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水産庁

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(3)漁業の就業者をめぐる動向

目標5
目標8

ア 漁業就業者の動向

〈漁業就業者数は12万1,389人〉

我が国の漁業就業者数は一貫して減少傾向にあり、令和5(2023)年の我が国の漁業就業者数は、前年から1.4%減少し、12万1,389人となっています(図表2-19)。漁業就業者全体に占める割合を見ると、65歳以上と39歳以下で、それぞれ増加傾向となっています。

漁業就業者数の総数が減少する中で、近年の新規漁業就業者数はおおむね2千人程度で推移していましたが、令和5(2023)年度は1,733人となり、前年度の1,691人から2.5%増加しました(図表2-20)。新規漁業就業者数のうち、39歳以下の割合は約7割で推移し若い世代の参入が多く占める傾向が続いています。

新規漁業就業者数について就業形態別に見ると、雇用就業者数は令和5(2023)年度が1,150人であり、前年度の965人に比べ19%増加しました。他方、独立・自営を目指す新規就業者は令和5(2023)年度が576人であり、前年度の718人に比べ20%減少しました。

図表2-19 漁業就業者数の推移

図表2-19 漁業就業者数の推移

図表2-20 新規漁業就業者数の推移

図表2-20 新規漁業就業者数の推移

イ 新規漁業就業者の確保に向けた取組

〈新規就業者の段階に応じた支援を実施〉

我が国の漁業経営体の大宗を占めるのは、家族を中心に漁業を営む漁家であり、このような漁家の後継者の主体となってきたのは漁家で生まれ育った子弟です。しかしながら、近年、収入に対する不安、生活や仕事に対する価値観の多様化により、漁家の子弟が必ずしも漁業に就業するとは限らなくなっています。他方、新規漁業就業者のうち、他の産業から新たに漁業就業する人はおおむね7割*1を占めており、就業先・転職先として漁業に関心を持つ都市出身者も少なくありません。こうした潜在的な就業希望者を後継者不足に悩む漁業経営体や地域とつなぎ、意欲のある漁業者を確保し担い手として育成していくことは、水産物の安定供給のみならず、水産業・漁村の多面的機能の発揮や地域の活性化の観点からも重要です。

このような状況を踏まえ、水産庁では、漁業経験ゼロからでも漁業に就業・定着できるよう、全国各地での漁業就業相談会の開催やインターンシップの受入れを支援するとともに、漁業学校*2で学ぶ者に対する資金の交付、漁業就業後の漁業現場でのOJT*3方式での長期研修を支援するなど、新規就業者の段階に応じた支援を行っています(図表2-21)。さらに、国の支援に加えて、地方公共団体においても地域の実情に応じた各種支援が行われるなど、新規漁業就業者の確保に向けた取組が進められています。

  1. 都道府県が実施している新規漁業就業者に関する調査から水産庁で推計。
  2. 学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づかない教育機関であり、漁業に特化したカリキュラムを組み、水産高校や水産系大学よりも短期間で即戦力となる漁業者を育成する学校。
  3. On-the-Job Training:日常の業務を通じて必要な知識・技能を身に付けさせ、生産技術について学ばせる職業訓練。
QRコード
漁業就労の情報提供ウェブサイト「漁師.jp」(一般社団法人全国漁業就業者確保育成センター):https://ryoushi.jp/

図表2-21 国内人材確保及び海技資格取得に関する国の支援事業

図表2-21 国内人材確保及び海技資格取得に関する国の支援事業

〈水産高校生に対する漁業就業への働きかけ〉

漁業就業者の減少と高齢化が進行する中、他産業並みに年齢バランスの取れた活力ある漁業就業構造への転換を図るため、若者に漁業就業の魅力を伝え、就業に結び付けることが重要です。特に、漁船漁業の乗組員不足に対応するため、水産高校生を対象とした「漁業ガイダンス」を実施し、漁業者が水産高校に出向き、少人数のブース形式で生徒に対して漁業とその魅力等を説明しています。漁業ガイダンス開始以降、令和5(2023)年度までの7年間で、延べ127回、4,154人の生徒が参加しています(図表2-22)。

図表2-22 漁業ガイダンスの概要と開催実績

図表2-22 漁業ガイダンスの概要と開催実績
漁業ガイダンスの様子1
漁業ガイダンスの様子2

事例漁業ガイダンス~漁師の仕事!船と漁業を知る授業@焼津~(静岡県)

令和6(2024)年6月1日、焼津やいづ市で漁業ガイダンス「漁師の仕事!船と漁業を知る授業」が開催されました。

漁業ガイダンスは通常、水産高校の生徒に向けて講義形式で行われますが、今回は焼津水産高校からの要望もあり、同校だけでなく全国の水産高校の生徒たちに漁業への関心を高めてもらうため、実際の遠洋漁船の見学も合わせて企画されました。また、全国的に水産高校の入学者数が減少している現状を踏まえ、全国の中学生からも参加者を募り、水産高校の魅力を伝えることも目的としました。

当日は全国の水産高校生・中学生、保護者、先生合わせて119人が参加し、焼津港にて、海外まき網漁船と遠洋まぐろはえ縄漁船の船内を見学しました。その後のガイダンスでは、海外まき網漁業、遠洋かつお一本釣り漁業、遠洋まぐろはえ縄漁業、近海かつお一本釣り漁業、遠洋トロール漁業など12社からそれぞれの漁業に関する説明がありました。

今回の取組により、参加した生徒からは、実際に大型漁船の中で、高校を卒業してからまだ数年の年齢の近い乗組員から話を聞くことで、水産高校や漁業に対するイメージが大きく変わったという声が多数聞かれました。また、中学2年生の男子生徒からは「魚に興味があったけど、今日漁船に乗るまで漁師には全く興味がなかった。でも漁船に乗ったことで絶対に水産高校に入学し漁師になると決めました。そのために一生懸命勉強します。」という感想があがるなど、参加者に大きなインパクトを与えました。

また、参加した保護者にとって地域の基幹産業の魅力を肌で感じる機会となったほか、水産高校の先生からは、今回初めて漁業ガイダンスに参加したことで、自校でも漁業ガイダンスを行うことが有益と感じたという声もありました。この取組を他の地域でも展開し、水産高校の活性化と漁業の後継者確保育成に繋げていくことが期待されます。

焼津で行われた漁業ガイダンスの様子
焼津での漁業ガイダンスの参加者

事例水産高校における先進的な取組(新潟県)

新潟県糸魚川いといがわ市に所在する新潟県立海洋高等学校は、明治31(1898)年に地元の尋常高等小学校で「水産」授業が開始されたことをきっかけに、現在に至るまで水産・海洋教育の拠点として役割を果たしています。また、同校は、今年度で29年目となるヒラメの種苗生産をはじめ、高大連携ではアカムツの種苗生産の技術開発にも着手するなど、新たなことに挑戦し、持続可能な漁業の推進に向け日々取り組んでいます。

近年、全国的にブランド養殖魚の開発が盛んに行われていることから、同校の資源科資源育成コースは、地域の特産物にできる独自性を持つブランド養殖魚を開発するため、地元のワイナリーで発生するブドウの「絞り粕」に着目し、付加価値の高い養殖ヒラメの飼料への活用を試みました。養殖ヒラメの飼料にブドウの絞り粕を利用するのは全国でも初めての試みです。

同校は、ブドウの絞り粕を自校で養殖しているヒラメの飼料と混ぜてブドウ粕飼料を作り、ブドウ粕飼料を与えて養殖したヒラメ(以下「ワインヒラメ」といいます。)と与えないヒラメで分けて実験しました。実験の結果、ブドウ粕飼料を与えた方がヒラメの食い付きはよく、与えていないヒラメと比べ体重の増加が大きいほか、水槽内もワインヒラメの方は汚れがほとんどみられないなど水質環境の違いが判明しました。また、ワインヒラメの肉質は、ブドウ粕飼料を与えていないヒラメと比べ表面の血合いが鮮やかな赤ワイン色となっているなどの違いがあったほか、連携先である国立大学法人長岡技術科学大学及び新潟県農業総合研究所食品研究センターの協力を得て、魚肉の成分分析や鮮度測定を行ったところ、ポリフェノールの量やアミノ酸の量、鮮度を示す硬度はブドウ粕飼料を与えていないヒラメと比べ上回っていたことが判明しました。くわえて、お造りの試食時に実施したアンケートの結果から、色調、におい、味、食感等で高評価を得られたこともあり、令和6(2024)年1月及び2月に地元の料理店へ出荷の運びとなりました。

本取組の成果は、社会貢献への期待と、地域への影響力を持つ内容であったという点が評価され、令和6(2024)年12月、第33回全国水産・海洋高等学校生徒研究発表大会にて最優秀賞を受賞しました。

また、同校は、ブドウ粕飼料について特許を出願し、研究成果を国際学術誌へ投稿しています。今後、ブドウ粕飼料は国内だけではなく、海外でも使用が予定されており、更なる展開が見込まれています。

生徒によるブドウの絞り粕の袋詰めの様子
ブドウ粕飼料

ウ 漁業における海技士の確保・育成

〈漁業における海技士の不足等に対し早期の資格取得の取組を支援〉

20トン以上の船舶で漁業を営む場合は、漁船の航行の安全性を確保するため、それぞれの漁船の総トン数等に応じて、船長、機関長、通信長等として乗り組むために必要な海技資格の種別や人数が定められています。

海技資格を取得するためには国土交通大臣が行う海技士国家試験に合格する必要がありますが、航海期間が長期にわたる遠洋漁業においては、乗組員がより上級の海技資格を取得する機会を得にくいという実態があります。また、就業に対する意識や進路等が多様化する中で、水産高校等の卒業生が必ずしも漁業に就業するわけではなく、これまで地縁や血縁等による採用が主であったこととあいまって、漁業における海技士の高齢化と不足が深刻化しています。

海技士の確保と育成は我が国の沖合・遠洋漁業の喫緊の課題であることから、関係団体等では、必要な人材を確保できないために操業を見合わせざるを得ないことがないよう、漁業就業相談会や水産高校等への積極的な働きかけを通じて乗組員を募るとともに、乗船時における海技資格の取得を目指した計画的研修の取組や免許取得費用の助成を行っています。

また、政府は、水産高校卒業生を対象とした4級及び5級海技士養成のための履修コースを水産大学校に設置し、海技士試験の受験に必要な乗船履歴を早期に取得できる取組を行っており、これにより、水産高校卒業生の早期の海技資格の取得を支援しています。

エ 女性の活躍の推進

〈漁業・漁村における女性の一層の活躍を推進〉

女性の活躍の推進は、漁業・漁村の課題の一つです。海上での長時間にわたる肉体労働が大きな部分を占める漁業においては、就業者に占める女性の割合は約10%となっていますが、漁獲物の仕分けや選別、カキの殻むきといった水揚げ後の陸上作業では約34%、漁獲物の主要な需要先である水産加工業では約58%を占めており、女性がより大きな役割を果たしています。このように、漁業・養殖業では男性による海上での活動がクローズアップされがちですが、女性の力は水産業に必要不可欠な存在となっています。

一方、女性が漁業経営や漁村において重要な意思決定に参画する機会は、未だ限定的です。例えば、令和5(2023)年の全国の漁協における正組合員に占める女性の割合は5%となっています。また、漁協の女性役員は、全体の0.4%にとどまっています(図表2-23)。

図表2-23 漁協の正組合員及び役員に占める女性の割合

図表2-23 漁協の正組合員及び役員に占める女性の割合

令和2(2020)年12月に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~」においては、農山漁村における地域の意思決定過程への女性の参画の拡大を図ることや、漁村の女性グループが行う起業的な取組等を支援すること等によって女性の経済的地位の向上を図ること等が盛り込まれているほか、水産業協同組合法*1において、漁協は、理事の年齢及び性別に著しい偏りが生じないように配慮しなければならないとされています。

漁業・漁村において女性の一層の活躍を推進するためには、固定的な性別役割分担意識を変革し、家庭内労働を男女が分担していくことや、漁業者の家族以外でも広く漁村で働く女性の活躍の場を増やすこと、更には、保育所の充実等により女性の社会生活と家庭生活を両立するための支援を充実させていくことが重要です。このため、水産庁では、水産物を用いた特産品の開発、消費拡大を目指すイベントの開催、直売所や食堂の経営等、漁村コミュニティにおける女性の様々な活動を推進するとともに、子供待機室や調理実習室等、女性の活動を支援する拠点となる施設の整備を支援しています。

また、平成30(2018)年から活動している「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」は、水産業に従事する女性の知恵と多様な企業等の技術、ノウハウを結び付け、新たな価値を生み出し、情報を社会に広く発信することで水産業に携わる女性の存在感と水産業の魅力を向上させるとともに、女性にとって働きやすい水産業の現場改革を後押しすることを目指しています。これまでも、同プロジェクトのメンバーによる講演や企業等と連携したイベントへの参加等の活動が行われています。このような様々な活動や情報発信を通じ、女性にとって働きやすい水産業の現場改革及び女性の仕事選びの対象としての水産業の魅力向上につながることが期待されます。

  1. 昭和23年法律第242号

事例海の宝!水産女子の元気プロジェクトの活動紹介

「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」では、水産庁が事務局となり、全国にいる水産に関わる多様な業種・幅広い年齢層の女性130名、また本活動に賛同する企業12社が、本プロジェクトに参加しています(令和7(2025)年3月末時点)。

全国のメンバーとの交流を通して、水産業界における女性の繋がりを強化すること・講演活動やイベントへの参加で、女性も活躍できる水産業界について伝えること・協賛企業との連携により女性目線での商品等を創ること、により「水産業」全体の魅力向上に努めています。

令和6(2024)年8月に第28回ジャパンインターナショナルシーフードショーにて、水産女子セミナーを開催しました。4名のメンバーが登壇し、水産業界の各分野で自身や周囲の女性が活躍するためのヒントについて講演を行いました。

登壇したメンバーは「水産業界でより一層女性が活躍するためには、トイレ等のインフラや育児休業等の労務制度を整えることや、一人一人に合った日々の居場所や困ったときの相談相手を確保することなど、過ごしやすい環境を作っていくことが必要。」、「女性活躍だけではなくどのように多様性を受け入れていくのかが重要。」と話しました。同じく、令和6(2024)年8月に、こども霞が関見学デーにおいてパネル展示や、農林水産省内の食堂とのコラボ企画としてメンバーによって水揚げされたメヒカリを使用した限定メニューの販売、メンバーが仕入れたマダイの解体ショーを実施しました。

また、令和7(2025)年2月には、第8回水産女子プロジェクト推進会議を行い、プロジェクトのメンバーのほか、参画企業の方々や農林水産大臣政務官も参加しました。本会議ではメンバー4、5人で構成されたグループの活動報告を行ったほか、グループワークや意見交換を行い、新たな課題の発見や今後の活動目標の設定等に取り組みました。

今後もこれらの活動を続けていくことにより、自らの意欲と能力を発揮して前向きに取り組む女性を応援していきます。

第28回ジャパンインターナショナルシーフードショー
第8回水産女子プロジェクト推進会議
QRコード
「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」について(水産庁):/j/kenkyu/suisanjoshi/181213.html

オ 外国人労働をめぐる動向

〈漁業等における特定技能外国人の受入れ及び外国人技能実習制度の見直し〉

少子高齢化による国内労働人口の減少により国内人材を確保することが困難となっている状況に対応するため、一定の専門性・技能を有した即戦力となる外国人を雇用できる特定技能制度が設けられており、漁業分野(漁業、養殖業)及び飲食料品製造業分野(水産加工業を含む。)においても、一定の基準*1を満たした外国人の受入れが行われています。令和6(2024)年12月末時点で、漁業分野の特定技能1号在留外国人数は漁業で2,127人、養殖業で1,361人、また、特定技能2号在留外国人数は漁業で2人となっています。受入れに当たっては、外国人と共生していくための環境整備が重要であり、漁業活動やコミュニティ活動の核となっている漁協等が、受入れ外国人との円滑な共生において適切な役割を果たすことが期待されることから、国においても必要な支援を行っています。

なお、特定技能制度においては、制度の適切な運用に資する取組について協議を行うことを目的に、所管省庁や関係省庁、業界団体等からなる特定技能協議会等が対象分野の全てに設けられており、特定技能外国人材を雇用する企業等は、すべからく該当する協議会等への加入が義務付けられています。

外国人技能実習制度のうち、水産業については、漁船漁業職種で9作業、養殖業職種で1作業*2、加熱性・非加熱性水産加工食品製造業職種及び水産練り製品製造職種で合わせて10作業*3において、技能実習が実施されています。漁船漁業・養殖業については、技能実習生の数や監理団体による監査の実施に関して固有の基準を定めるとともに、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律*4に基づいて水産庁に設置された漁業技能実習事業協議会では、監理団体と労働組合の合意の下で技能実習生の待遇を決めるなど、技能実習の適正な実施や技能実習生の保護に努めています。技能実習生は、現場での作業を通じて技能等を身に付け、開発途上地域等の経済発展を担っていくことが期待されます。

なお、外国人技能実習制度については、令和6(2024)年6月に「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律*5」が公布され、外国人技能実習制度に代わり育成就労制度が創設されることとなりました。現在、本制度の実施に向け、水産業における受入れや運用のあり方について検討が行われているところです。

また、遠洋漁業においては、従事する我が国漁船の多くが主に海外の港等で漁獲物の水揚げや転載、燃料や食料等の補給、乗組員の交代等を行いながら操業しており、航海日数が1年以上に及ぶこともあります。このような遠洋漁業においては、日本人乗組員の確保・育成に努めつつ、一定の条件を満たした漁船に外国人が乗組員として乗り組むことがマルシップ方式*6として認められており、令和6(2024)年12月末時点で、3,565人の外国人乗組員が同方式を活用し我が国漁船に乗り組んでいます。

  1. 各分野の技能試験及び日本語試験への合格、又は各分野と関連のある職種において技能実習2号を良好に修了していること等。
  2. かつお一本釣り漁業、延縄漁業、いか釣り漁業、まき網漁業、ひき網漁業、刺し網漁業、定置網漁業、かに・えびかご漁業、棒受網漁業及びほたてがい・まがき養殖作業。
  3. 節類製造、加熱乾製品製造、調味加工品製造、くん製品製造、塩蔵品製造、乾製品製造、発酵食品製造、調理加工品製造、生食用加工品製造及びかまぼこ製品製造作業。
  4. 平成28年法律第89号
  5. 令和6年法律第60号
  6. 我が国の漁業会社が漁船を外国法人に貸し出し、外国人乗組員を配乗させた上で、これを定期用船する方式。

コラム漁業分野の2号特定技能外国人について

特定技能制度には、通算在留期間に上限のある特定技能1号と、通算在留期間に上限がなく、家族の帯同も認められる特定技能2号があります。特定技能制度の創設当時は、建設と造船・舶用工業の2分野のみが特定技能2号の対象となっていましたが、その後、特定技能外国人材の活用が進んだことを受け、令和5(2023)年6月には、漁業分野を含む9分野にも、新たに特定技能2号が追加されました。

漁業分野における特定技能2号は、漁業の熟練した技能を有する人材と位置付けられており、特定技能1号が従事する作業に加え、漁労長等の補佐をしつつ他の作業員に対する指導者的な業務や作業工程の管理などにも従事することができるとされていることから、より深刻化する人手不足への対応策として、大いに期待されるところです。

特定技能2号の在留資格で一定期間在留した場合には、永住者としての在留資格を申請することが可能となり、永住者となった場合は、外国人であっても、漁業許可を取得することができることから、日本人と同様に主体的に漁業を行うことができるようになります。

なお、永住者になると漁労行為に限られていた就労制限がなくなることから、漁業以外の職業への転職も可能となります。また、今までの経験を生かして漁業関連企業の役員や漁協の理事等の要職に就くことで、企業や地域社会の中核を担う立場になることも想定されます。

このように、特定技能2号は単なる人手不足への対応策として捉えるばかりではなく、将来的には、地域において優秀な漁業人材として末永く活躍が期待される外国人材であることを十分理解したうえで活用することが重要であり、そういった将来性を見越してキャリアアップできる環境を、地域で整えることが必要です。

カ 水福連携の推進

〈水福連携の事例収集や普及・啓発を推進〉

「水福連携」とは、水産業と福祉が連携し、障害者等の水産分野での活躍を通じて水産業経営の発展とともに、障害者等の自信や生きがいを創出し社会参画を実現する取組です。

担い手の不足や高齢化等が進む水産分野においては、水福連携に取り組むことにより、新たな労働力の確保につながることが期待される一方、障害者等にとっては水産業を通じた働く場や収入の確保に加え、地域との交流の促進等生活の質の向上が期待されます。

水産業については、養殖業や水産加工業を主体に取組が行われており、養殖業においてはカキの養殖に使用する資材(ホタテ殻)の穴開け作業やカキの洗浄作業、水産加工業においては魚の加工作業や製品の包装作業等で連携の取組が行われています。

一般社団法人日本農福連携協会が令和5(2023)年度に実施した水福連携に取り組んでいる事業者に対する実態調査では、「今後、水福連携の取組をどうしようと考えていますか」という質問に対して、「現状を維持したい」が67.6%、次いで「拡大したい」が30.6%を占めており、水福連携に関して肯定的に捉えている事業体が多いことが伺えます(図表2-24)。

しかし、水福連携に取り組むためには、通年での仕事の創出、障害者等の適性に応じた作業の創出、障害の特性等に応じた効果的な指導ができる人材の育成・確保といった課題も挙げられています。

水産庁では、今後とも、関係機関と連携しつつ、水福連携の事例収集や普及・啓発を推進していきます。

図表2-24 水福連携に取り組む事業体の意識や課題

図表2-24 水福連携に取り組む事業体の意識や課題

事例水福連携の取組事例(三重県)

三重県では、平成25(2013)、26(2014)年度に若手職員を中心に全国的にもほとんど事例がない水福連携の実現の可能性について検討が行われ、その後の先進地視察や福祉部局との意見交換を経て、平成27(2015)年度から水福連携の事業が開始されました。

同事業においては、漁業や漁業参入に関する知識向上を目的とした研修会の開催、水福連携に取り組む専門人材の育成、水福連携の取組創出や漁業参入支援などが行われ、平成27(2015)~令和5(2023)年度までにカキ養殖の種苗採取に用いるコレクターの作製作業やカキ養殖用ロープの釘抜き作業、鮮魚加工作業など県内で59件の取組が実施されています。カキ養殖用ロープの釘抜き作業は、これまで廃棄していた漁業資材を再利用する取組であり、SDGsの観点や資材費高騰に伴う需要が増加、コロナ禍による外国人材の受入数の減少等の影響を受け、令和5(2023)年度には障害者就労施設における作業量が平成28(2016)年度比で45倍に増加し工賃単価も上昇しました。漁業者は漁業経費の削減、障害者は工賃向上と双方にメリットがあることから持続的な取組となっており、令和5(2023)年度末時点で鳥羽とば市や志摩しま市をはじめ県内12か所の障害者就労施設で実施されています。

カキ養殖用ロープの釘抜き・打ち作業
カキ天然種苗用コレクター作製作業 写真提供:三重県

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344