第2節 うなぎ養殖業における取組
前節では、海面養殖を中心とした養殖業全体の動向を概観しましたが、本節では、内水面養殖業において重要な役割を担い、日本の食文化に欠かせないウナギについて、資源管理や養殖技術の高度化の現状を紹介します。
(1)ウナギの資源管理
〈国際的な資源管理〉
養殖の種苗として利用されているニホンウナギの稚魚はマリアナ海溝近海でふ化し、黒潮に乗って台湾、中国、日本、韓国へ流れ着き、そこで採捕されることから、ニホンウナギの資源を持続的に利用していくためには、これらの国・地域が協力して資源管理を実施していくことが必要です。
このため、我が国がこれらの国・地域に働きかけを行い、中国及び台湾とともに平成24(2012)年9月から協議を開始し、さらに韓国の参加を得て、平成26(2014)年9月の第7回会合で、ニホンウナギ及びその他の関連するウナギ類の保存及び管理に関する共同声明を発出しました(図表特-2-1)。以降、非公式協議を毎年開催しており、この共同声明及び共同声明以降に各国・地域が実施した管理措置のレビュー、次漁期の稚魚の池入数量上限の確認等が行われています。
図表特-2-1 ウナギの国際的資源保護・管理に係る非公式協議(政府間協議)

〈民間ベースで進める資源管理〉
ニホンウナギ生息国・地域の非公式協議での共同声明を踏まえ、我が国の養鰻管理団体である「一般社団法人全日本持続的養鰻機構」が平成26(2014)年10月に設立され、民間ベースでのウナギ資源の管理の促進や適切な管理の下で養殖されたウナギの利用の促進に取り組んでいます。
また、各国・地域の養鰻管理団体が集まり、民間ベースでウナギの資源管理について話し合うため、国際的な団体「持続可能な養鰻同盟(ASEA)」が平成27(2015)年に設置され、定期的に会合が開催されています。
〈うなぎ養殖業における池入数量の管理〉
ウナギ資源の持続的な利用を確保するため、平成27(2015)年6月にうなぎ養殖業が農林水産大臣の許可を要する指定養殖業に指定されました。この許可には、ウナギの稚魚の池入数量の上限が定められており、池入数量の水産庁への報告が義務付けられています(図表特-2-2)。
図表特-2-2 令和8年漁期におけるにほんうなぎ養殖業の許可件数と池入割当量

〈ニホンウナギの不透明な採捕・流通の解消に向けた取組〉
従来から、ウナギの稚魚の採捕には都府県知事による許可が必要で、その数量については、当該許可をした都府県に報告する義務があります。しかしながら、都府県に報告される採捕数量と水産庁がうなぎ養殖業の池入数量報告から算出する国産種苗の数量(推定値)に乖離(かいり)が生じており、採捕数量の未報告や過少報告、密漁等が原因とされています。また、台湾は、平成19(2007)年以降、一定期間内のウナギの稚魚の輸出を禁止していますが、台湾産のウナギの稚魚が輸出規制のない香港を経由して輸出されている可能性が指摘されています。
このような背景から、令和5(2023)年12月に漁業法*1に基づき、全長13cm以下のウナギ(ウナギの稚魚)の採捕を知事許可漁業にするとともに、全長13cm以下のウナギを「特定水産動植物」に指定し、無許可で採捕した場合の罰則を強化しました。
また、令和7(2025)年12月より、特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律*2(以下「水産流通適正化法」といいます。)の特定第一種水産動植物に係る規定が全長13cm以下のウナギに適用されました。
漁業法による管理の強化と水産流通適正化法による管理が相まって、国内において違法に採捕されたウナギの稚魚の流通を防止する枠組みが構築されることとなりました。
- 昭和24年法律第267号
- 令和2年法律第79号
コラム特定第⼀種⽔産動植物等への適⽤に係る対応
令和7(2025)年12月より、水産流通適正化法の特定第一種水産動植物に係る規定が全長13cm以下のウナギに適用されました。これにより当該稚魚の販売等を行う漁業者・流通事業者は、1) 行政庁への届出、2) 漁獲番号等の情報伝達、3) 取引記録の作成・保存、4) 輸出の際の適法漁獲等証明書の添付が義務付けられます。ウナギの稚魚の販売等を行う事業者は取引ごとに、名称、重量又は数量、譲受け、譲渡し等年月日、譲受け、譲渡し等先の氏名又は名称及び漁獲番号又は荷口番号を記録する必要があり、一つの流通業者で1日に100件以上の取引を行う場合もあることから、現場における作業負担の軽減が課題となっています。
これに対応するため、一般社団法人全日本持続的養鰻機構と株式会社デンソーは、水産庁の支援を受け「シラスウナギトレーサビリティ支援システム」を開発しました。本システムでは、QRコードの提示・読み取り、取引量の入力のみで漁獲番号や荷口番号の生成・伝達が可能であるほか、作成した取引記録をデータベース上に保管することで、取引記録の保存義務が履行されます。
本システムは年間約1万人の事業者の利用を見込んでおり、水産流通適正化制度の着実な実施が期待されています。

お問合せ先
水産庁漁政部企画課
担当者:動向分析班
代表:03-3502-8111(内線6578)
ダイヤルイン:03-6744-2344




