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水産庁

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(4)水産業における女性の地位向上と活躍

 

女性の地位向上と活躍の推進は、漁業・漁村の課題の1つです。海上での長時間にわたる肉体労働が大きな部分を占める漁業においては、就業者に占める女性の割合は約14%となっていますが、漁獲物の仕分けや選別、カキの殻むきといった水揚げ後の陸上作業や、漁獲物の主要な需要先である水産加工業においては、女性が重要な役割を果たしています。このように、海女漁等の伝統漁業のみならず、水産物の付加価値向上に不可欠な陸上での活動を通し、女性の力は水産業を支えています。

一方、女性が漁業経営や漁村において重要な意思決定に参画する機会は、いまだ限定的であると考えられます。例えば、平成29(2017)年の全国の漁協における正組合員に占める女性の割合は5.7%となっています。また、漁協の女性役員は、近年少しずつ増えてきてはいるものの、全体の0.5%に過ぎません(表2-3-1)。

表2-3-1 漁業協同組合の正組合員及び役員に占める女性の割合

表2-3-1 漁業協同組合の正組合員及び役員に占める女性の割合

平成27(2015)年12月に閣議決定された第4次男女共同参画基本計画においては、農山漁村における地域の意思決定過程への女性の参画の拡大を図ることや、漁村の女性グループが行う起業的な取組を支援すること等によって女性の経済的地位の向上を図ること等が盛り込まれています。

漁業・漁村において女性の一層の地位向上と活躍を推進するためには、固定的な性別役割分担意識を変革し、家庭内労働を男女が分担していくことや、漁村に居住している女性だけでなく、漁業者の家族以外でも広く漁村で働く女性の活躍の場を増やすこと、さらには、保育所の充実等により女性の社会生活と家庭生活を両立するための支援を充実させていくことが重要です。国は、水産物を用いた特産品の開発、消費拡大を目指すイベントの開催、直売所や食堂の経営等、漁村コミュニティにおける女性の様々な活動を推進するとともに、子供待機室や調理実習室等、女性の活動を支援する拠点となる施設の整備を支援しています。

また、漁業・水産業に携わる女性の存在感を高め、女性にとって働きやすい漁業・水産業の現場改革や仕事選びの対象としての漁業・水産業の魅力向上を後押しする「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」が平成30(2018)年11月に設立されました。このプロジェクトでは、漁業・水産業の現場で活躍されている女性が、日々の生活や仕事、自然との関わりの中で培った知恵を、様々な企業及び団体等の技術、ノウハウ、アイデアなどと結び付け、新たな商品やサービス、情報を創造し、社会全体に発信していくことを目指しています。そして、情報発信を通して、女性にとって働きやすい漁業・水産業の現場改革及び女性の仕事選びの対象としての漁業・水産業の魅力向上につながることが期待されます。

「土佐の清水さば」の活締め出荷の写真

事例限界集落で限界に挑む
(愛媛県越智郡おちぐん上島町かみじまちょう 魚島村うおしまむら漁業協同組合女性部)

魚島村漁業協同組合女性部のある愛媛県越智郡上島町魚島は、瀬戸内海のほぼ中央に位置し、周囲は好漁場として知られるほど豊かな海の幸に恵まれています。しかしながら、離島である魚島は他の産業もほとんどないことから、人口の減少とともに、漁業も衰退し、漁村の存続が危惧されています。

このような中、漁協から「加工品の開発」や「魚島のPR」をしてほしいと要請を受けた漁協女性部は、「限界まで頑張ってみよう」と平成27(2015)年から部員8名で活動を再スタートさせました。

まず、ありきたりの売れ筋商品ではなく女性をターゲットとした、今まであまり食べたことのないおしゃれでインパクトのある商品を開発しようというコンセプトを掲げ、愛媛県の商品開発ワークショップに参加し、料理研究家や他の漁協の女性部員、松山市にある済美さいび高校の生徒と一緒に料理体験や意見交換を重ね、魚島の貝を使った「魚島クラムチャウダー」を完成させました。また、同時期に、タコのブランド化を目指し「たことしめじのアヒージョ」を完成させ、この商品は、経済産業省主催のザ・ワンダー500において、「世界にまだ知られていない、日本が誇るべきすぐれた地方産品」の認定を受けました。

さらには、県の商品開発ワークショップで出会った済美高校の生徒と商品開発を行い、「魚島たこ」と県内砥部町とべちょうの「七折ななおれ小梅」を使用したコロッケ「魚島梅たころっけ」を完成させました。このように商品開発に取り組んできた結果、各商品が県内のスーパーやサービスエリア、県外の百貨店等で販売されるようになったことで、魚島産水産物のブランド化が進み、魚の取引価格の上昇や漁家の所得向上にもつながりました。

また、魚島の知名度が上がったことで魚島に訪れる観光客も増え始めています。

今後も女性部では、魚島を魅力ある島として若者を1人でも増やせるように「人口たったの150人。もうがんばるしかありません!」をスローガンに活動を続けたいとのことです。

「えひめ・まつやま産業まつり」での出店の様子の写真
魚島梅たころっけの写真