(2)漁業の経営の動向
ア 水産物の産地価格の推移や漁船漁業の動向
〈太平洋側での不漁が続きサバ等は高値〉
水産物の価格は、資源の変動や気象状況等による各魚種の生産状況、国内外の需要の動向等、様々な要因の影響を複合的に受けて変動します。
特に、マイワシ、サバ類、サンマ等の多獲性魚種の価格は、漁獲量の変化に伴って大きく変化し、近年は、太平洋側での不漁が続いているサバ等は高値で推移しています(図表2-3)。
図表2-3 主な魚種の漁獲量と主要産地における価格の推移
〈10トン未満の漁船では船齢20年以上の船が全体の約85%〉
我が国の漁業で使用される漁船について、漁船隻数は減少傾向にあり、令和6(2024)年は前年から約0.3万隻減少し、約10.7万隻となっています(図表2-4)。
また、我が国の漁業で使用される漁船については、引き続き高船齢化が進んでいます。令和8(2026)年に大臣許可漁業の許可を受けている漁船では、船齢20年以上の船が全体の約56%、30年以上の船が全体の約30%を占めています(図表2-5)。また、令和6(2024)年度に漁船保険に加入していた10トン未満の漁船では、船齢20年以上の船が全体の約85%を、30年以上の船が全体の約65%を占めています(図表2-6)。
漁船は漁業の基幹的な生産設備ですが、高船齢化が進んで設備の能力が低下すると安全性の確保に問題が生じる可能性が高くなる上に、操業の効率を低下させ、漁業の収益性を悪化させるおそれがあります。そのため、水産庁では、収益性向上に必要な漁船等のリース方式での導入に対して、水産業競争力強化漁船導入緊急支援事業(漁船リース事業)により支援を行うとともに、高性能漁船の導入等により収益性の高い操業体制への転換を目指すモデル的な取組等に対して、漁業構造改革総合対策事業(もうかる漁業事業)により支援を行っています。
図表2-4 漁船の隻数の推移

図表2-5 大臣許可漁業許可船の船齢の割合

図表2-6 10トン未満の漁船の船齢の割合

〈燃油価格は高値水準で、かつ、不安定な動き〉
燃油費は、漁労支出の中で相当程度の比重を占める経費であり、燃油の価格動向は、漁業経営に大きな影響を与えます。漁業者が主に使用しているA重油価格は、近年、国内の物価高や為替相場の変動等様々な要因により高値水準で推移する動きを見せています(図表2-7)。さらに、令和8(2026)年2月末からの中東情勢による影響等により、不安定な動きを見せています。
政府は、イラン情勢を受け、関係行政機関の緊密な連携の下、中東情勢に関する情報の収集・共有・提供を適切に行うとともに、中東地域の航行の安全、エネルギーの安定供給等の確保を図るため、中東情勢に関する関係閣僚会議を開催しました。農林水産省では、燃料油や石油製品等の供給について、流通や取引の状況に影響が及ぶ場合に備えて相談窓口を設置し、事業者の皆様からの情報を受け付けています。
また、燃油価格の高騰に対し、水産庁は、燃油価格が変動しやすいこと及び漁業経営に与える影響が大きいことを踏まえ、漁業者と国があらかじめ積立てを行い、燃油価格が一定の基準以上に上昇した際に積立金から補塡金を交付する漁業経営セーフティーネット構築事業及び漁業者への省エネルギー機器の導入支援により、燃油価格高騰の際の漁業経営への影響の緩和を図っています。
令和7(2025)年12月には、基金への国費の積み増しを行うため、令和7(2025)年度補正予算において、漁業経営セーフティーネット構築事業に232億円を措置しました。
図表2-7 燃油価格の推移

イ 所得の向上を目指す「浜の活力再生プラン」
〈全国で566地区が浜の活力再生プランの取組を実施〉
多様な漁法により多様な魚介類を対象とした漁業が営まれている我が国では、漁業の振興のための課題は地域や経営体によって様々です。このため、各地域や経営体が抱える課題に適切に対応していくためには、トップダウンによる画一的な方策によるのではなく、地域の漁業者自らが地域ごとの実情に即した具体的な解決策を考えて合意形成を図っていくことが必要です。このため、水産庁では、平成25(2013)年度より、漁村地域の活性化を図る方策として、各漁村地域の漁業者の所得を5年間で10%以上向上させることを目標に、地域の漁業や漁村の課題を漁業者自らが地方公共団体等とともに考え、地域ごとに解決策を取りまとめて実施する「浜の活力再生プラン」(以下「浜プラン」といいます。)を推進しています。水産庁の承認を受けた浜プランに盛り込まれた浜の取組は、関連施策の実施の際に優先的に採択される等、目標の達成に向けた支援が集中して行われる仕組みとなっています。
令和7(2025)年度末時点で、全国で566地区の浜プランが、水産庁の承認を受け各取組を実施しており、その内容は、地域ブランドの確立や消費者ニーズに沿った加工品の開発等により付加価値の向上を図るもの、輸出体制の強化を図るもの、観光連携を強化するもの等、各地域の強みや課題により多様なものとなっています(図表2-8)。
図表2-8 浜の活力再生プランの取組内容の例

これまでの浜プランの取組状況を見てみると、令和6(2024)年度に浜プランを実施した地区のうち、約52%の地区は所得目標を上回りました。所得の増減の背景は地区ごとに様々ですが、効果があった取組として、活締め等による魚価向上に向けた取組や、種苗放流等の販売量増大に向けた取組等が挙げられます。一方で、効果が認められなかった取組については、その要因として海水温の上昇等の海洋環境の変化による生産量の減少や、燃油価格や資材価格の高騰等が挙げられます。
また、平成27(2015)年度からは、より広域的な競争力強化のための取組を行う「浜の活力再生広域プラン」(以下「広域浜プラン」といいます。)も推進しています。広域浜プランには、浜プランに取り組む地域を含む複数の地域が連携し、それぞれの地域が有する産地市場、加工・冷凍施設等の集約・再整備や施設の再編に伴って空いた漁港内の水面を増養殖や蓄養向けに転換する浜の機能再編の取組、広域浜プランにおいて中核的漁業者として位置付けられた者が、競争力強化を実践するために必要な漁船をリース方式により円滑に導入する取組等が盛り込まれ、これらの取組に対し支援を行っています。令和7(2025)年度末までに、全国で147件の広域浜プランが策定・実施されています。
今後とも、これら浜プラン・広域浜プランの枠組みに基づき、各地域の漁業者が自律的・主体的にそれぞれの課題に取り組むことにより、漁業者の所得の向上や漁村の活性化につながることが期待されます。

事例浜の活力再生プラン優良事例
赤須賀(あかすか) 地域水産業再生委員会(三重県桑名(くわな)市)
赤須賀地区では、赤須賀漁協及び桑名市で構成される地域水産業再生委員会が、平成29(2017)年度から浜プランを策定し、漁業者の所得向上を目指した取組を実施しています。
主に、小型機船底びき網漁業が営まれている当該地区では、漁場である木曽三川(きそさんせん)河口域の環境変化により、ハマグリ・ヤマトシジミの漁獲量が低迷したことから、関係者一丸で種苗放流や漁場環境の調査等、多角的な資源管理を実施し、水揚量の増加が図られました。
赤須賀漁協における水揚量増加のほか、他産地との競合、漁獲時期が要因の単価下落にも対応するため、ハマグリについては、「桑名のはまぐり」として三重ブランドの認定を受け、地元特産品としての認知度向上、市内の食堂「はまかぜ」で地元産ハマグリを使ったハマグリ丼等の独自メニューの提供による需要拡大の取組を行っています。ヤマトシジミについては、夏季の値崩れを防ぐため、漁協の買い支えと冷凍加工による出荷調整に取り組み、平均単価の底上げを行っています。
また、地元特産品を活かしたイベントとして、赤須賀漁業まつり等を実施し、地域の漁業を地元住民や観光客向けにPRすることで、地域の活性化と漁業への理解推進を行っています。
特に、地域の主要な漁獲物であるヤマトシジミにおいては、令和3(2021)年度にこれまでの漁獲量から大幅な減少となる大不漁となりましたが、漁獲サイズ制限を引き上げ、資源保護の強化を行いました。このことによって、これまで需要があった小サイズの出荷を止めることとなりましたが、組合長を中心に仲買人等関係者の合意を得る等、実効性のある資源管理に取り組むことで漁獲量は順調に回復傾向にあります。
今後の展望としては、ブランド化等で知名度があるハマグリと比較し、ヤマトシジミは認知度が低いことから、消費者の顔が見えるイベント等での直接販売の機会等を通して、消費者へ資源管理の取組を周知し、安心して購入できる仕組みづくりと知名度向上に取り組む計画としています。
なお、本取組は、「令和7年度浜の活力再生プラン優良事例表彰」において、農林水産大臣賞を受賞しています。





お問合せ先
水産庁漁政部企画課
担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344





