(4)水産物貿易の動向
ア 水産物輸入の動向
〈水産物輸入額は2兆1,454億円〉
我が国の水産物輸入量は、国際的な水産物需要の高まりや国内消費の減少等に伴って緩やかな減少傾向で推移してきました。
他方、近年では、大幅な円安の進展や世界的な物価高騰等を受け、冷凍水産物や加工原材料、輸入餌料等の輸入水産物の価格が高騰しており、これらの輸入水産物の価格安定も課題となっています。
令和7(2025)年は、輸入量(製品重量ベース)は前年から3.4%減少の208万tとなり、輸入額は前年から3.8%増加の2兆1,454億円となりました(図表1-8)。
主な輸入先国・地域は中国、チリ、米国となりました。輸入額の上位を占める品目は、サケ・マス類、カツオ・マグロ類、エビ等となっています(図表1-9)。輸入先国・地域は品目に応じて様々であり、サケ・マス類はチリ、ノルウェー等、カツオ・マグロ類は中国、台湾、韓国等、エビはインド、ベトナム、インドネシア等から多く輸入されています(図表1-10)。
図表1-8 我が国の水産物輸入量・輸入額の推移
図表1-9 我が国の水産物輸入先国・地域及び品目内訳

図表1-10 我が国の主な輸入水産物の輸入先国・地域

イ 水産物輸出の動向
〈水産物輸出額は4,231億円〉
我が国の水産物輸出額は、平成23(2011)年の東京電力福島第一原子力発電所(以下「東電福島第一原発」といいます。)の事故による諸外国・地域の輸入規制の影響等により落ち込んだ後、平成24(2012)年以降は、令和元(2019)年末以降の新型コロナウイルス感染症拡大期も含め、おおむね増加傾向で推移してきました。令和5(2023)年8月のALPS処理水*1の海洋放出開始以降の中国による全都道府県の水産物の輸入停止等により、令和6(2024)年は輸出量、輸出額ともに前年と比べて減少したものの、令和7(2025)年の輸出量は64万t(前年比42.9%増)、輸出額は過去最高の4,231億円(前年比17.2%増)となりました(図表1-11)。
令和7(2025)年の農林水産物・食品の輸出額は1兆7,005億円(うち水産物は24.9%)となり、令和7(2025)年までに輸出額を2兆円にする政府の目標の達成には至らなかったものの、13年連続で過去最高を更新しました。輸出重点品目*2ごとに設定されている輸出額目標に対して、水産物では、ホタテガイ、真珠、錦鯉の3品目で目標額を達成しました。
令和7(2025)年における我が国の水産物の主な輸出先国・地域は、輸出額の多い順に香港、米国、ベトナムとなりました。
香港は、真珠やホタテガイ加工品等の一大輸出先として、輸出額は855億円(前年比3.1%減)となり、3年連続で輸出額第1位となりました。
米国は、令和7(2025)年4月に世界各国に対する相互関税の導入を発表し、同月5日からほぼ全ての国・地域に最低税率として、既存の関税率に加えて10%の関税を課しました。その後、日米間で交渉を行った結果、8月7日から、既存の関税率が15%未満のものは既存の関税率を含めて15%の関税率が、15%以上のものには相互関税は課されず既存の関税率が適用されることになりました*3。水産物*4に対しても上記の関税措置が講じられましたが、米国向け輸出額はブリを中心に伸長し、827億円(前年比11.6%増)となりました。
ベトナムは、ホタテガイやカツオ・マグロ、イワシ等を中心に、加工拠点としての輸出が拡大し、輸出額は493億円(前年比45.3%増)となりました。
品目別では、輸出額の多い順にホタテガイ、ブリ、真珠となり、輸出重点品目が上位3品目を占めました(図表1-12)(図表1-13)。
令和12(2030)年までに農林水産物・食品の輸出額を5兆円(うち水産物は1.1兆円)に拡大する目標に向け、政府としては、引き続き水産物・水産加工品の輸出促進に取り組んでいきます。
- ALPS処理水については、第6章を参照。
- 日本の強みが生かせる輸出重点品目として、水産物ではブリ、タイ、ホタテガイ・ホタテガイ加工品、カキ・カキ加工品、真珠及び錦鯉の6品目が選定。
- 令和8(2026)年2月20日(米国時間)に国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税(相互関税等)は米国の連邦最高裁判所により違法・無効と判断され、これに基づく関税措置は停止された。同日(米国時間)、米国政府は米国に輸入される物品に対し、1974年通商法第122条に基づく10%の暫定輸入関税を課す大統領布告を発表。
- 一部の海藻製品を除く。
図表1-11 我が国の水産物輸出量・輸出額の推移
図表1-12 我が国の水産物輸出先国・地域及び品目内訳

図表1-13 我が国の主な輸出水産物の輸出先国・地域

ウ 水産物輸出の拡大に向けた取組
〈水産物の輸出拡大の基本的な考え方〉
国内の水産物市場が縮小する一方で、世界の水産物市場はアジアを中心に拡大していることから、我が国の漁業者等の所得向上を図り、水産業が持続的に発展していくためには、水産物の輸出の大幅な拡大を図り、世界の食市場を獲得していくことが不可欠です。
このため、政府では、農林水産物・食品の輸出を拡大すべく、様々な取組を推進しています。
〈令和7(2025)年5月に農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略を改訂〉
令和7(2025)年4月に策定された新たな「食料・農業・農村基本計画」では、「輸出拡大等による「海外から稼ぐ力」の強化」を政策の柱に位置付け、その実現に向けて、令和12(2030)年までに、1) 農林水産物・食品の輸出額5兆円(うち水産物は1.1兆円)に加え、2) 食品産業の海外展開による収益額3兆円、3) インバウンドによる食関連消費額4.5兆円の目標を設定しました。
また、これらの目標の達成に向けて施策の具体化を図るため、令和7(2025)年5月に「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を全面的に改訂し、日本の強みを生かせる輸出重点品目として、水産物では、カキ・カキ加工品、ホタテガイ加工品を新たに追加しました。これにより、令和7(2025)年度末時点で、水産物では、ブリ、タイ、ホタテガイ・ホタテガイ加工品、カキ・カキ加工品、真珠及び錦鯉の6品目が輸出重点品目に選定されています。
〈認定農林水産物・食品輸出促進団体による輸出重点品目の輸出拡大に向けた取組〉
農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律*1に基づき、輸出重点品目ごとに、⽣産から販売に至る関係者が連携し、輸出の促進を図る法⼈を、法人からの申請により、国が品目団体として認定しています。品目団体は、市場調査やジャパンブランドによる共同プロモーションといった個々の産地・事業者では取り組む負担が大きい活動を担い、業界全体での輸出拡大に取り組んでいます。水産物については、令和7(2025)年度末時点で、水産物の輸出重点品目の6品目のうち5品目で4団体が認定されています。
- 令和元年法律第57号
〈農林水産物・食品輸出プロジェクト等により生産者等の輸出の取組を支援〉
農林水産省は、農林水産物・食品の輸出に意欲的に取り組もうとする生産者・事業者等の育成や支援を行う「農林水産物・食品輸出プロジェクト(GFP)」を推進しており、専門家による輸出診断、マッチング等を実施しています。また、輸出の熟度・規模が多様化していることから、輸出事業者のレベルに応じたサポートが行われています。
さらに、海外の規制・ニーズに対応した生産・流通体系への転換を通じた大規模な輸出産地形成の取組等を進めています。特に、海外の規制やニーズに対応して継続的に輸出に取り組み、輸出取組の手本となる産地はフラッグシップ輸出産地として認定しています。水産物については、令和7(2025)年12月に第3回フラッグシップ輸出産地として4産地*1が追加認定され、16産地となりました。
くわえて、輸出にチャレンジする事業者の資金面からの支援として、株式会社日本政策金融公庫による農林水産物・食品輸出基盤強化資金や、税制上の特例(輸出事業用資産の割増償却)を措置しているほか、輸出先国・地域の衛生基準等に適合した水産加工施設等の整備や、輸出増大が見込まれる水産物を取り扱う漁港における高度な衛生管理体制の構築に係る支援、また、電子媒体による輸出証明書の発行等の輸出を円滑化するための環境整備を行っています。
- 株式会社山神(青森県)、クニヒロ株式会社(広島県)、日本石花と仲間たち(神奈川県等)、尾道海産株式会社(広島県)
〈海外におけるプロモーション等の取組を支援〉
独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)では、輸出セミナーの開催、輸出関連制度・マーケット情報の提供、相談対応等の輸出事業者等へのサポートとともに、海外⾒本市への出展⽀援、国内外での商談会開催によるビジネスマッチング⽀援等、輸出促進に取り組む国内事業者への総合的な支援を実施しています。また、日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)では、海外市場分析に基づく現地での戦略的プロモーションや⽇本⾷・⾷⽂化の魅⼒発信を行っており、品目団体等と連携した取組等を強化しています。特に水産物については、JAPANESE SEAFOODの統一ロゴを用いたブランディングや個別魚種の価値を訴求すると同時に、喫食方法の提案による需要喚起を図る等の取組を実施しました。
さらに、米国や香港等の主要な輸出先国・地域において、輸出事業者等を包括的・専門的・継続的に支援するため、在外公館、JETRO海外事務所、JFOODO海外駐在員を主要な構成員とする輸出支援プラットフォームを設置しています。
くわえて、海外現地において食品の流通・加工等に係る設備投資等を行う場合の案件形成への支援等を行うとともに、農林漁業法人等に対する投資の円滑化に関する特別措置法*1に基づき、輸出に取り組む事業者に投資する民間の投資主体への資金供給の促進に取り組んでいます。
- 平成14年法律第52号
お問合せ先
水産庁漁政部企画課
担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344






