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水産庁

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トピックス4 水産業の担い手の確保

人口減少や産業構造の変化により、産業のニーズに見合った人材の確保が進まず、幅広い分野で担い手不足が深刻化しています。特に地方では若年層の流出や高齢化が進み、地域産業の維持に必要な労働力を安定的に確保することが難しくなっています。こうした社会全体の動向を踏まえ、水産業においても次世代の担い手を確保することは喫緊の課題です。多くの地域で水産業の経営の維持そのものが危ぶまれる状況にあります。こうした構造的な課題にどう向き合い、地域の海と暮らしを守っていくのか。このトピックスでは、現状と課題を整理し、未来に向けた取組と持続可能な漁業の実現に向けた方向性を提示します。

〈人材確保の状況と対応する施策〉

近年、自然の中で働くライフスタイルを求める等、生活や仕事に対する価値観の多様化により、就業先・転職先として漁業に関心を持つ都市出身者も少なくありません。実際、新規漁業就業者のうち、他の産業から漁業就業する人はおおむね7割*1を占めており、こうした潜在的な就業希望者を後継者不足に悩む漁業経営体や地域とつなぎ、意欲のある漁業者を確保し担い手として育成していくことは、水産物の安定供給のみならず、水産業・漁村の多面的機能の発揮や地域の活性化の観点からも重要です。

このような状況を踏まえ、水産庁では、漁業経験ゼロからでも漁業に就業・定着できるよう、全国各地での漁業就業相談会の開催やインターンシップの受入れを支援するとともに、漁業学校*2で学ぶ者に対する資金の交付、漁業就業後の漁業現場でのOJT*3方式での長期研修を支援する等、新規就業者の段階に応じた支援を行っています(図表トピ-4-1)。さらに、国の支援に加えて、地方公共団体においても地域の実情に応じた各種支援が行われる等、新規漁業就業者の確保に向けた取組が進められています。

近年は女性の新規就業も増えています。女性漁業者は依然として少数派ながら、担い手不足の解消のみならず、男性中心だった漁業の世界に多様な視点と新しい価値観をもたらし、地域の活性化にも貢献していることから、女性が活躍できる環境づくりが重要です。

こうした変化は、漁業現場での多様な役割を担う女性の潜在力を示しています。

  1. 都道府県が実施している新規漁業就業者に関する調査から水産庁で推計。
  2. 学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づかない教育機関であり、漁業に特化したカリキュラムを組み、水産高校や水産系大学よりも短期間で即戦力となる漁業者を育成する学校。
  3. On-the-Job Training:日常の業務を通じて必要な知識・技能を身に付けさせ、生産技術について学ばせる職業訓練。

〈水産高校との連携強化〉

漁業就業者の減少と高齢化が進行する中、年齢バランスの取れた活力ある漁業就業構造への転換を図るため、若者に漁業の魅力を伝え、就業に結び付けていくことが重要です。このため、水産庁と関係業界等が連携し、水産高校生を対象とした「漁業ガイダンス」を各地で実施し、漁業者が水産高校に出向き、少人数のブース形式で生徒に対して漁業とその魅力等を説明しています(図表トピ-4-2)。

図表トピ-4-1 国内人材確保及び海技資格取得に関する国の支援事業

図表トピ-4-2 漁業ガイダンスの概要と開催実績

令和7(2025)年6月には静岡県焼津(やいづ)市、同年7月には青森県八戸(はちのへ)市で「漁師の仕事!船と漁業を知る授業」を開催しました。これらの授業は、生徒が海の仕事の実際を学ぶ機会となるだけでなく、これまで接点が少なかった水産高校と地域の漁業者が、次世代育成と地域活性化という共通の目標に向かって協力する体制を構築する一助となっています。

こうした取組を通じ、若者をはじめとする多様な人材が漁業に関心を持ち、次世代の担い手として定着して活躍することが期待されます。

〈複合的な漁業と人材配置の工夫〉

近年、漁業を取り巻く環境は、資源の変動や気候変動の影響により大きく変化しています。従来のように特定魚種に依存した漁業経営は、資源の不安定化や市場価格の変動により、収益性や持続性の面でリスクが高まっています。こうした状況に対応するためには、単一魚種依存から脱却し、複数の魚種や漁法を組み合わせる「複合的な漁業」への転換が求められています。さらに、養殖との兼業や新たな操業形態の導入等、柔軟な経営改善を進めることは、資源変動に強い体制を構築し、安定的な収益確保を図るだけでなく、多様な働き方を可能にし、次世代の担い手確保にもつながる重要な取組です。

事例さんま棒受網・遠洋まぐろはえ縄漁業の兼業

池田水産株式会社では、さんま棒受網漁業と遠洋まぐろはえ縄漁業を営む中で、乗組員の安定雇用や世代交代に向けた取組を進めてきました。かつては同じ漁船でさけ・ます流し網漁業とさんま棒受網漁業を組み合わせて操業を行っていたこともあり、近年では特定魚種への依存を避け、複合的な漁業への回帰を模索しています。

その中心となる取組として、資源が比較的安定しており、他の魚種に比べて価格水準が高いミナミマグロ操業を収益の柱に据えつつ、サンマ漁期には日本へ帰港することで1航海の日数を短縮(約170日)する操業モデルの構築を進めています。さらに、さんま棒受網漁業の漁期(8~12月)以外の時期には遠洋まぐろはえ縄漁業を行い、漁船を通年稼働させることで、乗組員の長期的で安定した雇用の確保を図っています。従来、乗組員は操業期間に応じた期間雇用が中心で、雇用期間外ではアルバイトや家業の漁業に従事する等、不安定な状況が見られました。そうした中、豊富な知識と経験が求められる漁船の司令塔である船頭を、異例の40代の若手から抜擢(ばってき)したり、さんま棒受網漁船専門だった船頭を遠洋まぐろはえ縄漁船の船頭に起用したりするなど、同社は若手の登用による世代交代等も進めています。

これらの取組は、20~30代の若い乗組員が年齢の比較的近い船頭と仕事をすることによって、将来のキャリアを描きやすくなり、仕事への意欲向上や担い手確保につながる可能性があると考えられています。

遠洋まぐろはえ縄漁業 さんま棒受網漁業

〈漁業等における特定技能外国人の受入れ及び外国人技能実習制度の見直し〉

平成30(2018)年から少子高齢化による国内労働人口の減少による人手不足への対応として、特定の分野*1に限り、専門性・技能を有した即戦力となる、一定の基準*2を満たした外国人を雇用できる特定技能制度が設けられています。漁業分野(漁業、養殖業)及び水産加工業を含む飲食料品製造業分野においても、特定技能制度による外国人の受入れが行われていますが、その数は年々増加しています。

この特定技能制度では、制度の適切な運用に資する取組について協議を行う協議会がそれぞれの分野に設けられており、特定技能外国人を雇用しようとする者には、該当する協議会へ加入することが義務付けられています。漁業分野においては、特定技能外国人材を雇用する者のほか、漁業や養殖業の業界団体や漁業労働に精通している労働組合、制度を所管する法務省をはじめとした関係省庁等によって構成される漁業特定技能協議会が水産庁により設けられており、同協議会において制度を適切に運用していくために遵守しなければならない事項として、外国人材に対する安全指導及び教育の実施や、漁船一隻当たりの乗船人数の制限、引き抜き防止等が取り決められています。

また、飲食料品製造業分野についても同様に、食品産業特定技能協議会が農林水産省により設けられており、水産加工業において特定技能外国人を雇用しようとする者は、当該協議会へ加入することとなります。

一方で、開発途上国等への技能移転を目的とした外国人技能実習制度では、漁船漁業職種の9作業、養殖業職種の1作業*3に加え、食品製造の加熱性・非加熱性水産加工食品製造業職種の9作業、水産練り製品製造職種の1作業*4において、技能実習生を受入れています。漁船漁業及び養殖業職種の技能実習においては、船上で作業を行うという特殊性を踏まえ、実習生の数や監理団体に対して固有の基準を定めることで技能実習の適正な実施を担保しているほか、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律*5に基づいて水産庁に設置された漁業技能実習事業協議会において、監理団体と労働組合の合意の下で定めた技能実習生の労働時間、休日、休憩その他の待遇を雇用契約に確実に反映させることで、技能実習生の保護に努めることとされています。

なお、令和6(2024)年6月に出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律*6が公布され、制度目的と実態の乖離や外国人の権利保護等の観点からの課題が指摘された外国人技能実習制度は発展的に解消され、人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度が創設されることとなりました。この改正を受け、令和8(2026)年1月には、漁業分野をはじめとする各分野における分野別運用方針*7が閣議決定されました。また、同時に飲食料品製造業分野の運用方針においては、同分野の中に含まれていた水産加工業区分が切り分けられることとなりました。これにより、水産加工業で受け入れる外国人材の更なる専門人材への育成と、それによる水産業への寄与が期待されます。現在、令和9(2027)年4月の本制度の実施に向け、水産業における育成就労外国人の受入れや制度の運用のあり方について、更なる検討が行われているところです。

また、主に海外の港等で漁獲物の水揚げや転載、燃料や食料等の補給、乗組員の交代等を行いながら操業し、航海日数も1年以上に及ぶこともある遠洋漁業においては、日本人乗組員を一定の条件で乗船させた上で、外国人を乗組員として乗り組ませるマルシップ方式*8を採っている船もあり、令和7(2025)年12月末時点で、3,302人の外国人乗組員が同方式を活用して我が国の漁船に乗り組んでいます。

  1. 生産性の向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野。
  2. 各分野の技能試験及び日本語試験への合格、又は各分野と関連のある職種において技能実習2号を良好に修了していること等。
  3. かつお一本釣り漁業、延縄漁業、いか釣り漁業、まき網漁業、ひき網漁業、刺し網漁業、定置網漁業、かに・えびかご漁業、棒受網漁業及びほたてがい・まがき養殖作業。
  4. 節類製造、加熱乾製品製造、調味加工品製造、くん製品製造、塩蔵品製造、乾製品製造、発酵食品製造、調理加工品製造、生食用加工品製造及びかまぼこ製品製造作業。
  5. 平成28年法律第89号
  6. 令和6年法律第60号
  7. 正式名称:特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針
  8. 我が国の漁業会社が漁船を外国法人に貸し出し、外国人乗組員を配乗させた上で、これを定期用船する方式。

〈漁業現場における多様な人材活用の動き〉

漁業には水揚げや市場業務、一次的な漁獲物の処理といった、いわゆる関連業務と呼ばれる作業があります。今までは、漁業者や市場関係者が担ってきましたが、就業者の高齢化によりこれらの作業についても人材確保が求められています。

これらの作業については、業務の効率化・省力化等の取組を進めつつ、作業時間が短時間・不規則である特徴を踏まえ、専従的な人材に頼るだけでなく、空き時間を利用した副業や短時間・短期間の雇用による人材を確保する取組や外国人材の雇用*1の可能性の検討が進められています。

  1. 現行の特定技能制度の漁業区分における関連業務として漁獲物の選別、仕分、飲食料品製造業分野における関連業務として原料の調達、受入れに、付随的に従事することは可能。

お問合せ先

水産庁漁政部企画課

担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344