トピックス2 「昭和100年」高度経済成長期を支えた近代捕鯨
昭和期の我が国の水産業は、飛躍的な発展と戦争による生産量の減少、さらに戦後の遠洋漁業の拡大とその後の縮小等、まさに激動の時代でありました。これらの動向の中でも、一旦停止したものの再開を果たした捕鯨業について、昭和100年のトピックスとして記載します。
(1)昭和期の漁業の主な動向
〈昭和初期における水産業の発展〉
明治から昭和初期にかけて、我が国の水産業は近代化の基盤が整備されました。小型動力船が急激に普及するとともに、網の素材として麻や藁(わら)等から綿糸が使えるようになることで、機械製網が可能となり網具の大型化・強度化が進みました。
昭和初期には冷凍技術が導入され、水産物の長期保存が可能となり、漁船にディーゼル機関が搭載されました。これにより漁場は沿岸から沖合へ、さらにベーリング海等の外洋へと拡大しました。
〈戦後の漁業生産〉
戦後の我が国の漁業の生産力は、戦時中の大型漁船の軍事徴用、男子労働力の徴用、燃油や漁網等の不足、空襲等により、壊滅状態となりました。そのため、生産量が極端に落ち込み、食料不足に陥りました。
戦後の我が国は連合国軍の占領下におかれ、昭和20(1945)年9月に連合国軍により我が国の漁船が操業できる海域を規制した、いわゆるマッカーサーラインが引かれました。食料不足の緩和に向けて次第にその範囲は拡大され、大型漁船の再建も進みました。また、食料不足をいち早く打開するため、南氷洋捕鯨も再開されました。
その後、サンフランシスコ平和条約の発効によりマッカーサーラインは撤廃され、同条約に基づき、我が国は多くの国と二国間漁業協定等を締結するとともに、北太平洋のサケ・マス漁業や大西洋のトロール漁業等、世界の海で操業するようになりました。昭和48(1973)年には遠洋漁業の漁獲量は過去最も多い約399万tとなり、漁獲量のピークを迎えました。しかし、その一方で昭和52(1977)年に米国・ソ連が相次いで、いわゆる200海里水域を設定したこと等から200海里漁業体制が国際的に定着していくことになりました。
さらに、昭和57(1982)年の国連海洋法会議において、距岸200海里の排他的経済水域(EEZ)について沿岸国の主権的規制等を定めた海洋法に関する国際連合条約がまとまり、我が国は平成8(1996)年にこれを批准し、現在に至っています。
(2)令和に続く捕鯨
〈近代捕鯨の誕生〉
明治に入り、近代国家を目指していた我が国は、日本海で捕鯨を行っていたロシアに対抗するため、捕鯨の近代化を急ぎ進めていました。当初の銃や大砲を使用したものから、鋼鉄船の捕鯨砲からロープの付いた銛を発射してクジラを捕獲する「ノルウェー式捕鯨法」が導入され、我が国初の近代式捕鯨会社が、明治32(1899)年に山口県において誕生しました。その後も捕鯨業へ参入する企業が続々と誕生しました。
〈外貨を稼ぎ出した捕鯨〉
明治から昭和にかけて我が国の近代化に貢献した重厚長大産業を支えたのは、製鉄所、炭鉱、港等で働く労働者でありましたが、これらの労働者を、食の面で大きく支えていたものの一つがクジラでした。
昭和9(1934)年から、我が国の捕鯨各社は、大型母船とキャッチャーボートから形成される船団を組んで南氷洋で捕鯨を開始しました。昭和初期の南氷洋捕鯨では、捕獲したクジラの鯨油を主にマーガリン原料として欧州へ販売し、資源の乏しい我が国の外貨獲得の一翼を担いました。
さらに、鯨油は食用だけではなく、機械用潤滑油としても重要な役割を果たしました。低温でも固まりにくい性質を持つ鯨油は、昭和初期から戦後にかけて、精密機械や航空機、軍需産業等で潤滑油として利用され、近代産業の稼働を支えました。
〈戦後の食料難を支えた近代捕鯨〉
母船とキャッチャーボートにより巨大なクジラと対峙し、たくさんのクジラを持ち帰ってくる近代捕鯨は、戦後の我が国の厳しい食料事情において、国民の食を満たしました。当時、我が国で消費される動物性たんぱく質の約半分はクジラであり、肉と言えばクジラの時代でした。その後もクジラは食べ続けられ、国内で消費された鯨肉のピークは昭和37(1962)年で約23万トンに達し、捕鯨業は高度経済成長期の国民の食生活を支えました(図表トピ-2-1)。
〈昭和から引き継がれる鯨食〉
我が国は、鯨食をはじめ加工品等、捨てるところがないほどクジラを完全利用してきましたが、昭和57(1982)年の国際捕鯨委員会(IWC)において、いわゆる商業捕鯨モラトリアムが決定され、昭和63(1988)年以降、我が国の商業捕鯨は30年以上にわたり中断されていました。
その間、我が国は科学的データを収集しIWCでの交渉を続けてきましたが、反捕鯨国からの歩み寄りはなく、IWCはその目的である「鯨族の適当な保存」と「捕鯨産業の秩序のある発展」のための機能が発揮できない状況が続きました。
このため、科学的根拠に基づいて水産資源を持続的に利用するとの基本方針の下、我が国は令和元(2019)年6月末をもって国際捕鯨取締条約から脱退し、同年7月から我が国の領海とEEZで、十分な資源が存在することが明らかになっている大型鯨類を対象とした捕鯨業を再開し、鯨食は昭和から現代まで引き継がれています。
鯨肉は、いろいろな調理方法によりおいしく食べることができるだけでなく、高たんぱく・低脂肪といった栄養面のほか、近年はバレニンやオメガ3系多価不飽和脂肪酸(たかふほうわしぼうさん)(DHA*1、EPA*2等)といった機能成分を含有していることが注目されています。水産庁では、引き続き、こうした鯨肉の魅力や特性を広く発信し、鯨肉の持続的な利用促進等の取組を支援しています。
- ドコサヘキサエン酸
- エイコサペンタエン酸(イコサペンタエン酸(IPA)ともいう。)
図表トピ-2-1 我が国の鯨肉の消費仕向量









お問合せ先
水産庁漁政部企画課
担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344




