このページの本文へ移動

水産庁

メニュー

(3)実効性ある資源管理のための取組

目標14

ア 我が国の沿岸等における密漁防止・漁業取締り

〈漁業者以外による密漁の増加を受け、大幅な罰則強化〉

水産庁が各都道府県を通じて取りまとめた調査結果によると、令和5(2023)年の全国の海上保安部、都道府県警察及び都道府県における漁業関係法令違反(以下「密漁」といいます。)の検挙件数は1,716件(うち海面1,653件、内水面63件)となりました。近年は漁業者による違反操業が減少している一方、漁業者以外による密漁が増加し、漁業者による密漁を大きく上回っています(図表3-14)。近年は、密漁の手口が悪質化・巧妙化している傾向があります。

図表3-14 我が国の海面における漁業関係法令違反の検挙件数の推移

図表3-14 我が国の海面における漁業関係法令違反の検挙件数の推移

アワビ、サザエ等のいわゆる磯根資源は、多くの地域で共同漁業権の対象となっており、関係漁業者は、種苗放流、禁漁期間・区域の設定、漁獲サイズの制限等、磯根資源の保全と管理のために多大な努力を払っています。一方、これらの磯根資源は容易に採捕できることから密漁の対象とされやすく、組織的な密漁も横行しています。また、資源管理のルールを十分に認識していない一般市民による個人的な消費を目的としたものも各地で発生しています。このため、水産庁では、一般市民に対するルールの普及啓発を目的とした密漁対策のウェブサイトを運営しているほか、ポスターやパンフレットを作成・配布することなどを通じ密漁の防止を図っています。

また、悪質な密漁が行われているあわび、なまこ及び全長13センチメートル以下のうなぎ(以下「うなぎの稚魚」といいます。)は「特定水産動植物」に指定されており、漁業権や漁業の許可等に基づいて採捕する場合を除いて採捕を原則禁止とし、これに違反した場合には、3年以下の懲役又は3,000万円以下の罰金が科されることになります。さらに、密漁品の流通を防止するため、違法に採捕されたことを知りながら特定水産動植物を運搬、保管、取得又は処分の媒介・あっせんをした者に対しても密漁者と同じ罰則が適用されることになっています。

密漁を抑止するには、夜間や休漁中の漁場監視、密漁者を発見した際の取締機関への速やかな通報等、日頃の現場における活動が重要です。

取締りについては、海上保安官及び警察官と共に、水産庁等の職員から任命される漁業監督官や都道府県職員から任命される漁業監督吏員が実施しており、今後も、関係機関と連携して取締りを強化していきます。

QRコード
密漁を許さない~水産庁の密漁対策~(水産庁):/j/enoki/mitsuryotaisaku.html

〈違法に採捕された水産動植物の流通の防止に向けた取組〉

違法に採捕された水産動植物の流通過程での混入を防止するため、特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律*1により、特定の水産動植物を取り扱う漁業者等の行政機関への届出、漁獲番号等の伝達、取引記録の作成・保存等が義務付けられています(図表3-15)。国内において違法かつ過剰な採捕が行われるおそれが大きい水産動植物であって資源管理を行うことが特に必要なものを「特定第一種水産動植物(あわび、なまこ及びうなぎの稚魚*2)」と定義し、違法漁獲物の混入を防ぎ、万が一混入が確認された際には取引記録等を追跡調査し、流通適正化を図っています。さらに、国際的なIUU*3漁業防止の観点から本法による輸入規制を講ずることが必要な水産動植物を「特定第二種水産動植物(さば、さんま、まいわし及びいか)」と定義し、輸入される特定の水産動植物について、適法性を証明する仕組みとすることでIUU漁業由来の漁獲物の我が国への流入を防いでいます。

また、令和6(2024)年には、漁業法及び特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の一部を改正する法律*4が成立し、令和8(2026)年4月1日に施行されます。同法により改正された特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律により、個体の経済的価値が高く、厳格な漁獲量の管理を行うべき水産動植物を「特定第一種第二号水産動植物(太平洋クロマグロの大型魚を想定)」と定義し、取引時の情報伝達や取引記録の作成・保存の義務付けを行うことで、漁獲量等報告の義務に違反した漁獲物の流通を防止することとしています。

  1. 令和2年法律第79号
  2. うなぎの稚魚については、令和7(2025)年12月から適用。
  3. Illegal, Unreported and Unregulated:違法・無報告・無規制。国際連合食糧農業機関(FAO)は、無許可操業(Illegal)、無報告又は虚偽報告された操業(Unreported)、無国籍の漁船、地域漁業管理機関の非加盟国の漁船による違反操業(Unregulated)等、各国の国内法や国際的な操業ルールに従わない無秩序な漁業活動をIUU漁業としている。
  4. 令和6年法律第66号
QRコード
特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律(水産庁):/j/kakou/tekiseika.html

図表3-15 水産流通適正化制度の概要

図表3-15 水産流通適正化制度の概要

イ 外国漁船等の監視・取締り

〈我が国の漁業秩序を脅かす外国漁船等の違法操業に厳正に対応〉

我が国の周辺水域においては、二国間の漁業協定等に基づき、外国漁船等が我が国EEZにて操業するほか、我が国EEZ境界線の外側においても多数の外国漁船等が操業しており、水産庁は、これら外国漁船等が違法操業を行うことがないよう漁業取締りを実施しています。水産庁による令和6(2024)年の外国漁船等への取締実績は、立入検査7件、拿捕だほ1件、我が国EEZで発見された外国漁船等によるものと見られる違法設置漁具の押収18件でした(図表3-16)。

また、北太平洋公海において、サンマやマサバ等を管理する北太平洋漁業委員会(NPFC)及びカツオ・マグロ類を管理する中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)が定める保存管理措置の遵守状況を、聞き取り及び24件の乗船検査により確認した結果、外国漁船等に対して延べ9件の違反の指摘を行い、必要に応じて旗国への通報を行いました。

立入検査のため外国漁船に移乗する漁業監督官
外国漁船への公海乗船検査を行う漁業監督官
オホーツク海における違法設置のカニ篭の押収
日本海における違法設置の底刺網の押収
QRコード
令和6年の外国漁船取締実績について(水産庁):/j/press/kanri/250321.html

図表3-16 水産庁による外国漁船等の拿捕・立入検査等の件数の推移

図表3-16 水産庁による外国漁船等の拿捕・立入検査等の件数の推移

〈日本海大和堆周辺水域での取締りを強化〉

日本海大和堆やまとたい周辺の我が国EEZでの中国漁船及び北朝鮮漁船による操業については、違法であるのみならず、我が国漁業者の安全操業の妨げにもなっており、極めて問題となっています。このため、我が国漁業者が安全に操業できる状況を確保することを第一に、水産庁は、違法操業を行う外国漁船等に対する放水等の厳しい措置を行い、我が国EEZから退去させています。水産庁では、周年にわたり同水域に配備している漁業取締船に加え、我が国いか釣り漁業の漁期が始まる前の5月から、更に漁業取締船を重点的に配備するとともに、海上保安庁と連携した対応を行っています。

令和6(2024)年の水産庁漁業取締船による退去警告隻数は延べ78隻であり、前年より10隻増加しました。

大和堆西方の我が国EEZでは、違法操業を行う外国漁船等の問題は依然として継続している状況であり、水産庁では、我が国漁業者が安全に操業できるよう、引き続き海上保安庁と連携して万全の対応を行っていきます。

大和堆周辺水域の中国漁船
大和堆周辺水域の北朝鮮漁船

コラム公海での漁業取締船による国際協力に向けた取組

水産庁の漁業取締船は、我が国EEZ及び領海だけでなく、国際的な漁業秩序の維持や資源管理の推進のためにも活動をしています。サンマやマサバ等が獲れる北太平洋公海では、国内外の多くの漁船が操業しており、これら国内外の漁船等に対して漁業取締船による乗船検査や操業状況の聞取りを行っています。また、広い海上で効率的・効果的な取締りを実施するために、機動性の高い取締航空機も活用しています。

公海上での乗船検査では、外国漁船等に移乗し、NPFCやWCPFCが定める保存管理措置の遵守状況を確認しています。保存管理措置に違反した漁獲や漁具の使用、船体表示が不適切であった場合には、漁船等の旗国及び各委員会へ通報します。通報された漁船等のうち、悪質なものは各委員会が作成しているIUU漁船リストへの掲載や旗国での処分を受けることがあります。

また、春から夏にかけての北太平洋は、刻々と気象状況が変化する船舶の航行にとって危険な水域です。特に暖かく湿った空気が冷たい千島海流によって冷やされることで、度々霧が発生します。視界良好時に漁業監督官が検査対象の漁船へ移乗しても、検査開始数分後には数百m先にいるはずの漁業取締船(本船)とお互いが見えなくなるほどの濃霧が立ち込めることが多々あります。このような遠く危険な水域でも漁業取締船に乗船する漁業監督官は適切な資源管理のために日々活動をしています。

漁業取締船の活動により、適切に管理されたマサバやサンマ等が流通し、わたしたちの食卓に届けられています。

取締航空機を活用した取締り
公海上での乗船検査
QRコード
漁業取締本部(水産庁):/j/kanri/torishimari/torishimari2.html

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344