トピックス1 複合的な漁業の推進や養殖業の成長産業化に向けた漁業共済の機能強化
「ぎょさい」の愛称で親しまれている漁業共済は、漁業災害補償法*1に基づいて設計・運営されています。国はその時々のニーズに合わせて同法を改正し、漁業共済制度を改善してきたところですが、平成28(2016)年の前回改正から10年近くが経ち、現場の実態に合わない部分も顕在化してきました。このため、政府は、令和7(2025)年2月に「漁業災害補償法の一部を改正する法律案」を国会に提出し、同年4月25日に成立、令和8(2026)年4月1日に施行されました(図表トピ-1-1)。
- 昭和39年法律第158号
〈複合的な漁業の推進に向けた共済の機能強化〉
近年の海洋環境の変化等の中で、漁業資源が大きく変動する中、この変動に応じて漁業の複合化に取り組む漁業者の漁業経営の安定が必要となっています。この複合的な漁業の推進に関して、改正した漁業災害補償法において二つの措置を講じました。
一つ目の措置は、複数の漁業種類をまとめて締結できる契約方式の創設です。これまでの漁業共済においても、漁業種類ごとに契約を締結することで、それぞれの漁業種類の減収を補塡することが可能となっていました。しかしながら、漁業者が漁業の複合化を図る場合でも、個々の漁業種類ごとに共済加入が必要であり、漁業種類ごとに漁獲金額が減少したときに共済金が支払われる一方、掛金の総支払額は多くなってしまいます。このため、従来の漁業種類ごとに締結する契約方式に加え、複数の共済対象の漁業種類をまとめて締結できる契約方式を創設しました。新たな方式では、複数の漁業種類の間で増減収の相殺効果があることを踏まえて、掛金が15%割引されます。ただし、従来の方式も維持されており、漁業者ごとに、経営判断で、従来の方式と新方式のどちらに加入するか選択できます。
二つ目の措置は、共済対象外である漁業種類を共済対象となっている主たる漁業種類にまとめてカバーできる特約の追加です。これまでの漁業共済では、十分な保険母数の確保ができるか、妥当な掛金が設定できるか、客観的な損害査定ができるかなど、漁業種類ごとに保険設計の可否を判断した上で、設計可能な漁業種類を共済対象としており、ウニ、サザエ等を手拾いで採捕するような採貝採藻漁業等については、単独では保険設計が困難であるため、共済対象外となっていました。他方で、沿岸漁業の一部においては、漁船漁業等の主たる漁業とともに、採貝採藻漁業等が副業的に営まれている漁業実態があり、こうした副業的な漁業種類を主たる漁業種類にまとめることで保険設計をすることも可能であることから、副業的な漁業種類の生産金額を主たる漁業種類の生産金額にまとめて算入できる特約を追加しました。これにより、これまで共済対象外であった漁業種類についても掛金を追加で支払えば、共済でカバーすることが可能となります。
〈需要に応じた養殖生産に向けた共済の機能強化〉
近年、網生け簀の大型化や廃業・撤退する漁場を引き継ぐこと等により、魚類養殖業の一経営体当たりの生産量がこの40年で4倍以上に増え、養殖業の規模は拡大傾向にあります。
さらに養殖業については、水産基本計画や養殖業成長産業化総合戦略等に基づき、輸出も見据えた国内外の需要に応じた生産等を推進しています。
しかしながら、現行の養殖共済においては、契約対象の養殖魚が15%以上損害を受けた場合に共済金を支払う仕組みとなっているため、一部の網生け簀が甚大な損害を受けた場合でも、損害を受けた数量が養殖魚全体の数量の15%未満であれば共済金は支払われません。つまり、それぞれの経営体において損害を受けた養殖魚の数量が同じでも、経営規模が大きいほど共済金が支払われにくいという現状にありました。
このため、従来の支払方式に加え、養殖魚全体に占める損害の大きさにかかわらず網生け簀単位での甚大な損害(80%以上)を受けた場合にも共済金を支払う特約を追加しました。これにより、漁業者の経営判断で、より柔軟なリスクヘッジが可能になり、養殖業の振興を進めていくこととしています。
〈共済加入の推進〉
近年は海洋環境が激変するとともに、多様な災害が全国各地で相次いでおり、漁業経営のセーフティネット措置である漁業共済の必要性・重要性は高まっています。今後とも漁業者が安定して漁業経営を行うことができるよう、関係団体と連携して共済の加入を推進していきます。
図表トピ-1-1 漁業災害補償法の一部を改正する法律の概要

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