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藻場の働きと現状
海面下の海の森である「藻場」を、私たちが直接目で見ることのできる機会は少ないといえます。しかし、陸地を囲むようにして繁茂する海の森の存在がなかったら、豊かな水産資源の恩恵を享受することはできず、水域環境はさらに悪化し汚染が進行したことでしょう。 藻場の役割と種類、そして現在藻場が置かれている状況についてみていきましょう。
さまざまな藻場の役割
藻場は多くの水生生物の生活を支え、産卵や幼稚仔魚に成育の場を提供する以外にも、水中の有機物を分解し、栄養塩類や炭酸ガスを吸収し、酸素を供給するなど海水の浄化に大きな役割を果たしています。
1.水質の浄化
- チッソ・リンの吸収による富栄養化の防止
- 透明度の増加と懸濁防止
- 生物の生存に不可欠な酸素の供給
2.生物多様性の維持
- 多様な生物種の保全(葉上・葉間・海底)
- 産卵場の提供
- 幼稚仔の保育場の提供
- 流れ藻として産卵・保育場を提供
- 希少生物への餌の提供
3.海岸線の保全(波浪の抑制と底質の安定)
4.環境学習
5.保養(シュノーケリングやダイビング)
藻場と干潟の役割イメージ(クリックすると大きな画像が表示されます)
藻場の種類
四方を海に囲まれ、豊かな自然と水産資源に恵まれたわが国周辺の沿岸域には、海域や水深、底質によって異なる様々なタイプの藻場が立体的に存在しています。これらのうち、わが国の藻場を特徴づける代表的な藻場は、アマモ場、アラメ・カジメ場、ガラモ場、コンブ場の4タイプです。
藻場の分類
「海草」と「海藻」
海草と海藻の違いを知っていますか?
海草とは、海中で花を咲かせ種子によって繁殖し、海中で一生を過ごすアマモなどの海産種子植物のことをいいます。比較的浅いところに多く、海底深くに生育することはありません。
海藻とは、海で生活する藻類のことで、胞子によって繁殖します。海藻の根は栄養吸収のためではなく、岩に固着するためのものです。葉色によって緑藻・褐藻・紅藻の3種類に分けられます。世界に約2万種の海藻類があるといわれ、食用にされるのはコンブに代表される褐藻に多く、全部で約50種程度といわれています。
海草・海藻の繁殖のかたち
海草・海藻の鉛直分布
藻場の減少
高度成長期の沿岸域の開発などによって、沿岸域の藻場は大幅に減少しました。原因は埋立、透明度の低下、化学物質の流入、磯焼けなどがあげられます。特に、瀬戸内海では30年間で7割ものアマモ場が減少しました。
藻場減少の原因
磯焼け現象~海の砂漠化~
海藻を食べる魚やウニが増えすぎることで生態系のバランスが崩れ、藻場の消失をまねく「磯焼け」が起こります。西日本ではアイゴやブダイ、北日本ではウニ類が藻食性動物としてあげられ、藻場の食害、そして結果としての磯焼けは現在各地で大きな問題となっています。