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水産庁

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(2)加工・流通・消費に向けた取組

〈新たに獲れるようになった魚種の付加価値向上に向けた加工・流通・消費拡大の取組〉

海水温の上昇により、高水温を好む魚種が北方へ拡大する等の現象が見られる中、各地では不漁となった魚種に替わり、新たに獲れるようになった魚種の加工、流通の改善等付加価値の向上に向けた取組が行われています。

また、これらの魚種を食べる習慣のない地元の消費者に向け、消費を喚起する取組も行われています。

事例ブリの消費拡大に向けた取組(北海道)

海水温の上昇により、高水温を好むブリの分布域が北上し、北海道では平成23(2011)年頃から漁獲量が増加しています。しかしながら、道内ではブリを食べる文化がなく認知度や消費が少ないこと、魚体が小さく脂が少ないことなどから魚価は全国平均を大きく下回っていました。また、スルメイカ等の不漁が継続し加工原料が不足する中、新たな魚種の活用が課題とされています。このような中、道内のブリの水揚量の過半を占める渡島おしま地方を中心にブリの消費拡大の取組が行われています。

北海道渡島総合振興局では、平成30(2018)年に行政、漁業者団体、水産加工業者の団体で構成される「はこだて・ブリ消費拡大推進協議会」を設立しました。同協議会では、ブリの認知度の向上や食材の魅力を伝えるため、ブリ料理コンテストやブリをテーマとした料理教室を開催しています。また、令和2(2020)年に開発した「北海道ブリたれカツ」が好評を博し、函館はこだて市内の飲食店や学校給食で提供されています。また、飲食店や小売店等と連携して「ブリフェア」を開催し、ブリの消費拡大を促進しています。さらに、加工においては、函館水産高校の生徒のアイデアを基に道南産ブリをミートソース風にアレンジした缶詰等の開発や、安価な小型のブリのすり身加工品としての可能性の調査・研究等が行われ、これらの調査等を活かした更なる商品開発が期待されます。

北海道ブリたれカツ
Oh!!さかなフェア
ブリのミートソース風缶詰

事例サワラの漁獲量が増加した地域におけるブランド化の取組(山形県・鳥取県)

サワラの漁獲量は近年日本海や東北地方太平洋沿岸域で増加しており、以前は漁獲量が少なかった地域で大量に水揚げされるようになりました。しかし、サワラを食べる慣習が無い地域では魚価が低く、漁獲量が増加しても漁業者の利益につながらない現状がありました。そこで、様々な地域で、サワラによる利益向上のため、活発にブランド化の取組が行われています。

例えば、山形県の山形県漁業協同組合では、平成22(2010)年よりサワラのブランド化に取り組んでいます。有志のはえ縄漁業者によって「庄内しょうないおばこサワラブランド推進協議会」が設立され、現在12名が活動を行っています。同会に所属する漁業者に漁獲され、船上での活締めや神経抜き等独自に設けた基準を満たしたサワラのみ「庄内おばこサワラ」として取引されます。同会では「庄内おばこサワラ」の抜き打ち検査や品質向上のための勉強会を行っており、ブランドの品質維持に努めています。平成27(2015)年には、第20回全国青年・女性漁業者交流大会において漁業経営改善部門農林水産大臣賞を受賞し、令和3(2021)年には、「庄内おばこサワラ」に関連する研究が令和3年度全国水産試験場長会全国大会において会長賞を受賞しました。また、山形県は「庄内おばこサワラ」を地元漁業者が自信を持って勧める魚としての「プライドフィッシュ」に選定し、普及に取り組んでいます。サワラの漁獲が増え始めた当初は馴染みがなく非常に安価での取引でしたが、ブランドの確立により、高水準で安定した取引を実現し、地域の漁業者の経営改善にも寄与しています。

また、鳥取県では、鳥取県漁業協同組合淀江よどえ支所に所属する釣り漁のエキスパートで構成されるJF鳥取淀江釣漁つりりょう研究会を中心として、平成27(2015)年よりサワラのブランド化に取り組んでいます。同研究会により漁獲されたサワラは活締めや内臓除去に加え脂質含有量の検査などを行い、独自に設けた基準を満たした場合のみ「淀江がいな鰆」として取引されています。また、鳥取県漁業協同組合職員が基準を満たしているかの検査を行っており、品質の維持に努めています。ブランドの条件を満たさなかったサワラもブランド立ち上げ以前よりも高い価格で取引されるなど、鳥取県におけるサワラの市場価値向上に貢献しています。平成28(2016)年には、農林水産省が国産農林水産物の消費拡大に寄与する取組を表彰するフード・アクション・ニッポンアワードに入賞し、将来的には輸出も目指しています。現在は県内各地で独自にサワラのブランド化が進められており、鳥取県全体でサワラの市場価値の向上に努めています。

ブランドの立ち上げや維持には多岐にわたる関係者による取組が重要ですが、これらの地区では、漁業者、流通業者、行政、研究所等が一体となった継続的な取組によってブランドの確立が図られています。

  1. 「がいな」は鳥取地方の方言で「大きい」のこと。
庄内おばこサワラ
淀江がいな鰆

事例トラフグの消費拡大に向けた取組(福島県)

近年、福島県ではトラフグの漁獲量が増加しており、令和2(2020)年までは10t未満で推移していましたが、令和3(2021)年からは20tを超えるようになりました。

フグの処理を行うためには、各都道府県の条例等により定められた要件を満たす必要があり、福島県においてはこれまで県独自の講習会の修了によりフグの取り扱いが可能でした。しかし、厚生労働省がふぐ処理者の資格取得に係る全国平準化を目指したことを踏まえ、福島県は、令和5(2023)年度からふぐ処理者試験を開始しました。なお、同年度に11名、令和6(2024)年度には20名が合格し、ふぐ処理者として認定されました。

また、トラフグの漁獲量増加を受け、福島県相馬双葉そうまふたば漁業協同組合の漁業者で組織された「ふぐ延縄操業委員会」が、独自の基準を満たしたトラフグを「福とら」としてブランド化しました。「福とら」を軸にした地域振興を図るため、地域一体となって設立された「『福とら』活用推進協議会」が令和4(2022)年より活動を行っています。トラフグの資源利用を進めていくに当たっては、漁業者自らが資源管理を行い持続的な水産資源の活用に努めているほか、令和3(2021)年より産官学が連携した資源調査も行っています。まずは県内での「福とら」の知名度向上を図るため、相馬そうま市が行った市内の小中学校給食における「福とら」活用メニューの提供について「ふぐ延縄操業委員会」が協力したほか、公益社団法人福島相双そうそう復興推進機構がふぐ処理者資格の取得から商品開発や販路開拓まで包括的に支援を行っています。また、県外での知名度も向上させるため、福島県内の一部温泉地と連携し、福島県産の調味料等を使用し調理した「福とら」の提供に向けて計画を進めています。県内外で「福とら」を広めることにより、福島の食文化を活かしたトラフグ消費を促し、「西の下関しものせき・東の相馬」と呼ばれるようなトラフグ特産地を目指して活動しています。

「福とら」ロゴマーク
水揚げされた「福とら」

事例クロダイの消費拡大に向けた取組(岡山県)

近年、クロダイによる養殖ノリやカキ等の食害が全国的な問題となっています。クロダイは、岡山県において食用としても人気のある魚でしたが、養殖マダイの流通等により価格が低迷し水揚げが減少しました。また、クロダイは地域や時期によって需要の差違があり、食用としての評価はマダイほど高くありません。

そこで、岡山県では、クロダイのおいしさについての認知度を高めることで、漁業者による漁獲と利用を促進するとともに、ノリの被害も抑制する取組を進めています。

令和6(2024)年に開催されたFish-1グランプリでは、岡山県漁業協同組合連合会が、クロダイのなめろうにクロノリをトッピングし、最後にクロダイの出汁をかけて食べる「岡山海の幸クロダイのブラック丼」を出展し、準グランプリを獲得しました。

また、同連合会は、全国で小売業を展開するイオン株式会社へクロダイを提供し、同社において低・未利用魚を焼くだけで簡単に食べられる「トップバリュもったいないお魚シリーズ」を展開する中、同年6月から同シリーズの商品として「黒鯛ステーキ(ねぎ塩味/柚子味噌味)」が全国販売しました。

さらに、地元の子供たちにもクロダイのおいしさを伝えるため、同連合会は、学校給食向けにクロダイをサイコロ状に加工し、県内の小学校において南蛮漬けとして提供しました。同年12月には、東京において、さかなクンによる出前授業が開催され、岡山県のクロダイを使用して、刺身、ムニエル、煮魚を調理し、そのおいしさを味わいながら、今後、利用を促進するためにどのようなことが必要か子供たちと意見を交わしました。

岡山県では、今後もクロダイの認知度向上の取組を強化し、クロダイの利用促進を目指しています。

クロダイを使用した岡山海の幸ブラック丼
©SDBE・さかなクン さかなクンによる出前授業の様子

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
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