ASCは令和5(2023)年の我が国の養殖生産量(概数)に対する令和5(2023)年のASC取得の養殖生産量の割合、MELは令和5(2023)年の我が国の漁業・養殖業生産量(概数)に対する令和5(2023)年のMEL取得の漁業・養殖業生産量推計値の割合。
QRコード
水産エコラベルの推進について(水産庁):/j/kikaku/budget/suishin.html

カ 地理的表示保護制度

〈これまでに計19産品の水産物が地理的表示に登録〉

地理的表示(GI)保護制度は、その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を地域の知的財産として保護する制度です。この制度により、生産者にとっては、模倣品排除とともに、産品の持つ品質、製法、評判、ものがたり等の潜在的な魅力や強みを見える化し、GIマーク*1と相まって、効果的・効率的なアピール、取引における説明や証明、需要者の信頼の獲得を容易にするツールとして活用することができます。また、消費者にとっても、真正のGI産品を容易に選択できるという利点があります。

さらには、我が国のGI産品の保護のため、国際約束による諸外国とのGIの相互保護に向けた取組、GIに対する侵害対策等、海外における知的財産侵害対策の強化を図ることで、農林水産物・食品等の更なる輸出促進も期待されます。

GI産品登録状況については、令和6(2024)年度に新たに「枕崎鰹節」及び「指宿鰹節」の計2産品の水産加工品が登録され、同年度末現在で水産加工品を含む水産物の登録は計19産品となりました。また、日EU経済連携協定*2により、我が国がGI産品として登録した12産品の水産物がEUで保護されているほか、日英包括的経済連携協定*3により、10産品の水産物が英国で保護されています。さらに、海外に輸出する品目については、海外でのGI登録も推奨しており、例えばベトナムにおいて、「みやぎサーモン」が登録されています。

  1. 登録された産品の地理的表示と併せて付すことができるもので、産品の確立した特性と地域との結び付きが見られる真正な地理的表示産品であることを証するもの。
  2. 正式名称:経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定
  3. 正式名称:包括的な経済上の連携に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定
第168号 枕崎鰹節
第169号 指宿鰹節
QRコード
地理的表示(GI)保護制度(農林水産省):https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344