2 資源管理の着実な推進
(1)資源管理の全体像
資源管理の推進に当たっては、関係する漁業者の理解と協力が重要であり、適切な管理が収入の安定につながることを漁業者等が実感できるよう配慮しつつ、新ロードマップに盛り込まれた工程を着実に実施しました。
その際、新ロードマップに従って数量管理の導入を進めるだけでなく、導入後の管理の実施・運用及びきめ細かいフォローアップを行うとともに、数量管理のメリットを漁業者に実感してもらうため、資源回復や漁獲増大、所得向上等の成功事例の積み重ねを行うとともに、その成果を共有しました。
(2)MSYベースの資源評価に基づくTAC管理の推進
「漁業法」(昭和24年法律第267号)においては、MSYベースの資源評価に基づくTAC(漁獲可能量)による管理を基本としています。
新ロードマップでは、令和7(2025)年度までに、漁獲量ベースで8割の資源でTAC管理を開始することを目指しており、資源評価の進捗状況、漁業経営や地域経済上の重要性、資源の動向等を踏まえ、優先度に応じたTAC管理の導入を推進しました。
また、TAC管理を円滑に進めるため、定置漁業の管理や混獲、資源の突発的な加入への対応を含め、対象となる水産資源の特徴や採捕の実態等を踏まえつつ、数量管理を適切に運用するための具体的な方策を漁業者等の関係者に示しました。
特に、クロマグロに係る資源管理の着実な実施に向けた混獲回避・放流の支援等を行うとともに、多くの漁業者が厳しい資源管理に取り組む中、一部の者による不正な行為を防止するため、水産庁に漁獲監理官を新設し、適正な漁獲報告の担保に向けた体制を整備しました。
さらに、TAC管理の運用面の改善や必要に応じて目標・漁獲シナリオの見直しを実施し、水産資源ごとにMSYの達成・維持を目指しました。この見直しに当たっては、資源管理方針に関する検討会(ステークホルダー会合)を開催し、漁業者等の関係者の意見を十分かつ丁寧に聴取しました。
(3)IQ管理の推進
IQ(漁獲割当て)による管理については、新ロードマップに基づき、運用面の課題解決を図りました。IQを有する漁業者の漁獲は、その割当量が遵守される限り、他の漁業者の漁獲状況により制限されずIQの範囲内で漁獲する時期や場所を選択でき、どのような漁法で漁獲しても資源に与える影響は同等であるといった特徴があります。このことを踏まえ、沿岸漁業との調整が図られるなどの条件が整った漁業種類について、船舶の規模や船型、漁法等の見直しを検討するなどし、IQの効果的な活用の推進を図りました。
(4)資源管理協定に基づく自主的資源管理の推進
TAC管理等の法制度による公的規制に加え、特に、沿岸漁業において、関係漁業者間の話合いにより実態に即した形で様々な自主的資源管理が行われています。このことが各地における資源管理に重要な役割を担っていることを踏まえ、漁業法に基づく資源管理協定の制度を活用し、自主的資源管理の取組を推進しました。
その際、効果的な自主的管理を実現するため、資源管理協議会等による資源管理協定の履行確認、取組の効果の検証、取組内容の改良を推進するとともに、当該内容の公表等を行いました。
また、沿岸漁業の振興に当たっては非TAC資源を適切に管理することが重要であるため、国による資源評価結果のほか、報告された漁業関連データや都道府県の水産試験場等が行う資源調査等の利用可能な最善の科学情報を用いて当該資源の資源管理目標を設定し、その目標達成を目指すことにより、当該資源の維持・回復に効果的な取組の実践を推進しました。
(5)遊漁の資源管理の推進
水産資源管理の観点からは、魚を採捕するという点では、漁業も遊漁も変わりはないため、新ロードマップに基づき、遊漁についても漁業と一貫性のある管理を目指すべく取組を進めました。
特に、漁業法に基づく広域漁業調整委員会指示により、小型魚の採捕制限、大型魚の採捕報告の義務付け等を令和3(2021)年6月から開始したクロマグロについては、今後の更なる資源管理の高度化に向け、広域漁業調整委員会の下に設置されたくろまぐろ遊漁専門部会において、現行の広域漁業調整委員会指示の強化や届出制導入の検討を進めるなどTACによる数量管理の導入に向けた取組を進めました。
また、漁業における数量管理の高度化が進展し、クロマグロ以外の魚種にも遊漁の資源管理、本格的な数量管理の必要性が高まっていくことが予見されることから、アプリや遊漁関係団体の自主的取組等を活用した遊漁における採捕量の情報収集の強化に努め、遊漁者が資源管理の枠組みに参加しやすい環境整備を進めました。
(6)栽培漁業
資源造成効果、施設維持、受益者負担等に関して将来の見通しが立ち安定的な運営ができる種苗生産施設について、整備を推進しました。
都道府県の区域を越えて回遊し漁獲される広域種において、適切な漁獲管理措置と併せて種苗放流を実施している魚種について、資源造成効果が見込まれる適地への放流を推進するとともに、種苗生産及び放流に係る費用負担の公平化に向けた仕組みを検討しました。
また、資源造成の目的を達成した魚種や放流量が減少しても資源の維持が可能な魚種については、種苗放流による資源造成から適切な漁獲管理措置への移行を推進しました。
種苗生産施設においては、複数県での共同利用や養殖用種苗生産を行う多目的利用施設への移行を推進しました。
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