トピックス2 太平洋クロマグロを想定した漁獲量等の報告義務の確実な履行を図るための漁業法等の改正

漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律*1が令和6(2024)年6月に成立しました。以下では、同法の背景や改正の概要について紹介します。
〈太平洋クロマグロの資源管理の強化〉
我が国漁船の太平洋クロマグロの漁場は中西部太平洋海域です。同海域におけるカツオ・マグロ類の資源は、我が国を含む26の国と地域が加盟する中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)により管理されています。WCPFCでは、太平洋クロマグロの資源量が歴史的最低水準付近まで減少したことを受け、平成27(2015)年1月から、小型魚(30kg未満)の漁獲を基準年(平成14(2002)~16(2004)年)の水準から半減させることや、大型魚(30kg以上)の漁獲を基準年の水準から増加させないことを内容とする保存管理措置の導入が決定され、我が国においても同措置に基づく漁獲管理を行ってきました*2。平成30(2018)年からは、漁獲可能量(TAC:Total Allowable Catch)による管理を実施しており、大中型まき網漁業やかつお・まぐろ漁業等の各大臣許可漁業等及び各都道府県にTACの配分等を行っています。
〈太平洋クロマグロの未報告事案の発生〉
このような数量管理を実施している中、一部の漁業者や産地仲買人がTACによる数量規制を不正に免れる目的で漁獲量の報告を行わなかった太平洋クロマグロの大型魚等が流通する事案が発生し、令和5(2023)年には産地仲買2社の社長と漁業者22名等が有罪となりました。このような事案は、これまでの関係漁業者による資源管理への取組をないがしろにするとともに、その信頼を根底から覆すものであり、我が国が実施する保存管理措置に対する国際的な信用を傷付けかねません。
これを受け、太平洋クロマグロの大型魚を想定しその資源管理の厳格化を図るため、漁業法*3及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律*4が改正されました。
- 令和6年法律第66号
- 平成27(2015)年1月からは自主的な管理とした後、平成30(2018)管理年度からは海洋生物資源の保存及び管理に関する法律(平成8年法律第77号)に基づく管理措置、令和3(2021)管理年度からは平成30(2018)年に改正された漁業法に基づく管理に移行。
- 昭和24年法律第267号
- 令和2年法律第79号
〈漁業法の改正〉
漁業法においては、TACによる管理が導入された水産資源について、漁業者が漁獲量等を報告(以下「TAC報告」といいます。)する必要がありますが、今般の改正により、太平洋クロマグロの大型魚を想定した特別管理特定水産資源(資源管理に関する国際的な枠組み等を勘案して特に厳格な漁獲量の管理を行う必要があると認められるものとして省令で定める水産資源)について、漁獲量に加え、採捕された個体の数を報告事項に追加するなどの以下の措置を新設しました(図表トピ-2-1)。また、漁船の操業位置を把握するための機器の設置等の命令に違反した場合の罰則の新設等の改正が措置されました。
○TAC報告に関する令和6(2024)年の漁業法改正の内容
図表トピ-2-1 漁業法の改正のイメージ

〈特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の改正〉
特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律は、違法に採捕された水産動植物の流通を防止するため、特定の水産動植物を取り扱う漁業者等の行政機関への届出、漁獲番号等の伝達、取引記録の作成・保存等を義務付けるもので、令和4(2022)年12月に施行されたものです。
今般の同法の改正により、太平洋クロマグロの大型魚を想定した特別管理特定水産資源等を特定第一種第二号水産動植物として新たに位置付け、これについて、船舶等の名称、個体の重量等の情報を伝達することなどを義務付けました。以下の1)のI)の情報伝達は、タグやQRコードを活用した方法も可能としています(図表トピ-2-2)。また、農林水産大臣が指定する者による適法漁獲等証明書の交付を可能とすること、事業者が情報伝達、取引記録の作成等の義務に違反したときの罰則を設けること等の改正が措置されました。
○令和6(2024)年の特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の改正の内容
図表トピ-2-2 特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の改正のイメージ

〈漁獲監理官の設置による漁獲物の監視・検査体制の強化〉
これらの法改正のほか、太平洋クロマグロ等の資源管理の実効性を高めるため、令和6(2024)年4月に、漁獲監理官を設置し、従来の漁業取締船による洋上監視に加え、漁獲物の陸揚港における漁獲量報告の監視・検査体制を強化しました。これらの取組により、太平洋クロマグロをめぐるTAC報告を偽る事案の再発防止や保存管理措置の履行の厳格化を図っていくこととしています。
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